軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編『ジェイドの道具屋繁盛記』 その46

ジェフは酒が好きとのことで、酒屋で良い酒を購入してからジェフの家へとやってきた。

辿り着いたのは、想像していたよりも普通の家。

俺はしっかりと教えられた家であることを確認してから、ドアをノックした。

ただ、ノックしても反応はなく、誰も出てこない。

家の中には人の気配があるため、恐らく居留守を使っているんだと思う。

いつもならここで帰っていたところだが、営業日まで日数があまり残されていないため、俺は粘ってノックをし続けると……ようやく出てきてくれた。

「んだよ、うるせぇな。……お前、誰だ?」

「ジェイドという。レスリーから聞いて訪ねてきた」

「ジェイド? ……ああ、俺の店を買ってくれた奴か。随分と繁盛しているみたいだな」

「おかげさまで人気店になったと思う。挨拶に来れず、悪かったな」

「別に構いやしねぇよ。きっちりと金は払ってもらったからな。んで、今日は何の用で来たんだ? ただ挨拶しに来たってわけじゃねぇだろ?」

俺がジェイドだと分かった今でも、向けてくる視線は非常に冷たい。

酒の臭いも強いし、用件は聞かれたものの、“とっとと帰れ”と口では言わずとも、全身でそう伝えてきている。

「ああ。レスリーから、ジェフが元アンティーク専門の質屋をやっていたと聞いて、鑑定をお願いしに来た。もちろん費用は払うし、お土産も持ってきた」

心底面倒くさそうな表情をしたジェフに、先ほど買ってきた良い酒を見せると態度が一変。

ドアを勢いよく開けると、酒を見るために外へ出てきた。

「おい! これはオキシレッドの地酒じゃねえか! 俺のために買ってきてくれたのか?」

「鑑定を受けてくれたら渡そうと思って買ってきた。ただ、半端な鑑定をしたら酒はなしで、鑑定分の費用だけだ」

「やるとなったら半端な鑑定はしねぇよ。よし、ちょっと中で待ってろ。準備してくる」

酒の効果は絶大で、あれだけやる気のなかった忌避ムードが一変。

歓迎ムードで出迎えてくれた。

お土産に酒を購入しておいて良かったな。

とりあえず中に入らせてもらったが、家の中は酒瓶だらけ。

お世辞にも綺麗とは言えないゴミ屋敷で、本当に鑑定できるのか不安になってくる。

「待たせたな。鑑定してもらいたいものを見せてくれ」

「鑑定してもらいたいのはこれだ。大盗賊が残した宝だな」

「随分と胡散臭ぇな。……ただ、偽物って感じじゃなさそうだ」

ただの酒好きから一転。

俺が手渡した大盗賊の宝をルーペで確認する目つきは職人そのもの。

様々な色の光を当てながら、道具を駆使して鑑定してくれている。

じっくり見ているようで、鑑定の速度はかなり早い。

宝は箱いっぱいに入っていたが、ジェフは20分ほどで全ての鑑定を終わらせてくれた。

「ふぅー、さすがは人気店の店主だけある。どれも本物だな。特にすごいのはこの指輪」

そう言って見せてきたのは、俺が一番良いと思った鳥の装飾が施された指輪だった。

装飾が細かく施されていただけでなく、何かオーラのようなものも見えたから、希少なものだとは思っていた。

「何か有名な指輪なのか?」

「ああ。『鷹の目の指輪』といって、魔力を込めると自分の真上からの景色を見ることができる。敵と相対したときは相当使えると思うぞ」

「そんな効果があったのか。確かに使えそうだな。金銭的な価値はいくらなんだ?」

「白金貨500枚はくだらない。歴史的価値、美術的価値、その上で超実用的だからな。……ただ、これは20年以上前に帝国の大貴族の家から盗まれた品だ。裏ルートを使っての売却じゃないと、下手すれば捕まるぞ」

白金貨500枚と聞いて心臓が跳ね上がったが、その背景を聞いて一瞬で萎えた。

価値が高いのは嬉しいが、自分の店で売れなければ何の意味もない。

あくまでも『シャ・ノワール』を有名にするために、俺は店を経営しているからな。

「売れないのなら意味はないな」

「意味がないことはないだろ。売りたいなら、いい商人を紹介するぜ。仲介料はもらうがな」

「いや、売る気はない。自分で使うか、ちゃんと返すかの二択だな」

「返す……? 信じられねぇ!」

本気で信じられないといった表情を見せたジェフ。

少し前の俺ならあり得なかったが、変な風評被害が出るほうが嫌だ。

20年以上前の出来事とはいえ、元の持ち主が割れているなら返す方が得策だと思う。

「店を経営している以上、危ない橋は渡りたくないんだ。とにかく、他のものの価値も教えてくれ」

「信じられない真面目さだな。とりあえず、パッパッと教えていく」

明らかにジェフのテンションは落ちてしまったが、仕事はしっかりとこなしてくれた。

鷹の目の指輪が飛び抜けて価値が高かったが、他の品も十分に価値のあるものだった。

ただ、値段的に売りに出すには高すぎるため、売り切るには相場よりもかなり低く出すことになると思う。

特売品として宣伝も打つため、今日の夜から色々と準備をしなくてはいけなさそうだ。

大変だが、名を売る絶好の機会だし、ここは寝る間も惜しんで働くとしよう。