軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06 水浴び

パーティが強力なこともあって、日がまだ高い内に次のキャンプ地に到着することができた。

そこを守る中ボスのトラ型モンスター『キラータイガー』を一蹴して、野営の準備を完了する。

そのキャンプ地は、やはりゲームで見たように、近くに水場があった。地下からの 湧水(わきみず) が直径20メートルくらいの泉を作っているようで、茂みと木に囲まれていることもあって、精霊がいてもおかしくなさそうな美しい景色を作り出していた。

泉は浅く、底は小石が並んでいて入っても問題はなさそうだ。周囲にも水の中にもモンスターの気配はない。警戒さえ怠らなければ水浴びくらいはできるだろう。

フォルシーナが少し弾むような声を出す。

「お父様、ここなら水浴びができるのではないでしょうか?」

「うむ。私が周囲を警戒しておこう。日が傾く前に済ませるとよい」

「では皆にもそのことを伝えますね。たぶん全員水浴びはしたいと思いますので」

フォルシーナが皆のところに走っていき声をかけている。全員が嬉しそうな顔をしているが、やはり女性には大切なことのようだ。まあ気持ちはわからなくもない。俺も女性陣の後に入ることにしよう。

全員が入ることにしたようで、皆テントの中に入っていった。恐らく 湯浴(ゆあ) み着にでも着替えるのだろう。ちなみにこの世界、風呂や温泉、公衆浴場などは存在するのだが、基本湯浴み着を着て入ることになっている。

俺はテントから離れて、コンロのような魔道具を使って湯を沸かすことにした。こういうときに下手にテントに近づいたりすると怪しまれる可能性があるからな。『 李下(りか) に冠を正さず』はおじさんにこそ必要な格言である。

女性陣はテントの中で騒ぎながら着替えていたが、どうやら終わったらしくテントの幕が開いた。そしてそこから出てきたフォルシーナたちの姿を見て、俺は危うくお湯の入ったケトルを倒しそうになった。

なにしろ彼女らが着ていたのは、間違いなく『水着』だったからだ。

「あっお父様、この服はどうでしょうか?」

少し恥ずかしそうにしながら水着姿を見せてくるフォルシーナ。う~ん、貴族の令嬢は肌を見せるのをタブー視したりしそうなものなんだが……よく考えたら普段の魔導師服もちょっとアレだしなあ。女性の冒険者もやたらと露出が多かったりするし、そのあたり気にしない世界なのかもしれない。

にしてもその歳でビキニとかはちょっとどうなんだろう。ざっと見てビキニじゃないのはミアールとヴァミリオラだけなんだが、ミアールはいわゆるスクール水着だし、ヴァミリオラなんか昔懐かしいハイレグだし。

「いや、まあ、その、青い色がとても似合っているとは思うが、その水着はどこで手に入れたのだ?」

「あ、これは水着というのですね。これはお父様が錬金術でお作りになった『ぽりえすてる』という布で作ったと聞いてます。公爵家の使用人が試しに作ったそうです」

「なるほど? たしかに水浴びには適した服だとは思うが……」

「お父様もそう思われますか? 公衆浴場などで流行るのではないかというお話でしたので、こちらも領の特産になると思います」

「そ、そうか。それはじきに考えよう」

う~む、やはり『ポリエステル』は水着イベント用アイテム化の運命を逃れられなかったか。世界の強制力を感じてしまう話である。

俺が微妙な顔をしていると、クーラリアが尻尾を振りながら目の前にやってきた。

「ご主人様どうだ、これ似合うですか?」

白ビキニに包まれた……というかほとんど包んでない気がするが……身体を見せながら、なにかを期待するような目を向けてくる狐獣人娘。驚くほど手足が長く、スタイルもいい、なんて事は間違っても口にはできないな。

「う、うむ。よく似合っているのではないか? お前は鍛えているからな、見事な体つきだと思うぞ」

「うひっ!? うへへっ、ご主人様に褒められるのは嬉しいぜです」

とか言いながら、クーラリアは泉の方へ走っていってしまった。もしかしてあれが彼女の好感度アップアクションなのかもしれない。

呆気にとられていると、次はマリアンロッテが顔を真っ赤にしながら目の前に来て、

「こ、公爵様、わ、私はどうでしょうか……?」

とか言ってピンクストライプの水着を見せてくる。しかもその後ろにはミアールとか聖女オルティアナまでが並んでいるのだが……。もしかしてこれって全員褒めないとダメな感じ?

いや、ヴァミリオラがすごい顔をしてるから、たぶん黒ビキニのアミュエリザと、赤と黒のハイレグヴァミリオラの姉妹はスキップできそうだな。

と思っていたら、結局全員分褒めることになってしまった。

最後フォルシーナがやってきて、「こちらがお父様の水着になります。是非お召しになってください」と黒い布を渡してきた。

広げてみると、それは確かに水着ではあったのだが……。

「なんでブーメランパンツなんだろうなあ」

俺が小声でつぶやくと、フォルシーナは謎の圧を 醸(かも) しだしながら、

「是非お召しください」

と繰り返してきた。

まあ俺も水浴びはしたいからいいんだが、おっさんの水着イベントってこの世で一番需要ないよね。

と思っていたのだが、あの後俺が黒のブーメランパンツ装着で水浴びをしていると、女性陣全員がのぞき……いや、あれは多分周囲の警戒をしてくれていたんだろう。

なぜか俺の身体を食い入るように見ていたり、手で顔を覆いながら指の隙間から見ていたりしていたのが気になるが、いくらなんでも年頃の娘さんがわざわざおっさんの裸を見にくることもあるまい。この身体は中ボスであるから、自分でもほれぼれするような筋肉質の身体であるのはたしかだが、なにしろ腹黒糸目丸眼鏡おじさんだしなあ。

ともかく突発的な水着イベントも消化しつつ、翌日も大森林探索である。

ゲーム通りならそろそろモンスターのランクが跳ね上がって、そこから少し進むと遺跡が見えてくるはずだ。

森はいよいよ深さを増し、なにが出て来てもおかしくない雰囲気を漂わせている。

昨日までは余裕があった聖女オルティアナやヴァミリオラも、さすがに少し緊張をしているようだ。

何度もモンスターを退けながら進むこと3時間ほど、急に森の奥から強い気配が複数近づいてきた。

「お父様!」

「うむ、かなり強力なモンスターだな。いつも通り戦い、力が足りぬようなら加勢しよう」

「わかりました」

フォルシーナがいつもの通り指示を出すと、5人の少女たちはそれぞれ武器を構えた。

その後ろでは、聖女オルティアナとヴァミリオラも魔力を練って援護の構えを取っている。

複数の大きな気配が近づいてくる。木々の間から姿を現したのは大型のゴリラ型モンスター。背中の毛皮に赤い筋が入っている『クリムゾンバック』と呼ばれる後半のザコモンスターだ。

ゴリラ型というと『不帰の森』で中ボスだった『マナビースト』がいるが、こちらは身長は3メートルほどと一回り以上小さい。それでも普通の兵士や冒険者からするれば脅威となる大きさのモンスターである。

数は4体、Aランクパーティーでないと苦戦必至の相手だ。

「数が多いな。一体は私がやろう。ローテローザ公、一体を間引いてもらってよいか?」

「わかったわ。任せて頂戴」

ヴァミリオラが杖を掲げる。

「『フレイムパイル』!」

電柱ほどの太さの炎の杭が放たれ、『クリムゾンバック』の胸板に突き刺さる。『クリムゾンバック』はそのまま全身が燃え上がり、一瞬で炭になって崩れ落ちた。ザコとはいえAランクモンスターを一撃とは、さすが『真紅の麗炎』と呼ばれる魔導師である。

俺がもう一体を『 無明(むみょう) 冥王剣』ですれ違いざまに両断すると、残り2体がフォルシーナたちの前に迫る。

「『ディフレクションシールド』!」

マリアンロッテが防御力アップの魔法を発動する。同時にフォルシーナが『フリージングサークル』を発動、2体の『クリムゾンバック』の下半身を凍らせた。

しかしさすがにそれでは凍り切らず、動きを遅くしながらも『クリムゾンバック』は前に出てくる。

「1匹はオレがやる! アミュとミアはもう1匹を!」

クーラリアが飛び出しながら叫ぶ。彼女は上位の『マナビースト』を1対1で倒せるので問題はないだろう。

「了解っ!」

アミュエリザとミアールがもう1体を挟むようにして攻撃を始める。こちらもすでに連携が取れていて、そこまで危なげはなさそうだ。

クーラリアが一瞬の隙をついて『クリムゾンバック』の腕を落とし、さらに返す刃で首を斬って倒してみせた。二段攻撃スキル『燕返し』だが、モーションがゲームのままで少し感動した。

一方でアミュエリザたちだが、ミアールが『流水』で攻撃を受け流し『刺突閃』で大ダメージを与え、そこをアミュエリザの『二連突き』が決まって止めとなった。

ハラハラしながら見ていた聖女オルティアナが、肩の力を抜いて息を吐いた。

「あんな強力なモンスターでももう苦戦せずに倒せてしまうんですね。彼女たちは私よりもはるかに強くなりそうです」

「我々が後ろにいるという安心感もあろう。まだまだ聖女にはかなわぬよ」

そもそも聖女って戦闘する人じゃないはずなんだけどなあ。この世界かなり脳筋だからアレだけど。

「ローテローザ公もさすがの腕前だな。この先モンスターが強くなるようだ。公の力にも頼らねばならぬが、よろしく頼む」

「もちろんそれはあてにしていいわ。もとからアミュエリザたちを守るつもりだったから」

年長組でそんな話をしていると、フォルシーナたちがドロップ品を回収して戻ってくる。

ただその後で、別に俺の目の前に並ばなくてもいいんだが……。

キラキラした目で見上げてくるので一言褒めないといけない流れのようだ。

「皆だけでAランクモンスターを倒せるのは見事だ。だがこの後同等のモンスターが数多く出てこよう。気を抜かずに戦い、それぞれ力を強化するのだぞ」

「はいお父様!」「はいお館様」「おうご主人様!」「はい公爵様」「はい公爵様!」

元気に返事をしてくれる5人の美少女たち。

なんか昨日より全員の好感度がアップしている気がするんだが、まさか『ブーメランパンツ』にそんな効果があったりはしないよな……?