軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22 転移魔法

さて、その後『転移魔法』を色々と検証したところ、以下のことがわかった。

・使用する魔力は距離によって変化する。

・一度使用すると、再使用するまでに 時間(クールタイム) が必要。

・クールタイムを無視して発動することも可能だが、消費魔力が跳ね上がる。

・移動できる場所は、一度行ったことのある場所のみ。

・モンスターが多く徘徊する場所には転移できない。

・自分以外も同時に転移できるが、そのぶん消費魔力は増える。

まあ常識的(?)な範囲の魔法である。

ただ3つ目の制約のおかげで、『ディメンションハンドラー』のように戦闘中に連続して転移するのはかなり難しい。今の俺の魔力だと2回が限度で、このあたりの弱体化はいかにもゲームっぽい。

それと4つ目の移動場所の制限だが、これは『転移魔法』取得前に行った場所もオーケーだった。マークスチュアート冒険者時代の経験が活かせるのはあまりに大きく、これはラッキーであった。

5つ目の制限は、要するにダンジョン内やモンスターが徘徊するフィールドの奥地には直接転移できないというものだ。これもゲーム通りのシステムである。

さて、当初の予定だと、この後王都周辺のダンジョンをいくつかまわってアイテムを集めるつもりだったのだが、大森林に騎士団長リンが向かうとなるとゆっくりもしていられなくなってしまった。俺は遺跡を出ると『転移魔法』を発動し、ブラウモント公爵領の領主館の執務室へ転移した。

「お、お父様!?」

執務室では、フォルシーナが自分の机で執務をしていた。

重要性の低いものについてはミルダートと協議の上執行していいと言ってあるので、それを行っていたのだろう。

いきなり目の前に現れた俺を見て、椅子から転げ落ちそうなほど驚いている。

「驚かせて済まぬなフォルシーナ。領主代行ご苦労、こちらは特に問題はないか?」

「今目の前で問題が起こったのですけれど!?」

「今のは伝承にある『転移魔法』だ。そこまで驚くほどのものではない」

「ええ……っ」

俺がさも当たり前のような態度をとると、目を丸くしていたフォルシーナは、急に肩の力を抜いて、はぁ、と溜息を漏らした。

「……お父様にとっては神話伝承の魔法も大したものではないのですね。今更ながらにお父様の素晴らしさを再確認いたしました」

「うむ。言いふらすものでもないが、お前に隠すほどのものでもない。それだけだ」

「お父様……そう言っていただけで嬉しく思います」

嬉しそうににっこりと微笑むフォルシーナ。好感度アップ(小)か。

どうやら「『転移魔法』なんて大したものじゃないムーブ」は成功のようだ。こんなゲーム知識チートでいちいち騒がれるのも恥ずかしいからな。外部に知られたら恐ろしくマズい魔法ではあるが、この後フォルシーナたちの前で使うことは決定しているし、さらっと流すに限る。

「ところでフォルシーナよ、その後なにか領地周辺に動きはあるか?」

「いえ、特にはなにも。北の魔族領との国境付近でも特に動きはないようです」

「ならばよい。仲間とダンジョンへは行っているか?」

「はい、マリアンロッテ、ミアール、クーラリアと四人で毎日行っております。全員Cランクになりましたが、ギルドマスターからは実質Bランクだと言われました」

「さもありなん。よくやっているなフォルシーナ。魔法の腕の方も上がっているのだな?」

「はい、新たに『ブリザードエッジ』を覚えました」

「宮廷魔導師の使う強力な氷魔法ではないか。その歳で使える者は過去にもいなかったであろう。父としても鼻が高いぞ」

「あ、ありがとうございます」

赤くなった顔を両手で隠すフォルシーナの好感度アップ(大)アクション。これなら他の3人のことを聞いても『氷の令嬢』モードにはならないだろう。

「他の者はどのような感じであろうか」

「はい。マリアンロッテは光魔法『ライトヒール』『キュアオール』『ディフレクションウォール』『ホーリーエッジ』『パニッシュメント』を覚えたようです」

「ほう、さすがに『光の聖女』か……」

体力回復、状態回復、防御力アップに攻撃力アップ、アンデッド特効の攻撃魔法、いかにもヒーラーと言った感じのランナップだ。

「ミアールは『烈波』『縮地』『刺突閃』『流水』が使えるようになって、前衛として頼もしくなりました」

攻撃範囲拡大、高速移動、単体強攻撃、盾での受け流し防御、オーソドックスだがすべて有用なスキルだ。この間までただのメイドだったとは思えない。

「クーラリアは『烈波』『縮地』『一刀斬』『斬月』『燕返し』『竜尾閃』が使えると言っていました」

攻撃範囲拡大、高速移動、単体強攻撃はミアールと同じだ。『刺突閃』『一刀斬』でスキル名が違うのは使う武器による。

『斬月』は斬撃を飛ばすいかにもな必殺技。『燕返し』は強二段攻撃で、ボス戦でかなり使うスキルだった。『竜尾閃』はカウンターで大ダメージを与えるテクニカルなスキル。脳筋気味なクーラリアにはちょっと似合わないな。

「大したものだ。確かにすでにBランクの実力はありそうだ。これなら皆で大森林へ行っても問題はあるまい」

「大森林へ? どういうことでしょうか?」

と首をかしげるフォルシーナに答えようとすると、廊下が少し騒がしくなった。

「クーラリアさん、一体どうしたんですか……!?」

「行けばわかるって……です」

という声が聞こえてきて、ノックとともに狐耳の金髪獣人少女と、こちらも美しい金髪をツーサイドアップにした少女が入ってきた。

「やっぱりご主人様帰ってたんだなです。ニオイがしたのですぐにわかったぜ……です」

「本当にブラウモント公爵様が……。あっ、こ、こんにちは公爵様。突然申し訳ありません」

クーラリアは尻尾をブンブン振りながら俺の目の前に来る。狐なのにほとんど犬みたいな感じだなもう。

一方でマリアンロッテは少し顔を赤らめてばつの悪そうな顔をしている。どうもクーラリアに引っ張られてきたみたいだが、仲がいいのは悪いことではない。

「クーラリア、ノックをするのはいいが返事を待って入りなさい」

「あっ、すみませんご主人様。嬉しくってつい」

注意されても尻尾を振ったまま嬉しそうな顔のクーラリア。最初はこんなキャラじゃなかった気がするんだがなあ。

「まあちょうどよい、2人にも話があったところだ」

「もしかして王都でなにかあったのでしょうか?」

マリアンロッテが不安そうな顔をするのは、当然自分が逃げてきた身であるからだ。

「ああ、マリアンロッテ嬢をどうこうするという話ではない。それどころか王都では不思議とマリアンロッテ嬢の話は出なかった。聖女オルティアナが心配していた以外はな」

「オルティアナ様が……。できれば無事を伝えたいのですが、難しいでしょうか」

「無事だと伝えてはある。近い内に会うこともできるだろう」

「それは……?」

「その話も含めて少しゆっくりと話をしたい。フォルシーナ、ミアールを呼んでくれぬか」

俺が頼むと、フォルシーナは卓上の魔道具でミアールを呼んだ。程なくして赤毛ボブカットのメイド少女、ミアールがやってくる。

「お館様、お帰りなさいませ。お呼びと伺いましたが」

「うむ、では皆、こちらへ」

俺は応接セットに4人の少女を座らせた。