軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第150話 何か

二日後の早朝。

今日は休日であり、特に何の予定もない日。

まぁ予定を入れていないだけで、やりたいことはたくさんあるのだが……。

今日は『都影』についてを徹底的に捜索するつもりでいる。

マイケルの話では、アジトがなくなったことで『都影』はヨークウィッチから撤退するはずとのことだったが、俺はそう思っていない。

この街には“何か”があり、『都影』はその“何か”に執着しているため撤退することはない。

正直その“何か”については心当たりはないが、建設したアジトの費用が余裕で回収できるほどの莫大な利益に繋がるのは間違いない。

となってくると、一番の筆頭候補は――違法ドラッグか。

ヨークウィッチで製造し、製造したドラッグを王国三大都市にばら撒く。

国外へも運び出せれば、俺なんかでは想像できないほどの金が飛び交うはず。

ある程度の推測を立てたところで、身支度を整えてから宿屋を出る。

今日は早朝の明るい時間から動くため、いつものフードに加えてネックウォーマーで鼻の辺りまでしっかりと覆い隠した。

傍から見たら怪しさしかない人物だが、基本隠密で行動するため基本的に一般人には見られないはず。

俺に勘付くような人間がいた場合の対応策であり、俺を怪しく思えた人物こそ怪しい人物とも言える。

周囲に気をつけつつ、まずは闇市へと行ってみるとしようか。

新しく建設されたアジトのあった場所のため、何かしらの情報は絶対に得られるであろう場所。

ただ既に制圧済みとのことだし、大した情報を得ることできないだろうが行ってみるに越したことはない。

隠れる場所が少なくこの恰好だと目立つ可能性もあるが、すぐに立ち去るため大丈夫なはずだ。

宿屋を出て、人目につかないように屋根上を移動しながら闇市へとやってきた。

ここから先は隠れる場所がないため、口元を覆い隠していたネックウォーマーを下げ、代わりにフードを深く被ってアジト付近に近づく。

闇市からは強者の気配は一切感じず、完全に撤退していることがすぐに分かった。

わざわざ戻ってくることも考えにくいことから、情報らしい情報は得られないだろうが一応向かう。

数日前まであれだけ賑わっていたアジトは閑散としており、入口付近には複数の兵士が見張っている。

中の調査も未だに行っているようで、窓からは兵士やギルド職員が調査している姿目に入った。

マイケルの名前を出して、アジトの中を見させてもらうのもアリではあるが、大した情報が見つからないのは分かりきっている。

俺はアジトから視線を切り、アジトの周りにいる闇市の住民に視線を向けた。

構成員のほとんどを捕まえたと言っていたが、逃げ出した者やアジトにいなかったものも多少なりといるはず。

下っ端ならばほかに行く当てもないだろうし、このアジトの様子を窺っている者がいると俺は踏んだ。

アジトの付近の人間を見張ること数分。

俺の予想通り、頻りにアジトを確認している一人の男を発見。

野次馬かもしれないが、視線の向け方や兵士を避けている様子からも構成員である可能性は高い。

顔を見られないように拉致し、情報を聞き出すとしよう。

俺は目をつけた男の後を追い、人気のない場所に入った瞬間に背後から口を押えて拘束した。

藻掻く男の首元に短剣を当て、大人しくさせてから路地裏に引きずり込む。

「暴れるな。暴れた瞬間に殺す。俺の質問に答えればすぐに解放する」

落ち着くのを待ち、首を縦に振ったことを確認してから口に押し当てていた手を外した。

叫ばれたら逃げるつもりだったが、首に当てている短剣を恐れているようで叫ぶことはしない様子。

「一つ目の質問。お前は『都影』の構成員か?」

「……ち、違う。お、お前は誰なんだ? 兵士じゃないよな?」

「俺は兵士ではない。だからこの場で即座に殺すことができる。ちなみに脈拍からすぐに嘘だと分かるぞ。――もう一度聞く。お前は『都影』の構成員か?」

「そ、そうだ。嘘をついてすまなかった。こ、殺さないでくれ」

やはりこの男は『都影』の構成員だったか。

口の軽さから考えても下っ端中の下っ端だろうが、聞き出せる情報は聞き出そう。

「無駄な言葉は発するな。逃げた構成員がどこにいるか知っているか?」

「ほ、本当に知らない。俺も仲間を探しにアジトを見張っていたんだ」

「ここの他にアジトはあるのか?」

「多分ないと思うが、詳しいことは何も知らないんだ。正式に入ったのは二週間前で、俺は誘われたから入っただけなんだよ」

今にも泣きそうな声でそう言った男。

その言葉に嘘偽りはなく、本当に詳しいことは知らないようだ。

情報を持っていないことは最初から分かってはいたが、些細な情報でもいいから手に入れておきたい。

「それじゃ何か知っている情報はないのか? どんな些細なものでもいい」

「あ、アジトのリーダー的な人物の名前はレッドと呼ばれていた。黒髪のスラッとした男で、その周りには強そうな人間が複数いた。そ、それと……よく北の富裕層エリアに行っていたのを知っている。俺が持っている情報はこれだけだ。他には本当に何も知らない」

やはり例のバーから出てきた人物が、支部長に代わるリーダーだったか。

名前はレッド。なんとなく偽名っぽいがテイトに聞いてみるのもアリかもしれない。

それと北の富裕層エリアにも、前にマイケルを襲った女と共に向かっていた。

身を隠しているであろう場所は、北の富裕層エリアである可能性が一番高そう。

「分かった。情報提供助かった」

「に、逃がしてくれるのか?」

「ああ。十秒目を瞑って立ち止まった後、ゆっくりと闇市から出ろ。死にたくないなら、ここには二度と近づくな」

俺は男の返事を待たず首元に当てていた短剣を納めてから、素早く路地裏を後にした。

予想していたよりも、良い情報を手に入れることができたかもしれない。

次に北の富裕層へ向かい、気配を探って“レッド”なる人物を追うとしよう。