軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

「本当にありがとうございました」

「ありがとうございます」

竜の血で父親の傷を治し終えたので、そろそろお暇しようとした所、母子共共に深々と頭を下げられた。

お礼だと行ってお土産も沢山もらってしまった。

「いいですって。でも竜の血を使ったことは内緒にしていて下さい。後々面倒なことになるかもしれないし」

「分かりました。決して口外いたしませんし、このご恩は一生忘れません。

本当に、本当にありがとうございます。

あの怪しげな宗教団体にも頼らずにすみました」

「怪しげな宗教?」

「ええ、あの人が事故に遭った後、家に何とかっていう宗教の信者という人がやって来て、助けてやろうと。

我が教主様は死者を生き返らせる力があるから、父親が死んだら生き返られてやれると。

ただし、我等の神を崇め、忠誠を誓うことが条件だとも。」

「死者を生き返らせる……?」

「はい、怪しいと思ってはいましたが、このままあの人が亡くなるようなことがあるなら、きっとわらにもすがっていたかもしれません」

死者を生き返らせる。そして教主様。それはごく最近聞いたような話だ。

「その宗教って、もしかして神光教とか言ってなかった?」

「ええ、確かそんな名前だったかと」

瑠璃とヨシュアとユアンは顔を見合わせた。

「それっていつ!?いつその人が来たの?」

突然の瑠璃の気迫に一瞬たじろぎながら告げられたのは「そうですね、三日ほど前だったかと」という言葉。

三日前ということはまだこの王都にいる可能性も捨てきれない。

「これ獣王様に報告した方が良いよね」

「ああ、直ぐに帰るぞ」

母子への挨拶もそこそこに別れを告げ城に向かう大通りへとやってきたが、カイが駄々をこね始めた。

『ええー、もう帰るのか?まだ遊び足りない』

「でもカイ、城に帰って報告しないと」

『ちょっとぐらい遅くなったって問題ないって』

中々引こうとしないカイに困る。

どうすべきかとヨシュアとユアンを向けば、ヨシュアは肩をすくめ、ユアンも苦笑を浮かべる。

「少しぐらい良いんじゃないか?というか、このまま連れ帰っても後々文句たれるぞ」

確かにユアンの言う通りだと、ぶちぶち不満を告げながらごろごろ転がるカイを想像してしまい、少しぐらいならと考え直す。

「じゃあ、ちょっとだけね。また来ればいいんだし」

『おう!』

カイを見失わないように、後を付いて町を回る。

好奇心旺盛なカイは、目に付いた興味のあるもの全てに飛び付くので、後を付いていくのも大変だ。

少し目を離したらすぐに見失いそうになる。

そうして町の中をうろちょろとしていると、瑠璃の目にある店が目に入った。

その店の店員、それは瑠璃の見たことのある人だった。

瑠璃は何故ここにこの人がいるのかと驚きながら店に近づいていく。

「アマルナさん……ですよね?」

そう、店員をしていたのは竜王国の王都にいるはずのアマルナ。

アマルナはフードを被りかつらと眼鏡をしている瑠璃に気付かないのか、きょとんとした顔をする。

「私です私」

瑠璃は眼鏡を外し、少しだけかつらをずらす。

すぐに元に戻したが、アマルナは驚いたように目を丸くする。

「あらまあ、愛し……むがっ」

お忍びで来ているのに愛し子などと騒がれてはまずい。

慌ててアマルナの口を手で塞ぐ。

「私は瑠璃です。愛しなんちゃらなんて言わないで下さい!良いですか!?」

こくこくと頷いたのを見てからゆっくりと手を外す。

「アマルナさんはこんな所で何してるんですか?

竜王国から引っ越してきたんですか?」

「いいえ、違いますよ。私は勉強のために一時的に来ているんです」

「勉強?」

「そうです!愛し子と銘打って商品を売っている先駆者であるこの獣王国の王都で、愛し子商品を売るそのノウハウを学んでいるのです。

竜王国に帰ったら、それを生かしガッポガッポと儲けてやるんですー」

うふふふふっ、と不気味に笑うアマルナの目は金の色に変わっている。

「そ、そう、頑張って下さい」

「ありがとうございます。

あっ、そうだ」

アマルナは何かを思いだしたようで、にっこりと笑みを浮かべ、ヨシュアの前へと手の平を上にして手を出す。

まるで何かを催促するかのように。

「なんだ?」

「以前のお駄賃がまだですよー」

苦虫をかみつぶしたような顔をしてヨシュアはアマルナの手の平の上に硬貨を何枚か乗せる。

硬貨の枚数を見たアマルナは途端に不服そうな顔をした。

「少なっ、少なすぎますよー」

「何言ってんだ、妥当だろ。

お前、この間の死神の件は偽物だったじゃないか」

「そっちこそ何言ってんです。

私は死神と名乗っている者が王都にいるって言ったんです。誰も本物とは言ってませんよ」

「屁理屈だろ、それ」

瑠璃の良く分からないことで言い合いをしているヨシュアとアマルナは、どうも顔見知りのような気安さだ。

「二人は知り合いなの?」

「こいつは俺が利用している情報屋の一人だ」

「情報屋?店員じゃないの?」

「副業ですー」

にこにこと答えるアマルナは情報屋のような怪しげな職業をしているようには見えない。

「死神が竜王国内にいるってことも、その死神のアジトの情報もこいつから仕入れたんだ。

まあ、死神は結局偽物だったけど」

ガセ掴ませやがってと、ヨシュアはアマルナをじろりと睨む。

「私は得た情報を嘘偽りなく伝えただけですよ。それをどう受け取るかは依頼者の勝手ですー」

「とりあえずそれ以上は一枚も払わないからな」

「ええ、酷いです。ちゃんと新しい情報も仕入れてますよー」

「またガセじゃないだろうな」

疑いの眼差しを向けるヨシュア。

そんなヨシュアに顔を近付けてアマルナは声を潜める。

「神光教に関する噂ですよ」

瑠璃達ははっと表情を変える。

先を続けろと目で告げるヨシュアの前に、アマルナは良い笑みを浮かべて手の平を差し出した。

ヨシュアは苦い顔をしながら仕方なく追加の硬貨を手の平の上に乗せると、アマルナは満足げな表情で口を開いた。

「この王都の先にウラーン山という火山があるんです。

その麓の村で、ある日村人全員が原因不明で亡くなるという事件があったんです」

「病気ですか?誰かに襲われたとか」

「さあ、そこまでは。

元々閉鎖的な村で、他との交流も少なかったようですので原因もはっきりせず、流行病という可能性を考えて、誰も寄り付かなかったんです。

死体は埋められることなく野ざらしのまま。村には至る所に死体が転がっているという話です」

その光景が目に浮かび瑠璃はぞっとして腕をさすった。

「それから一年後、病も治まっただろうと、村に残る金目の物を狙って、物取りが村へと向かったんです。

するとどうしたことか、そこには死体は一つもなく、村人が普通に生活していたというんです」

「死んでなかったんですか?」

「いえ、死んだのは間違いないようです。

けれど村人は生きていた。いえ、生き返ったんです」

「生き返るって、そんな」

あからさまに疑いの眼差しを向ける瑠璃。

「でまかせだと思いますか?

ですが、人が生き返ったという話はその村だけじゃないんです。

別のある村でも病気で死んだ者が生き返ったという話がいくつか出ているんです。

そしてそんな奇跡を起こしたのが、神光教という宗教の教主だと言われています」

「神光教!?」

何故村の住人が亡くなった話や生き返ったという話を始めるのかと思いきや、ここで神光教と繋がった。

「教主ってノア君も言ってたね。生き返らせるとかも」

両親を生き返られるために瑠璃を狙ったノア。

そして父親が重傷となった直後にやって来たという神光教の信者。

しかし、アマルナにそんな話を聞かされたとしてもまだ信じ切れない。

死者を生き返らせるなどと。

何せ精霊であるコタロウ達はできないと断言したのだから。

「それってどこまで真実みがあるんだ」

ユアンの問い掛けにアマルナは肩をすくめてみせる。

「さあ、私も噂だけで実際に見たわけではありませんから。

ただ、事実なのは、その噂の出所は全てウラーン山の麓にあるいくつかの小さな村だということだけです。

話は何年も前からあったようですが、その辺りの村は他との交流もほとんどなくでてこなかったようです」

それぞれが何かを思案し黙り込む。

「行ってみる?その死者が生き返ったって言う村に。

もしかしたら神光教の手がかりが掴めるかも」

ここで考えていても何も分からない。

瑠璃が提案してみると、足下にいたカイが至極楽しそうに『面白そうだな、死者が生き返る村なんて。俺も行きたい!』と声を弾ませる。

「まずは城に戻って報告だ。ここは獣王国だからな。竜王国の者である俺らが勝手に動くわけにはいかない」

「じゃあ、早く帰ろう」

次の新しい遊び場が見つかったからか、今度はカイも駄々をこねず帰るという瑠璃の言葉に文句は言わなかった。

「じゃあ、またね、アマルナさん」

「お気を付けてー」

手を振るアマルナに別れを告げ、急いで城へと戻った。