軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その69

メルデルクで聞き込みをし、マズール池とリウル湖についての情報を手に入れることができた。

両方とも同じくらいの位置にあって、マズール池は北に半日ほど歩いた場所にあり、リウル湖は東に半日ほど歩いた場所にあるらしい。

そしてサウスフォレストは、名前から分かる通り、メルデルクから南に位置した場所にある。

この位置関係ならば、全部手に入れることも考えていたんだが、さすがにどれも別方向となると面倒くささが勝ってしまう。

とりあえず、選択肢としてはマズール池とリウル湖のどちらか。

何となくだが、湖のほうが他の調達も捗りそうだし、リウル湖に行ってみるとするか。

まあ池のほうが標的を探すのは簡単そうだし、どちらも一長一短ではあるんだけどな。

俺は購入した地図にリウル湖の情報を書き込んでから、メルデルクを出発した。

メルデルクから進むこと約三時間。

目的地であるリウル湖が見えてきた。

話によれば徒歩だと半日はかかるとのことだったが、俺の移動速度なら三時間で辿り着くことができた。

本気を出せばもう一時間は縮められるが、あまり速度を出し過ぎるとエンペラがうるさいため仕方がない。

「エンペラ、目的地に着いたぞ」

「ん? もう着いたのか? 相変わらずおかしな足の速さだな」

「ここからはエンペラにも働いてもらうぞ。ちゃんと気合いを入れてくれ」

「空間魔法を使うだけだろ? 戦いはジェイドだし、私はまだ寝ている」

大きくあくびをすると、リウル湖を一瞥だけして鞄の中へと入り直したエンペラ。

今さらではあるんだが、反応も薄いし、一緒に冒険している感がゼロだ。

エイルの過剰反応を若干鬱陶しく思っていたけど、今度からはもう少し乗ってあげようと思う。

冷たいエンペラを見て、そう心の中で決意した俺は、静かにリウル湖へと向かっていった。

リウル湖は思っていたよりも大きな湖だった。

反対岸まで十キロはあるだろうし、泳いで向かうのも大変そうな距離。

幸いにも湖の水は綺麗そうなため、泳ぐことはできるだろうが……積極的に入りたいとは思えない。

とはいえ、肝心のファントムシャークについての情報が少ないからな。

この湖にいることは間違いないと分かっているが、どう探すかが非常に問題だ。

ひとまず、釣り竿で釣れるか試してみるか。

「……ジェイド、何をしているんだ?」

「目的のファントムシャークを釣るために、釣り竿を作っている。エンペラも釣りをするか?」

「……釣ったら食べられるのか?」

「毒がなければ食えるんじゃないか? 水は綺麗だし、意外と美味いかもな」

「ならやる」

意外にも食いつきを見せたエンペラ用に、小さい釣り竿を用意して渡す。

餌は水辺の柔らかい土に潜んでいる虫を捕まえ、糸の先端の針に付けて完成。

ファントムシャークの卵が目的の食材であることからも、ファントムシャークはそれなりの大きさなのは間違いない。

まずはファントムシャークの餌となる、小さい魚や小型の魚系魔物を釣ることが先決だ。

「こんな安っぽい釣り竿で釣れるのか? それに釣りは初めて――って、うわ! なんか引っ張られてる気がする!」

文句を言いながら釣り糸を垂らしたエンペラだったが、どうやらすぐに反応があったらしい。

リウル湖はメルデルクから微妙に距離があるし、人が近寄らないから魚や魔物の警戒が薄いんだと思う。

「思い切り引っ張り上げろ。リールはないから、力で引き上げるしかない」

「んぐぐ……結構重い。魔法で弱らせ――」

「駄目だ。他の魚が逃げるだろ」

「くそー。思っていたよりも大変だ」

横着をしようとするエンペラを止め、単純な力だけでかかった魚と格闘させる。

俺が手伝ってあげても良かったんだが、これまでの態度を考えたらエンペラにやらせたほうがいい。

ということで、俺は静観してエンペラが釣り上げるのをひたすら見守ることにした。

そして獲物と格闘すること数分後。

エンペラはようやく魚を水面から釣り上げた。

「ようやく釣り上げたか」

「うわっ、大きい! ジェイド、取れ!」

魚のサイズとしては中くらいだが、エンペラと同じサイズだと考えたら、よく釣り上げたと思う。

ここから先はさすがにどうにもできないだろうから、俺が捕まえてやることにした。

「中々のサイズだな。見た目も気持ち悪くないし、美味そうだ」

「おい! 私の魚だから私が食べる」

「俺は食べはしないが、ちょうど良さそうなサイズだし、ファントムシャークの餌に――」

「絶対にだめだ。私が食べる」

俺が言い切る前に拒否してきたエンペラ。

こうなったら意地でも譲ってくれないだろうし、この魚はエンペラ用だな。

ルンルンで覗き込んでくるエンペラを前に、俺は内臓の処理をすぐさま行う。

そして離れた背後に焚き火を準備し、串に刺してから軽く塩を振り、地面に突き刺した。

「後は焼けるまで待つだけだ」

「早く焼けんかな?」

「焼けるまで時間がかかるし、釣るのを手伝ってくれ」

拒否されるかと思ったのだが、すぐに釣れたことで釣りを好きになったのか、新たに餌をつけて糸を投げ込んだ。

投げ入れるまではエンペラのビギナーズラックかとも思ったが、次もまた入れ食い状態だったため、本当に釣れやすい場所なんだと思う。