軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第322話 下見

ほとんど勢いのまま引き受けてしまったが、本当に大丈夫なのか心配で仕方がない。

楽しみなのは間違いないが……はたして俺に務まるのだろうか。

「一つ教えて欲しいのだが、レスリーはどんな店をと考えているんだ? 二号店よりも小さい店というのはさっき聞いたが」

「どんな店って聞かれてもなぁ……。仲の良い酒飲み友達が店を閉めるから、俺に店そのものを買ってくれないかって話に乗っただけだ! 特に構想なんかもないし、俺にはこの本店があるから本当にジェイドの好きにしてくれて構わねぇ!」

「流石に適当すぎないか? 自由にしていいって言うのが一番困るんだけどな」

「だって本当に好きにしてくれて構わねえからなぁ。格安で譲り受けるつもりだし、失敗したとしても懐も一切痛くない!」

そういうことであれば、俺も気が楽といえば気が楽なんだが……。

初めての経営で、何してもいいというのはあまりにも難しい。

俺が腕を組んで頭を捻らせていると、レスリーは大きく一つ手を叩いた。

「あっ、そうだ! 今からちょっと店を見に行くか? ジェイドが浮かれて早く来すぎたせいで時間があるし、開店の時間までに見に行くことができる!」

「見に行けるなら見に行きたいな。そんなに近い場所なのか?」

「んー、距離的には微妙だ! ピンク通りの近くなんだが――」

「確かに、近くもなく遠くもないな」

「そういうこと! ただ、行ける距離ではある!」

「なら行きたい」

「よし、決まりだな! スペアキーも預かっているから、中も見ることができるぜ! すぐに行こう!」

こうしてレスリーの案内の下、三号店があるというピンク通り近くまで向かうこととなった。

ヨークウィッチに来たばかりの時に、ピンク通りの宿を取っていたため馴染み深い場所であり、少しだけ運命的なものを感じる。

ワクワクしながらレスリーの後をついていくと、一軒のボロい店の前で立ち止まった。

外観だけでは元が何屋だったのか分からないほど古びており、レスリーはそんな店の鍵を開け始めた。

「久しぶりに来たが思っている以上にボロいな! 鍵も……錆びていて全然開かない!」

「レスリー、大丈夫なのか?」

「大丈夫だ! ――おら、開いた!」

壊れるんじゃないかと思うほどガチャガチャと鍵を抜き差ししたレスリーだが、何とか解錠に成功した様子。

笑顔で親指を立てているレスリーに対し苦笑いを浮かべつつ、俺は三号店予定の店の中に入った。

一年ほど使っていなかったようで、中は想像以上に埃まみれで汚れている。

外観以上に何の店か分からない上に、店内も思っていたより狭い。

「こりゃひでぇな! 一応地下に倉庫があるって言っていたが、この狭さじゃ陳列できる数も限られるだろ!」

「一号店の半分くらいの広さか? 立地も良くないし、経年劣化も激しい。人が来るかどうかも怪しいな」

「格安で譲ってくれたと思っていたが……まさか値段通りだと思わなかったわ! これじゃ買い手が見つからなかったのも無理はねぇな! ジェイドには悪いが、新店を任せる話はなかったことに――」

「いや、やらせてほしい。正直、この店を見るまでは不安の方が勝っていたが……この店なら本当に失敗してもしょうがないレベルだからな。そういうことなら気楽にできる」

「本当にやるのかよ! 時間と金を無駄にするだけになるぞ?」

「時間はまぁしょうがないな。金についてだが……俺はこの店に一銭もかけないことに決めた」

俺のそんな宣言に対し、アホを見るような顔で首を傾げたレスリー。

少し言葉足らずだったかもしれない。

「金をかけないって意味がわからん! 道具屋をやらないってことか?」

「いや、道具屋をやるぞ。ただ、売るものに関しては全て俺が調達する。というか、俺が調達したもの以外は売らない」

「…………なるほど。それなら売れば売った分だけそのまま利益になるってことか!」

「商品の調達を行わなきゃいけない分、店を開ける時間は限られてくるだろうけどな。ただ、珍しいものや良いものを取り揃えれば客は来る……はず」

「……面白い! めちゃくちゃ良いと思うぞ! 普通なら絶対に無理な方法だがジェイドなら可能だろ! ローリスクだし、何より面白そうだ!」

俺の提案にレスリーは手放しで喜んでくれており、この喜びようを見るとやれるのではという気になってきた。

正直自信のほどは半々だが、ギルド長であるエイルの力を借りれば情報は集まるだろうからな。

俺はボロボロの建物を見渡しながら、この店を繁盛させることを夢見て心を躍らせる。

「レスリーが良いというならやらせてほしい。さっきも言ったが人生を賭して頑張らせてもらう」

「もちろん良いに決まっている! こんな建物って知らず、心配だからやめようって言っただけだしな! ただ、やると決めたからには後で文句は言わないでくれよ!」

「もちろん文句なんか言う訳がない。全力で務めさせてもらう」

このボロボロの店をどう人気店にするのか。

俺はこの店の未来を想像しながら、レスリーと共にじっくりと見て回ったのだった。