軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

神光教のアジト

大人しく城で待機してから数日。

精霊からの報告はなく、庶民の格好をして神光教を探す町の人に扮した兵が毎日王都の町を探し回っているが、こちらも収穫はない。

完全な手詰まり状態に、皆に焦燥感が募ってくる。

そんな最中、一人ご満悦なのがひー様だ。

女好きのひー様は、城で働く女性に片っ端から声を掛け、女性との一時を楽しんでいる。

女性も最初は迷惑そうにしていたが、中身が最高位精霊と聞くや、信仰心の厚い獣王国の女性は敬愛と尊敬の眼差しをひー様に向けちやほやし始める。

そんな扱いにひー様も調子に乗り、若い女性だけでなく子供から年寄りまで女性に次々に声を掛けていくから始末に悪い。

精霊に歳は関係ないと言うのだが、さすがに子供は止めろと瑠璃が釘を刺した。

女なら誰でも良いのかと突っ込みを入れたくなるほど女性と見るや片っ端から声を掛けていくひー様に、なんで自分にはあんな塩対応なんだと瑠璃は不満であった。

瑠璃は好みじゃないというが、そんなのを気にしているようにはとても見えない。

そう不満を告げれば「凡人には分からぬこだわりがあるのだ」と、瑠璃への態度を変える気はないようだ。

そんなひー様は今、アルマンの妃達を広間に集め、お楽しみのまっ最中だった。

食事と酒が所狭しと並び、中央に座るひー様の周りにはアルマンの妃達が我も我もとひー様にしな垂れかかり酒をついでいる。

それを締まりのない顔で受け入れるひー様。

神光教の件で忙しいアルマンは妃達と会えてはいないようで、今ではアルマンではなくひー様のハーレムと化している。

アルマンがこの状況を見たら愕然とすることだろう。

神光教を早く片付けないと後宮が乗っ取られるかもしれない。

そうこうしていると、ようやく待ちに待った知らせが瑠璃の元に入ってきた。

『ルリー、見つけたよ神光教ー』

「本当!?」

『うん、今他の子達が見張ってる』

慌ててアルマンの執務室に飛び込んだ。

「獣王様、神光教が見つかったみたいです!」

「ああ、こちらにも今報告が入った。

接触したのは獣王国の兵士のようだ」

最近彼女に振られたというその兵士。良い感じで悲壮感を漂わせていたのだろう。今のところおとり捜査だとばれてはいないようだ。

「どうするんですか?捕まえますか?泳がせますか?」

「今は泳がせる。アジトに帰るそいつの後をつけて場所を特定する」

「見つからないように注意しないとですね」

「ああ。接触した兵には教主に会いたいと言って神光教のアジトまで案内させるように言ってあるが、それができなかった場合困ったことがある」

「なんですか?」

「王都の中は問題ない。人が多いしそれを隠れ蓑にして後をつけるのはたやすい。

だが、一歩王都の外に出れば、そこは荒野が広がっている。

山まで隠れる物がほとんどないから、後をつけていては確実に見つかる。どうしたものか……」

山の近くに行けば行くほど人通りもないので、見つかればれば警戒されるのは確実。

かといって姿を見られず後をつけるのは状況的に難しい。

「それなら動物に変化して後をつけたらどうです?獣王国なら亜人がたくさんいますよね。

動物の姿ならば見つかっても警戒されないのでは?」

「それは駄目だ。確かに動物の姿ならば警戒されないかもしれないが、亜人の変化した姿と本物の動物とでは見る者が見れば分かる違いがある。

亜人とバレたら元も子もない」

本当の猫の尻尾が一本に対して、猫族が猫の姿をとった時の尻尾は二本であるように、見る者が見れば分かる相違点があるので、亜人を使うのは危険なのだ。

瑠璃は少し考え込んだ後、大人しくしていろと怒られるのを承知である提案をしてみた。

「それなら私が行きましょうか?」

「お前が?」

「はい。コタロウ達なら中身は精霊ですけど、体は本物の動物のものですし、見つかっても問題ないんじゃないでしょうか。

コタロウの風の力を使えばある程度離れていても後をつけられますし」

王都から山までの間は荒野が続き、隠れる物が何もないので、後をつけていれば丸わかりだ。

しかし、それもコタロウの力を借りれば解決する。

山まではコタロウの力で後をつけ、精霊殺しの影響で探せない山の中は動物の姿で後をつける。

「お前はどうするんだ。人の姿では見つかるぞ」

「私は腕輪で猫になります。

腕輪はリボンか何かで隠して、逃げ出した飼い猫風を装うので大丈夫です。

見つかっても警戒されませんよ」

ネズミになる腕輪を所持していた神光教だ。

瑠璃の腕輪を見て気付かれる可能性があるので、隠しておく必要がある。

リボンで隠せば、誰かに飼われていた猫が逃げてきたとでも勘違いするはずだ。

瑠璃に同行するのは狼のコタロウとクリオネのリンとカピバラのカイ。

ちょっと変わった組み合わせではあるが、動物達が自分をつけていると思いはしないはず。

「だがな、危険だろうが」

「大丈夫です。アジトを見つけるために後をつけるだけですから。

ちゃんと離れたところから見てます。危ないことなんてありませんよ」

「お前は城に残って、その腕輪を別の者に使わせるという方法もあるが?」

「それでもいいですけど、いざという時コタロウ達を止められるんですか?

神光教は私の暗殺事件起こしてるので、コタロウとリンはかなり頭にきてますよ。

神光教を前にしたら、怒りにまかせてそのまま乗り込んで八つ裂きにしちゃうかも」

「……それは困るな。だがな、愛し子に危険なことをさせるのは」

「私の周りにはコタロウが常に結界を張ってあるので、偽死神の時のように私が襲われる危険性はありませんよ。

あの時は私もコタロウ達も、少し慢心があったと思います。コタロウ達も自分達がすぐ近くにいるのにまさかって。

でも、今は特にコタロウが警戒しまくってるので前のように隙を突かれるということはないと思います」

コタロウ達がいると言われれば反論もしにくいのか、瑠璃の案が一番確実だと判断したのか、アルマンは渋々といった様子で納得した。

「……絶対に近付きすぎるなよ。危険だと思ったらすぐに帰ってこい。

後、精霊殿達から決して離れるなよ」

「分かってますって。ゾンビがうろうろいるような所で単独行動なんて怖くてできませんから」

「後をつけるだけだ、いいな?」

念を押すアルマンに頷き、瑠璃は「アジトを見つけたらすぐに帰ってきます」といい部屋を後にした。

瑠璃が向かったのは王都の町ではなく、町の門の外の遙か上空。

そこで猫の姿へと変わりコタロウに乗って空を飛んでいる。

眼下には獣王国の王都が広がっていた。

そこで瑠璃は兵に接触したという神光教を待っていた。

見張っている精霊によると、神光教はそうとは知らない兵と店で話した後、同じような神光教の助けを求める幾人かの人とも接触したようだ。

冷やかしの者もいたが中には本気で信者になるから助けてくれという者もおり、早く解決しなければまたゾンビを作られる可能性がある。

『ルリ、そろそろ出てくるようだ』

しばらく上空で待機していると、一人の男が門から出てきた。

神光教と接触したおとり捜査の兵が、手はず通り教主に会わせてくれと言いアジトまで案内させようとしたが、どうやら上手くはいかなかったようだ。

瑠璃も兵が堂々とアジトを見つけるのであれば引き下がったが、無理だったのなら仕方がない。

上空から距離を取りながら後を追う。

コタロウの力で目的の人物はしっかりとロックオンしているので、後をつけているとは思われないほど距離を離してついていく。

山に近付いてきたところで、先回りし山に降り立った。

山にいる常駐の警備兵のいないところから山に入った男を草木の影から見つめる。

辺りを警戒している様子できょろきょろしながら先に進んでいく男の後を音を立てずに追う。

山の中はやはり精霊殺しが影響しているのか、コタロウとカイでも見えづらいようだ。

ある一部だけではなく、この山全体に影響が出ているらしく、見失わないために男から目を離さないよう気を付ける。

どんどんと山の奥に入っていくと、ある場所を通った時、以前にも感じた膜を通るような感覚を覚える。

『これはあの死人の村でも張ってあった結界だな』

『それって中から出られないようにする?』

『うむ』

つまりこの先に何かあると言っているようなもの。

警戒しながら先に進むと、男がいる方向とは違う、横方向の木ががさがさと動いた。

にゅっと表れたのは瑠璃が怖くて仕方ないあのゾンビ。

思わず「にぎゃー!」と叫んでしまった。

「誰だ!?」

当然誰かいると気付かれてしまった。

我に返った瑠璃は慌てて草むらからちょこんと顔を出し「にゃーん」と鳴いて見せた。

「なんだ、猫か……」

警戒を収め歩き始めた男に瑠璃達はほっとする。

『ルリ』

リンから叱責を含んだ声が掛けられ、瑠璃は尻尾を丸め『面目ない』と謝る。

まだそこにいるゾンビは血にしか反応しないのか、瑠璃達を見てもなんら動きを見せない。

うつろな目でまたどこかに歩いていった。

その後も何度かゾンビと遭遇しびびったが、何とか悲鳴だけは飲み込んだ。

そうしてしばらく歩いていくと、前方に大きな洞窟が姿を見せた。

その岩の洞窟の入り口には人が立っており、男は躊躇いもなく入っていく。

『ここが、神光教のアジトかな?』

『恐らく』

しばらく入り口を監視していたが、そう人の出入りは激しくないようだ。

入り口を守る警備が二人。同じ白いローブを着ている。

そしてコタロウによると洞窟の周囲に別の結界が施されているようだ。

それは先ほどの作用とは別の、侵入を防ぐためのもの。

入るには結界を張った者より魔力が強いか、張った者の許可がいるという。

もしかしたら外にいるゾンビを入れなくしているのかもしれない。

洞窟の中はどれだけの広さがあり、どれだけの人が中にいるかは外からでは分からない。

神光教と共に村を出て行ったという村人もここにいるのだろうか。

『私ちょっと見てくるわ』

そう言って瑠璃から離れたのはリン。

『えっ、ちょっとリン!?』

『ルリ達はそこにいて』

『そこにいてって、危ないわよ。もし見つかったら』

『大丈夫よ、私は小さいから見つかりづらいわ』

まあ、例え見つかったとしてもリンがどうこうなるとは思えない。

心配なのは中の人達だろう。

『……見てくるだけね。変なことしちゃ駄目よ』

『分かってるわよ』

そう言ってリンは入り口に立つ警備の者の目をすり抜け中へ入っていった。

『行っちゃった……』

『俺も行ってきて良いか?』

そんなことをカイが言ってきたが、カイの大きさではすぐに気付かれてしまう。

しかも面白そうだと余計なことまでしそうだ。きっと様子を見てくるだけではすまないだろう。

『カイは駄目。何やらかすか分からないもの』

『ちぇ、つまんねえの』

リンを心配しながらしばらく待っていると、リンが何事もなく洞窟から出てきた。

『良かった、リン。何もなさそうね』

『ええ。気付かれなかったわ。

でもちょっと困ったことが起きてるみたい』

『困ったこと?』

『……中に竜族の兵がいたわ』

『竜族って、竜王国の兵士が?なんで?』

『いったん城に戻りましょう。詳しくはそこで話すわ』

わけも分からないまま、瑠璃達はウラーン山を後にした。