軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第88話 久しぶりの往訪

西の森を抜け、ヨークウィッチへと戻ってきた俺達。

一切の寄り道はせずに東地区へと向かい、冒険者ギルドの前を通り掛かった。

「良い場所って東地区にあるんですか? この辺りは毎日来ているので、見慣れた光景ですよ!」

「そういえば、トレバーってどこに住んでいるんだ? やっぱり冒険者ギルドが近い東地区か?」

「違います! 西地区の露店市の近くです! この間まではこっちに住んでいたんですけど、テイトが西地区に住んでいるんで引っ越したんです!」

二人は西地区に住んでいるのか。

俺は西地区から東地区へ引っ越したが、トレバーは俺の逆をいったって感じだな。

「二人は近くに住んでいるんだな。テイトも以前と変わらずか?」

「いえ、今はちゃんと宿屋に泊まっています。かなり安い宿ですが、一角兎のお陰で宿屋に泊まれるぐらいのお金は稼げるようになりました」

「そうか。それは妹さんのことを考えても良かったな」

「はい。冒険者という真っ当な道を進ませてくれたジェイドさんのお陰です! 本当にありがとうございました」

深々と頭を下げてくるテイトに対し、すぐに頭を上げるように伝える。

この二人は油断すると、場所なんてお構いなしに頭を下げてくるからな。

この間も門で頭を下げられ、変に注目を浴びたから注意をしなくてはいけない。

……と、それはおいておいて、テイトと妹が宿屋で泊まれるようになったのは良かった。

値段を考えると、もしかしたら俺が利用していたボロ宿かもしれない。

ボロ宿での生活を懐かしみながらそんなことを考えていると、あっと言う間に『ダンテツ』に辿り着いた。

「着いたぞ。ここだ」

「えっ……こ、ここですか? 普通の汚い家にしか見えないんですけど!」

「武器屋さんでしょうか? 中から鉄を打つような音が聞こえます」

「テイトの言う通り、ここは武器屋だ。今日は二人に剣を買ってやる」

「えっ、やったー! 本当にいいんですか?」

「オークとの戦闘で武器が弱いのは分かっただろ? せめてもう少しまともな武器にした方が良い」

飛び跳ねて喜ぶトレバーとは対照的に、複雑そうな表情を浮かべているテイト。

喜んでくれるかと思っていたが、なぜ複雑そうな表情なのかが分からない。

「どうした? テイトは嬉しくないのか?」

「いえ、嬉しいんですけど……。ジェイドさんから借りているこの短剣をまだ使いたいという気持ちも強くて……」

短剣を抜いてまじまじと見ながらそう呟いた。

大事にしてくれるのは嬉しいが、俺にとっても特に思い入れのないガラクタの短剣。

思い入れを大事にするばかり、重要な局面で失敗はして欲しくはないからな。

無理やりにでも買い与えた方がいいだろう。

「その気持ちは嬉しいが、その短剣は本当にただのガラクタだからな。観賞用にでも取っておいてくれ。無理に使って折れるよりはいいだろ?」

「確かに……折れてしまうのは嫌ですね。この短剣は鍛錬を積むとき用に使わせてもらいます」

「ああ、それがいい。それじゃ中に入るぞ」

テイトを説得してから、ようやく店の中へと入る。

俺自身もビラ配りの時に訪れて以来だし、もしかしたらダンは俺のことを忘れているかもな。

店の中は相変わらず温度が高く、ムシムシとしている。

立っているだけで汗が噴き出しそうなこの温度はなんとかした方がいいと思うのだが、この規模間で制作と販売を行うなら難しいんだろうな。

「ダン、いるか? 武器を買いにきた」

奥から鉄を打つ音が聞こえてくるため中にいるのは分かっているが、そう声をかけるとダンからの返事が聞こえて来た。

「いるぞっ! ちっとだけ待っててくれ!」

それから区切りがいいであろうところまで終わるのを待っていると、五分くらい経ってようやく顔を見せた。

暑くて中々に不快な室温だったが、毛むくじゃらの髭をびっしょびしょにさせているダンを見て、自然と溜飲が下がったのが分かった。

「久しぶりだな。俺のことを覚えているか分からないが、スタナと一緒に来たジェイドだ」

「流石に覚えているわッ! 贔屓にすると言っておいて、あれ以来訪れなかったのはムカッとはきているけどな!」

「金がないってのもあったし、剣の手入れは自分で出来るからな。それより、今日は俺の……知り合いを連れてきた」

二人をなんて紹介するか迷ったが、教え子っていうのは何か気持ちが悪いため知り合いと紹介した。

月に一度しか指導していないし、トレバーからは金も取っているしな。

ただ、そんな俺の意図を無視して二人は挨拶を行った。

「私はジェイドさんの弟子のテイトと言います。よろしくお願いします」

「僕はジェイドさんの“一番”弟子のトレバーです!」

「んおっ? なんだよ。銀貨一枚の短剣を使っている癖に、もう弟子までつけているのか!」

ニヤニヤとさせながら、俺をおちょくるような口調のダン。

せっかく知り合いで通そうと思ったのに……まぁ仕方がない。