軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

06 出発前

その後もとからある錬金術棟に戻り、トリリアナやベテランを相手に新しいレシピを伝えた。

今回は『ポリエステル』と『ハンドクリーム』の2種だが、前者は「ナンデ!?」と言いたくなってしまうかもしれない。実はゲーム的には『海水浴イベント』、つまり『水着CG』回収用アイテムだったのだが、もちろんそんな目的のために伝えたわけではない。『ポリエステル』といえば衣料の素材として極めて優秀なものである。特に速乾性に優れているので兵士用の衣料として最適だろうというわけだ。もちろんこれが広まれば領地の新たな産業にもなるだろう。

『ハンドクリーム』については『シャンプー』などと同じ好感度アップアイテムだ。すでに似たような薬は民間療法的に存在するようなのだが、トリリアナたちがその場で使って即「量産しましょう!」となったので、とりあえずこれも産業になりそうだ。

なお、『お通じの薬』『シャンプー』『コンディショナー』については、出入りの商人などを使って徐々に市中にも流通を始めている。特に薬については多めに流通させているのだが、店頭に並ぶと一瞬で消えるらしい。どれだけ困っている人間が多いのか……と思ったのだが、トリリアナによると肌がきれいになるという効果が密かに噂になっているせいだとか。それ大丈夫なのかと不安になったが、この世界まだ景品表示法的なものはない。

「効果は間違いなくありますから大丈夫ですよ」

とトリリアナは言ってくれたが、精神的に依存する薬になるのも少し怖いかもしれない。

執務室に戻った俺は、執事のミルダートを呼び、とある人物への手紙を早馬で送るように頼んだ。

その後執務を続けていると、フォルシーナ、ミアール、クーラリア、マリアンロッテの4人がやってきた。ダンジョン鍛錬から戻ってきての報告である。

制服風魔導師服、メイド服、巫女風の服、シスター服風ドレス(すべてミニスカート仕様)の美少女が揃うと、重厚な公爵執務室が一気にコスプレ会場みたいな雰囲気になる。

「無事戻ったか。ダンジョンはどうであった?」

「はいお父様、いつもの石舞台ダンジョンですが、問題なく最下層まで到達しました。『ゴーレムの核』も手に入れています」

「よくやった。経験の少ないマリアンロッテ嬢は大丈夫だったのか?」

「それが、マリアンロッテは私たちが思うより力があって、まったく問題ありませんでした。むしろ途中で光属性魔法が使えるようになって、回復と肉体強化が強力でいつもより楽に最後までいけました」

「ふむ、フォルシーナたち3人に劣らぬ素質の持ち主というわけだな。マリアンロッテ嬢自身はどう感じた? 高ランクのダンジョンは初めてであったのであろう?」

視線を向けると、マリアンロッテは胸に手をあててにっこりと微笑んだ。

「はい公爵様、ダンジョンは3回ほどランクの低いところには入ったことはあります。しかし今回のような高いランクのところは初めてで最初は不安でした。しかしフォルシーナ様やミアール、クーラリアたちがとても頼もしく、以前より安心して戦うことができたくらいです」

「うむ。フォルシーナたちは我が領地でも上位の腕を持つからな。しかしマリアンロッテ嬢は早くも光属性魔法が使えるようになったのだな」

「はい。公爵様のおっしゃったことを思い出して使ってみたところ、信じられないくらい簡単に使えるようになりました。すべて公爵様の御 慧眼(けいがん) のおかげです」

とキラキラした顔を近づけてくるマリアンロッテは目からは『憧れの視線』みたいなものを感じる。そういえば彼女は『立太子の儀』の時に俺の剣技を見ているから、それで多少好感度が高いのかもしれない。

「あれはただ勘で言っただけなのだが、当たっていたのなら幸いであった。光属性魔法による回復魔法や強化魔法は非常に有用なものだ。これからも鍛錬に励むとよい」

「はい! 公爵様のご恩に報いるため、そして私自身を気に入っていただけるように精進いたします!」

ちょっと後半言い回しが気になるが、さすがにメインヒロインだけあって意志の強さもあるようだ。このあとゲーム通りに状況が進んでいくなら彼女の力は必要だ。フォルシーナたちとともに主人公パーティっぽく戦ってもらいたい。

とうなずいていると、狐獣人娘のクーラリアがニヤニヤ笑っていて、一方でミアールが呆れ顔をしているのに気づいた。

「クーラリア、ミアール、お前達からもなにかあるか?」

「いえ、マリアンロッテ様がお嬢様に並ぶほど可愛い女の子なのにビックリしてたんですけど、ご主人様はやっぱりご主人様なんだなって思いました……です」

「私が私であるとはどういう意味だ?」

「あ~、それはその……ミアールが詳しいと思いますです」

「ではミアール、どういうことだ?」

視線を移すと、ミアールは急に慌てたようにビクッとなった。

「い、いえ、私は別に、クーラリアがなんのことを言っているのか理解できません」

「しかしミアールもなにか言いたそうにしていたが」

「そ、それは……お館様が、その、少し、情の多い方だと……そう思いまして……」

「む……?」

「情の多い」というのは普通は「女好き」とか、もっと言えば「スケベ」みたいな意味で使われることの多い言葉だが、まさかここではそういう意味ではないだろう。

まあマリアンロッテとかクーラリア始め獣人娘たちとか助けているから、そっちの方の「情け深い」みたいな意味だと思うのだが……。

その時背筋に寒気を感じてふと見ると、フォルシーナがパーフェクト『氷の令嬢』モードに入って俺を見つめていた。

「……フォルシーナよ、なにか気に障ることでもあったか?」

「いえ、マリアンロッテの光属性魔法はとても優れているので、お父様が大望を果たすために必要なのだと思いました」

「そ、そうか。確かにマリアンロッテ嬢の力は今後確実に必要になるだろう。私もあてにしているところだ」

「公爵様、本当ですか!? 私、頑張ります!」

両手グーでふんすな好感度アップ(大)のマリアンロッテ。

逆にフォルシーナの方からは、なんとなく冷気が流れてくるような感覚がある。まさか魔法を発動して……もしかして断罪モード!?

「待てフォルシーナよ、私はお前の力もあてにしているのだ。優秀な人材が多く集まってきているのは確かだが、フォルシーナが最も重要な位置にいるのは揺るがぬ。わかるな?」

「……本当ですか?」

「何度も言っているが、それは本当だ。お前は私にとって特別なのだ」

だって実の娘な上に断罪イベントの中心人物だし。これ以上俺の人生にとって重要な人物はいないと断言できる。

俺の心が伝わったのか、フォルシーナは『氷の令嬢』モードを解除してくれた。

今日は少し危なかったな。どうもフォルシーナは、 父親(オレ) が他の人間を重用すると、自分がまた親の愛情を失うのではないかと感じるのかもしれない。

これに関してはマークスチュアートとしての自業自得であるので仕方ない。今後も折に触れて父として大切に思っていると伝え続けなければならないだろう。