軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リッド、諜報機関について質問する

「カペラ、君の所属していた組織と君の使う魔法について教えて欲しいのだけど」

「リッド様、いきなり何を仰っているのですか……?」

僕はカペラを自室に呼ぶと、ディアナには退室してもらった。

今はカペラと二人だけで机を挟み、ソファーに座って向き合っている。

退室をディアナにお願いした時は、心配そうな顔をされたが「大丈夫、何かあったら悲鳴を上げるから」と伝えると彼女は渋々ながら出ていった。

こんな風にカペラと二人だけで話すのは初めてかな?

そして、先程カペラに一番の用件を尋ねたところだ。

僕の質問に、一見無表情だが何やら少し困惑している様にも見える。

「うん? 大分、直球を投げたつもりだったのだけどな。ザック・リバートンが……というか恐らく、リバートン家が管理している秘密……」

「いえ、もう大丈夫です。わかりました。何をお知りになりたいのでしょうか?」

カペラは呆れたような、観念したような雰囲気を出して返事をしてくれた。

正直、僕は彼らの国の組織について、すべてを知っているわけではない。

レナルーテで起きた出来事、そして彼が「ときレラ!」にも存在していた時のキャラ性から考察した結果の質問だ。

ただ、少しだけ気になる。

何故こんなにも早く彼は観念したのだろうか?

僕はニコリと微笑むと彼に言い放つ。

「全部だね。今、カペラがすぐに話そうとした理由から、ザックが管理している組織の成り立ちからすべて。これは、お願いじゃない『命令』だよ?」

「ふぅ……わかりました。私は既にリッド様の従者でございます。『聞かれたこと』はすべてお話しましょう」

息を吐き観念したように彼は言い終えると、僕の向けた笑顔にぎこちない笑顔で返してきた。

もしかすると、ザックからは「僕に聞かれた時の事」を想定し、何かしらの指示を受けているのかもしれない。

ちなみにだけど、彼が見せたぎこちない笑顔はガルンの指導のおかげなのか、少しだけ良くなっているような気がする。

毎回この顔を見るとなると、僕はそのうち意図せずに腹筋が割れてしまうかもしれないな。

カペラは僕に話す前に、少し考え込むような素振りを見せ、そしておもむろに口を開いた。

「……よろしければ、ディアナさんにも立ち会って頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」

「え? いいの?」

「はい。ディアナさんは私の同僚ですから……出来うる限り、情報は共有しておくべきでしょう」

カペラは変わらず無表情のまま、淡々と言った。

僕はその言葉に頷くと、部屋の外で待機しているディアナに声をかけた。

彼女には状況と経緯を説明して、僕の隣に座ってもらい一緒にカペラの話を聞くことになった。

「……カペラさん、このようなことで私が心を許すとお思いですか?」

「いえいえ、ディアナさんは同僚ですので情報共有したいだけです。それに、ディアナさんが心をお許しになっているのはルーベンス様だけで良いでしょう」

ディアナは恐らく牽制するつもりの言葉だったのだろう。

しかしカペラは、言葉巧みにその牽制球を投げ返した。

この場面で彼がニコリとした笑顔なら面白いのかもしれないけど、無表情だから直球ド真ん中って感じの言葉になっている。

「な……⁉」

「はは、これは。一本取られたね。確かにディアナが『心』を許すのは、ルーベンスだけだね」

「リッド様‼」

ディアナが珍しく顔を赤らめながら怒っている。

うん、なんだかんだ二人は良いコンビになりそうだ。

元騎士団の凄腕メイドと元暗部の凄腕執事か。

これほど頼りになりそうな従者は、中々いないかもしれないなぁ。

そう思いながら、僕は話を進める為の咳払いをした。

「ゴホン……じゃあ、そろそろ聞かせてもらえるかな? カペラ」

「……承知致しました。私が知りうる限りの事はすべてお話致します」

カペラは言葉通り、レナルーテの暗部組織「忍衆」について教えてくれた。

レナルーテにも軍はあるが、ダークエルフの出生率の低さから消耗戦をすることは出来ない。

個々の力で保たれた軍は強力だけど、敗れれば国の存続に関わりかねない……いわゆる「虎の子」である。

レナルーテはその問題点を解決する為に、昔から暗殺や謀略を駆使するようになったらしい。

開戦前に勝敗を決せられるような動きが国としての戦略となり、その結果として生まれたのが「忍衆」だという。

それは、軍や孤児など様々な所から優秀な人材をかき集めた上に、特殊訓練を施して作られた組織である。

忍衆の存在意義は『国の存続』である為、レナルーテの歴史上に愚鈍な王族が居た場合、粛清することもあったそうだ。

僕は息を呑み、恐る恐るカペラに問い掛けた。

「王族すら粛清するとは、徹底しているね……レイシスは大丈夫そうかい?」

「レイシス王子はノリスにより歪められておりましたが、リッド様が性根を叩き直して下さいましたので大丈夫ではないでしょうか? まぁ、いざとなれば頭目と陛下が『矯正』に動くでしょう」

カペラは無表情かつ淡々と話すので、より言葉が辛辣に聞こえてしまう気がする。

ザックとエリアスによる「矯正」か。

想像するだけで恐ろしいなぁ。

特にザックは笑顔を浮かべながら行いそうだ。

「レイシス王子、頑張れ‼ 君なら多分出来るはずだ……」と心の中で応援した。

その時ディアナが疑問を抱いたようで、カペラに尋ねた。

「レイシス王子がノリスに歪められたということですが、何故、それを放置していたのですか?」

「……それは……『ディアナさん』からの質問だと、お答え致しかねます」

「な……⁉」

カペラはディアナの質問にわざとらしく、返事を拒否して僕にちらりと視線を送った。

その様子にディアナは当然気付いており、ハッとした後、ワナワナと怒りに震えている。

やれやれ……恐らくカペラなりの悪ふざけなのだろうが、宥める僕の立場も考えて欲しいよ。

僕は、二人のやりとりに呆れた様子で首を横に振った。

「はぁ……カペラ、『僕に聞かれたことだけ』に答えるという事かもしれないけど、ディアナにも話を聞いて欲しいと言ったのは君でしょ? それとも何か意図があるのかな? それなら、あえて言わせてもらうけど、ディアナが君に聞くことは僕同様にすべて話す事。これも『命令』だからね」

「リッド様、さすがでございます。承知致しました。今後はディアナさんのご質問にもお答え致します。ディアナさん、先程は失礼致しました」

どうやらカペラは、ディアナにも話すように僕から命令して欲しかったようだ。

彼の中に何かしら特別なルールがあるのかも知れない。

カペラは言い終えると、ディアナに握手を求める様に手を差し出した。

ディアナもおずおずと手を差し出そうとするが、途中でハッとする。

そして、ツンとしてそっぽを向いた。

「……⁉ ふん‼ こんなことで馴れ合いは致しません‼」

「畏まりました。信頼して頂けるよう今後努力致します」

二人の掛け合いを見ていると、やはり良いコンビになりそうだ。

でも、ルーベンスとエレンが見たら何やらショックを受けるかもしれないな。

そんなことを思いながら、僕はカペラに説明の続きをお願いするのだった。