軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ウラーン山

火の最高位精霊から出た神光教の名前。

とりあえず落ち着いて話が出来る場所に移動することになった。

移動した部屋には、アルマンと瑠璃と火の精霊、コタロウと、リンを乗せたカイが絨毯の上に座り、ヨシュアとユアン、アルマンの側近が壁際に立つ。

精霊を相手にするなら愛し子が一緒である方がいいだろうとセレスティンが呼ばれ、しばらくして扉を開け入ってきた。

いつも通りの少し露出の高い服と、それに負けていないスタイルの良さ。

そんなセレスティンを目にした火の精霊は目を見張り、勢い良く立ち上がったかと思うと、セレスティンの手を取って跪いた。

「美しい人、あなたの名前は?」

それまで見せたことのない甘い笑みをセレスティンに見せる。

セレスティンは少し困惑した表情を浮かべながらも、この場にいる以上変な相手ではないと判断したのか戸惑いながら答えた。

「セレスティンですが、あなたは?」

火の精霊は心に刻むように名を口にした。

「セレスティン……。なんとあなたに相応しい美しい名だろうか。

私は火の最高位精霊だ。今は実体化してこの姿になっている」

火の最高位精霊だと聞いたセレスティンは驚く。あらかじめ火の精霊が来ていることは聞いていたが、人の姿をとっているとは思わなかったのだ。

瑠璃の側にいるコタロウ達は皆動物の姿をとっているのでなおさら。

「あなたが火の精霊様でしたか。失礼致しました」

逆に跪き礼を取ろうとしたセレスティンを火の精霊は押し止める。

「そんな必要はない、美しい人。

さあさあ、あちらで共に座ろう」

火の精霊はセレスティンの手を取ったままエスコートし、腰に手を回し瑠璃とアルマンの間の、あいていた場所に座る。

べったりと張り付く火の精霊にユアンが反応していたのに気付いたのはヨシュアだけだった。

始終にこにことしセレスティンに優しく接する火の精霊。

その態度の違いに瑠璃が驚愕したのは当然だ。

「私と態度が違う、何で!?」

「うるさいぞ小娘。美しい彼女とお前が同じなわけないだろう。身の程を知れ」

ここまであからさまだといっそ清々しい。

コタロウに慰めてもらうように、抱き付いてその柔らかな毛に顔を擦りつけた。

『気にするなルリ。火のは元からああいう奴だ』

「うぅ、コタロウ~」

「あー、そろそろ本題に入って良いか?」

アルマンが空気を変えるように口を挟む。

主にセレスティンにでれでれとして話をすっかり忘れていそうな火の精霊に対して言った言葉だろう。

「火の精霊殿、先程神光教を倒せと仰ったが、それはどういうことなのか?」

アルマンに声を掛けられ、ようやく視線をセレスティンから外した。

「ああ、あれは千年前のことだ。

私は霊王国で樹の精霊と会った後、この獣王国にやって来た。

ウラーン山は特に火の精霊の好む力が生み出されるので、よく寝床として使っているのだ。

そこで眠りについて千年、なにやら騒がしいのに気付き目を覚ました。本当なら後百年は眠っているつもりだったのに」

寝過ぎだろうと、全員が心の中で突っ込みを入れた。

「突然起こされて機嫌は最高に悪い。そんな私の機嫌を更に悪くしたのがその神光教だ。

奴らウラーン山でなにやら小細工をして、山の力を精霊殺しの魔法で吸い取り、更に魂のない死人を作り出している。おかげでそいつらが山の中を我が物顔で闊歩している有様だ」

「なんだと!?」

ずっと探していた神光教の手掛かり。

「神光教はウラーン山にいるの!?」

「ああ。精霊殺しが使われたせいで他の精霊は居着かなくなったし、なにより死人の存在は大いに邪魔だ。

早く何とかしろと言いに、わざわざここに来た次第だ」

「えっ、でも山で精霊殺しが使われたとか、神光教がいるとか精霊達からそんな話聞いたことないけど」

瑠璃が神光教を探していることは知っているはずだ。

それならその手掛かりが見つかったなら教えてくれるはず。

「きちんと断定して聞いたか?

ウラーン山に神光教がいるかと、精霊殺しが使われたかと」

「聞いてないけど……」

知らなかったのだから聞きようがない。

「全く、嘆かわしい。精霊と契約している愛し子だというのに精霊のことを何にも分かっていないな、小娘。

下位の精霊は人で言う幼子のようなものだ。

興味は時を追う毎に移ろい、それまで持っていた興味はすぐに忘れて遙か彼方だ。きちんと断定して聞いてやらねば精霊達は答えんぞ」

『我らも普段は聞こえる声を制限したりしているからな』

『そうね。あの子達のおしゃべりを全部聞くのは大変だから』

コタロウとリンが同意し、精霊達との伝達の穴が露見する。

一人が見つけた物は全ての精霊に共有されるのかと思っていたのだが、思わぬ欠陥があるようだ。

だが、同じ精霊なら、後からその精霊の記憶を見ることもできるから、後から確認するということはあるらしい。

「ウラーン山か……。確かにあそこは人が入ってこない。隠れて何かするには最適だな。

他宗教は邪教と言い切るあいつらだ、神聖な山に入ることに何の躊躇いもないだろう。盲点だったな」

アルマンはそう言って厳しい表情を浮かべ、セレスティンも納得する。

「死人が生き返ったという話があったのもあの山の周辺でしたしね」

「場所が分かったんだからさっさと捕まえに行きましょう」

散々探して見つけられなかった神光教の居所。身を乗り出してやる気満々の瑠璃をアルマンが「まあ、待て」と止める。

「山といっても広い。山のどこにいるのか教えてもらいたい」

闇雲に探しても相手に気取られ逃げられる可能性がある。

場所さえ分かれば後は兵を向かわせるだけ。

なのだが、火の精霊から返ってきたのは簡素な答だった。

「知らん」

「へっ?」

「だから知らんと言ったのだ」

ぽっかーんという言葉が相応しい顔で瑠璃は火の精霊を凝視する。

「はっ?知らんって今さっき山にいるって言ったじゃない」

「山のどこかにいるのは確かだ。

だが、私は火の精霊。捜し物は不得手だ」

「じゃあ、コタロウかカイに頼めば……」

「山では精霊殺しが使われていると言っただろう。あれが邪魔して風のや地のの力でも見るのは難しくなっている」

「何かないの?北とか南の辺りだとか。せめてもう少し範囲を狭めてくれないと、探してる途中で気付かれて逃げられちゃう」

「最近まで寝ていたのに知るはずがないだろう」

「役立たず~!」

思わずぽろりと飛び出した言葉。

火の精霊は、不愉快そうに眉をひそめる。

「聞き捨てならんな、小娘。

誰のおかげで神光教の居所が分かったと思っているんだ」

思ったより本気で怒っている火の精霊に、瑠璃がたじろぐ番だ。

「そうですよ、ルリさん。

火の精霊様に対して無礼はいけません」

精霊への信仰心の厚いセレスティンは、そう言って火の精霊を庇う。

すると、火の精霊は感激したようにセレスティンの手を握った。

「美しい人は心根まで美しく優しいようだ。ますます気に入った」

それまでの怒りはどこへやら、でれっと笑み崩れる火の精霊。

女好きというのは噓情報ではないらしい。

呆れたように溜息を吐いた瑠璃はふとあることを思った。

「そう言えばあなたのことは何て呼んだらいいの?

火の精霊ってのも言いづらいし、コタロウ達みたいに名前はあるの?」

「なんだ、私の名前を呼びたいのか?なんと厚かましい小娘だ。

まあ、お前は同胞達の契約者だから呼ばせてやらんこともないが、あいにく私はまだ名を付けられたことがない。

懇願されてもお前に名を付けさせるようなことは絶対にさせないが、呼び名なら好きにすると良い」

いちいちムカッとくる言い方だが、ようは好きに呼べということのようだ。

「……じゃあ、ひー様とか?

コタロウ達も火のとか呼んでるし」

コタロウ達のように呼び捨てにしたらうるさそうなので様を付ける。

「安易かつ頭の悪そうな小娘らしい呼び名だ。まあ、いい。特別にそう呼ぶことを許してやろう」

「はあ、どうも」

こういう言い方はもう仕方ないと瑠璃は諦めることにした。

人間諦めが肝心だ。

「話を戻すぞ」

横道に逸れた話をアルマンが戻す。

「ウラーン山にいることは分かったが、詳細な場所が分からない以上、まだ兵は動かせない。捕まえる前にこちらの動きを気付かれて、先に逃げられる可能性があるからな」

「でも、どうするんですか?

山に探しに行けないし、精霊達でも探せないんじゃあ、いつまで経っても場所が分かりませんよ?」

「方法ならある」

そう声を挟んできたのは、壁際に立つヨシュアだ。

「何かあるのか?」

「今町では噂が流れてる。神光教という宗教が怪我人や病人を治してくれると」

それは先日血を与えた親子に血を求めて群がる群衆から目を反らすために、ヨシュアが神光教の名を出したからだろう。

「神光教は必ず誰かしらに接触するはずだ。信者を求めているようだから」

アルマンはヨシュアの言いたいことが分かったのか、納得したようだ。

「なるほど、接触したところを捕まえアジトを吐かせるか、後をつけて見つけるかすれば良いか。

だがいつ誰に接触するかなど分からないだろう」

「ルリから精霊に頼んでもらって、王都中の精霊が町を監視しているから、奴らが動けば精霊達から報告が来ることになっている」

「お前、勝手なことを……」

アルマンは他国で勝手に動いているヨシュアに呆れた顔をするが、怒ってはいないようだ。

これが他の竜族なら、何を他国の者が勝手なことをしているかと問題になりそうだが、ヨシュアはアルマンの甥でもある。

身内なのでアルマンも多少のことは許してしまうのだろう。

「けど、良い案だろ?」

「まあ、他に方法はないか……。だが一般市民を巻き込むことになるのは問題だな」

「だったら、神光教を探してる人に混じって、兵士を紛れ込ませれば良いんじゃないですか?

普通の服着てれば分からないでしょうし。その内の誰かと接触すれば御の字ですよ」

瑠璃の言葉にアルマンも頷く。

「後、彼らができるのは死人を生き返らせること。怪我や病気を治して欲しいと探しても接触はしてこないと思いますから、ちゃんと死人を生き返らせたいと吹聴しながら探すのが良いと思いますよ。ちゃんと騙すために悲壮感漂わせた演技するように言っておいて下さい」

「そうだな。すぐに手配しよう。

後、ウラーン山周辺に調査に向かわせた兵も戻した方が良さそうだな。

下手に警戒されても困る」

後は精霊から報告が来るまで、城で大人しくしていることで話を終えた。