軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第87話 オーク

それから俺は、洞窟の中にいた計七匹のオークを音を立てず殺した。

暗殺よりも返り血を浴びないようにするのに気を使ったが、無事に返り血を浴びずに、そして音を立てることなく全てのオークを仕留めることに成功。

あとは未だにいびきをかいて眠っているオークを叩き起こして、外へと連れ出すだけだ。

寝ているオークの前へと戻ってきた俺は、目の前でわざと大きな物音を立てる。

気持ちよさそうに寝ていたオークだったが、俺の立てた物音に気付いて目を覚ましたようで、飛び起きるように立ち上がった。

すぐに俺の存在に気がついてくれたため、わざとらしく驚くふりをしてから洞窟の外へと逃げ出す。

オークの目から見れば、俺はやらかしてしまった非力な人間。

鼻息を荒くさせながら俺の後を追ってきており、捕まらないギリギリの速度を維持しながら走ったことで、無事に洞窟の外へと引っ張りだすことに成功。

「トレバー、テイト。オークを連れて来たぞ」

「はい! トレバー、いつものように冷静にね」

「分かってるよ! テイト、サポートよろしく!」

俺と入れ替わるように前へと出たトレバーは、自分よりも倍ほど大きなオーク相手にも怯むことなく、先ほどの模擬戦と同じような感じで斬りかかっていった。

実力はまだまだだが、萎縮しないメンタルは流石といえる。

ただ寝起きとはいえオークの動きも悪くなく、中段の構えで木の槍を構えて迎えうつ姿勢を見せている。

このまま突っ込めば、確実に腹を槍で突かれるのだが――それをサポートするのはピッタリとトレバーの後ろに張り着いているテイト。

「槍は気にしなくていいよ。私が防ぐ」

「よろしく頼むよ! 僕は攻撃だけに集中する!」

そんな短い掛け声だけで、本当にトレバーは槍を一切気にしなくなった。

テイトへの信用なのか分からないが、自分に向けられている武器を完全に意識から外しているというのは普通に凄い。

そんなトレバーの絶対的な信頼に答えるように、トレバーに向かって放たれた木の槍をテイトは短剣で完璧に受け流した。

オークの槍もお粗末というのもあるが、あのガラクタの短剣で受け流せるのはセンスを感じる。

さっきから二人の戦いっぷりに関心しっぱなしで、自分が戦っている時では味わえないハラハラ感が非常に新鮮。

もっと見ていたい気持ちになったが――テイトがオークの槍を受け流し、無防備なオークにトレバーが一撃を叩き込んだものの、毛を斬っただけで大したダメージになっていない。

なまくらな剣に加えて、単純な力不足。

そこからもテイトとトレバーがオークを攻め立てていったが、どの攻撃も致命傷までは遠く及ばずオークはびくともしていない。

命を懸けた戦闘という緊張感も相まってか、開始数分でトレバーが肩で息をし始め、テイトもそのカバーを行いきれずに連携が乱れ始めた。

非常に惜しかったと思うが……これ以上は厳しいだろう。

そう判断した俺は二人の間から飛び出て、オークの首を短剣で刎ねた。

襲い掛かろうとしていたオークの首が飛んだを見て安心したのか、トレバーは糸が切れたように地面に尻もちをついた。

「惜しかったが、あと一歩届かなかったな」

「はぁー……はぁー……。ジェイドさん、助けてくださりありがとうございます」

「こ、殺されるかと思ったぁ……」

大量の汗を噴き出している二人に水の入った革袋を渡し、水分補給を行わせる。

水を飲んだことで落ち着き、先ほどの戦闘を思い返したのか、二人共悔しそうな表情を見せた。

「最初はかなり良かったと思うんだけど、僕の攻撃が全然通用しなかった。テイト、ごめん!」

「私の攻撃も全然だったから、全部トレバーのせいって訳じゃない。……悔しいね」

「……うん。悔しい」

「悔しいという感情を持っているなら大丈夫だろう。ずっと言っていたが、今回の相手は格上の相手。その相手に対してよく戦ったと俺は思うぞ」

「ありがとうございます。でも、私もトレバーも全然満足していません。悪かった部分の指導をお願いします!」

「僕も指導してほしいです! お願いします!」

静かな森に二人の声が響いた。

やる気があるのは指導する側としても嬉しいが、今日はもうやらない方がいい。

最初の模擬戦に加えて、格上であるオークとの戦闘。

ゴブリン程度の相手なら戦わせるのもアリだが、それなら明日以降でもできるからな。

これから武器を買うことも考えて、今日は引き上げるのが得策。

「指導はするが、今日はもうおしまいだ。格上相手とのこれ以上の戦闘は危険だからな」

「私はまだ動けますよ。ジェイドさんに指導してもらえるのは月に一度だけですし、このまま終わりたくありません」

「僕もまだ動けます!」

「駄目だ。強い魔物と戦うのはまた来月。ただ……指導の代わりに良い場所に連れて行ってやる」

良い場所というのにピンとこなかったのか、二人して首を傾げた。

基本的に二人とは、街の門から平原までしか行動を共にしてきてないし、ピンとこないのも仕方がない。

「良い場所ですか? この森にあるんですか?」

「ヨークウィッチにある。場所については……着いてからのお楽しみだな」

「ジェイドさんが僕達をもてなしてくれるんですか!? もう既に楽しいです!」

「既に楽しいの意味が分からん。早く森を出て、街に戻るぞ」

まだまだ指導を受けたいという二人を納得させ、オークの死体を【ファイアボール】で処理してから、俺達は西の森を後にした。

来月に向けて、丁度良い魔物探しも並行して行わないといけないな。

近々、マイケルに相談しに行くのもアリかもしれない。

そんなことを考えながら、俺は二人を連れて『ダンテツ』へと向かったのだった。