作品タイトル不明
番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その73
週末の営業日を無事に終えた。
売上は先週ほどではなかったものの、しっかりと好調な売上を叩き出せており、客足も着実に伸ばせている。
休業以降は何故かグンと知名度も上がったし、ヴェラが営んでいる二号店にも追いつきそうなほど。
この勢いのまま、『シャ・ノワール』の知名度を広めていけたら嬉しい。
ということで、軌道から外れないようにするため、今週も調達を頑張らないといけない。
今週も美食ギルドへ行ってもいいんだが、そろそろ帝国にも行きたいところ。
トレバーとテイトへの指導を兼ねた調達もいいし、どうするか迷ってしまうな。
……帝国に行くなら、美食ギルドで帝国の情報を聞いてからのほうがいいだろうし、今回はトレバーとテイトを誘って、三人で調達を行うことにしよう。
そう決めた俺は、早速二人の下へ向かおうとしたんだが――扉がいきなり開けられた。
休みだということを知らない客が入ってきたのかとも思ったが、第一声を聞いたことで客ではないことを理解した。
「ジェイドいるかー? 冒険に行こうぜー!」
やってきたのはエイルであり、以前連れ戻すために話したことを真に受けてやってきたらしい。
いやまぁ、エイルと一緒に行くのが嫌だってわけではないんだが、マイケルとのゴタゴタは面倒くさいからな。
「第一声がそれか。冒険に行くにせよ、マイケルの許可が必要だろ」
「おー、ジェイド! やっぱりいたのか! マイケルの許可は貰ってきたから大丈夫だ!」
「絶対に許可を貰っていないだろ。面倒くさいことに巻き込まれるのは嫌だからな」
「本当に許可を貰ってきたっての! それより聞いてくれよ! 聖教国にアンデッドの群れが現れたんだってよ! そのアンデッドの群れのリーダーが持つ杖が凄いらしいんだ! な? 気になるだろ!?」
聖教国は確か……俺が殺した勇者の仲間の一人の出身国だったはず。
王国の隣にある小さい国で、国力は弱いものの、国民の信仰心の強さで成り立っている国。
アンデッドとは無縁の場所だと思っていただけに、アンデッドの群れが現れたという情報は驚きだな。
それと、アンデッドのリーダーが持つ杖も……気にならないと言ったら嘘になる。
「気にはなるが、マイケルの許可を貰っていないと行かないぞ」
「だから、許可は貰ったって言ってるだろ! 嘘だと思うなら、一緒に冒険者ギルドへ行こうぜ!」
「……本当に許可を貰ったのか?」
「本当だっての!」
「分かった。とりあえず聞きに行こう」
マイケルが許可を出すとは思えないが、この様子だと本当に許可を貰っていそうだ。
とりあえず、マイケルに話を聞きに行ってみようか。
「――ああ、許可を出したよ。というか、聖教国から応援要請があったのだよ。仕事の一環として、ギルド長には聖教国に行ってもらうつもりだね」
「なるほど。本当に許可は貰っていたが、面白い情報ではないってことか。本当はアンデッドが低級とか、そういう話なのか?」
「いいや、現れたアンデッドは強力なものらしいね。今は何とか食い止めているようだけど、かなり危険な状態と聞いているよ」
「だから、全部本当だって言ってるだろ! 杖も本当だし、杖以外にもお宝を持ってるかもしれねぇぜ? 人助けもできて一石二鳥だろ?」
うーん……。
今回のは冒険というより、エイルの仕事を手伝わされている気しかしない。
とはいえ、聖教国のアンデッドは気になるし、人助けもできるならしたい。
上手く利用されている気がするのは癪ではあるが、今回の調達は聖教国でいいかもしれないな。
「……分かった。協力はするが、しっかりと報酬を分けてくれ。しかも、金ではなく現物で頼む」
「友達なのに対価を要求するのかよ! まぁでも、アンデッドを追っ払えば、聖教国が何かしらくれるだろ! よーし、そうと決まれば早速出発しようぜ!」
「ギルド長をよろしく頼むよ。くれぐれも国際問題にだけはならないように見張っていてほしい」
「いや、そこまでの責任は負えない。エイルの制御は大変だからな」
アンデッド討伐は手伝うが、エイルの見張りはできない。
確実にアンデッドより暴れそうだしな。
何か言いたげなマイケルは放っておき、俺も出発の準備を整えるため、一度店に戻ることにした。
エンペラにも準備をさせないといけないしな。
「ん? ……なんでエイルがいるんだ!」
「それは俺のセリフだ! エンペラは留守番でいいだろ!」
「駄目だ。荷物持ちとして絶対に連れて行く。仲良くしてくれ」
「絶対にできない! エイルは知能が低すぎる」
「はぁ!? 相変わらず背がちっちゃいくせに生意気だな!」
「図体だけデカくて、脳みそはちっちゃい」
「おい、落ち着いてくれ。長旅なのに喧嘩をされ続けたらしんどい」
言い争っている二名を宥めつつ、とりあえず馬車に乗って聖教国に出発することにした。
出発前から大変そうな予感がプンプンしているが、この旅で少しは仲良くなってもらいたいところ。