軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第225話 不法入国

ヨークウィッチを出発し、久しぶりの野宿を挟みながら帝国との国境に辿り着いた。

行きは偽造身分証のお陰で楽々と通れた場所だが、クロに勘付かれないように今回はあの偽造身分証をヨークウィッチに置いてきたため、何とかして国境を通らないといけない。

聳え立つのはヨークウィッチを囲んでいる門とは比べ物にならない城壁。

これだけの高い壁を建てるのに、どれだけの金がかかっているのか考えるのも恐ろしい。

まぁ俺なら壁をよじ登って超えることもできるが、魔法による妨害が施されていた時が非常に厄介なんだよな。

帝国から王国に来た時の兵士の感じを思い出す限りでは、今のところ目を盗んで門から通る方が安全だと思ってしまう。

それか……行商人の馬車に潜り込み、荷物と共に抜けるのも一つの手。

高い国境の壁を眺めながらどう帝国に向かうかを考え、俺が辿り着いた考えは……兵士の目を盗んで通り抜けること。

気配を消しての侵入は俺が得意としていることだし、数だけ揃えて質が高くない兵士たちの中ならすり抜けることができると判断した。

念には念を入れ、日が傾き暗くなり始めるのを待ってから、俺は気配を消して国境に近づく。

完全に暗くなると国境の門は閉ざされるため、ここからは慎重かつスピーディな動きが求められる。

まずは目立っている冒険者パーティを見つけ、そいつらに紛れるように背後についた。

気配も足音も消しているため、背後につかれたことに気づいていない冒険者たちに紛れ、怪しまれることなく国境付近に到着。

朝から仕事をこなし、業務が終わる寸前にやってきた如何にも面倒くさそうな冒険者パーティを見て、露骨に嫌そうな表情を見せている兵士たち。

面倒くさいという感情から兵士の注意が散漫になったのを感じ、どんちゃん騒ぎしている冒険者パーティから絶好のタイミングで離脱した俺は、兵士の死角となっている場所に滑り込むように隠れた。

ここにいる誰一人として俺のことには気づいておらず、隠れ蓑にした冒険者たちの身分確認に躍起になっている隙を窺い、俺は死角から死角へと移動しながら国境を超えることに注力する。

「言われる前にさっさと身分証を出せ! 前の人間を見て流れは分かってんだろ!」

「なんでそんなにキレてんすかぁ? もっと楽しく生きましょうや! ――ねぇ?」

「うぇーい!」

「……ちっ! いいから一列になって黙ってろ!」

関係のない俺でもイラッとくるようなノリを行っているため、兵士たちの意識は完全に冒険者に注がれている。

意図した訳ではなかったが、最高の隠れ蓑を引き当てることができたようだ。

死角から死角へと移動している俺に兵士が気づく気配はなく、騒いでいる冒険者一行も俺には気づかないまま。

そして……こんなに簡単と超えることが出来ていいのかと思うほど、俺はあっさりと帝国に入ることができた。

帝国に入ってからは、とにかく素早く国境を離れる。

しばらく移動したが追手の気配もないし、誰にも気づかれることなく無事に国境を超えることができたと見ていいだろう。

ここからの動きとしてだが……まずは帝都に向かいながら、情報収集を行いたいところ。

帝都はクロのテリトリーなため、街に入った時点で勘付かれる可能性はかなり高い。

まずは帝都に向かうまでに情報を搔き集め、現在のクロについてを知れるだけ知りたい。

幸いにも金はあるため、まずは適当な街に入って宿屋を取ろう。

拠点を構えるのは帝都から近い街にしたいから、拠点にできそうな街についても調べないとな。

やることは多いが、情報集めに関しては暗殺者時代に散々行ってきた。

まぁ相手がクロというのは別ものと言っていいぐらい違う部分ではあるが、これまでの経験を活かせば勘付かれることなく探ることができるはずだ。

国境からひたすら走り続け、夜が明けた辺りで一つの街が見えてきた。

三十年以上帝国に住んでいたが、任務以外では帝都から出たことがなかったため、帝国の地理については詳しくない。

この街がなんて街なのかも分からないが、かなりの大きさの街のようだし、とりあえずこの街で情報収集がてら休むとしよう。

ずっと野宿してきたせいもあって、体の匂いもキツくなってきた。

せっかくのフィンブルドラゴン防具が駄目になる前に、シャワーを浴びて綺麗にしたい。

クリーニング店でもあればいいのだが、それは街に入ってみないと分からないな。

そんなことを考えながら、俺は目の前に見えた名も知らない街に入ることを決めた。

もちろんながら身分証はないため、門を登って侵入する形で街に入る。

安全にいくのであれば、身分証の確認がされない小さな街や村に行くのが良い選択なのだろうが、情報を集めることを考えたら比較的大きな街じゃないと集まらないからな。

これくらいの高さの壁なら余裕で飛び越えられるし、人で賑わっていないこの時間帯ならまず見られることもない。

周囲に十分すぎる警戒をして壁を飛び越えたこともあり、誰にも見られることなく街に入ることができた。

ヨークウィッチと比べると栄えていないように感じるが、帝都までの足がかりの一つだし及第点の街だろう。

まずは数日泊まるための宿屋を探し、久しぶりの料理を食べながら少し休息を取るとしようか。