軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

03 マリアンロッテ 2

フォルシーナとマリアンロッテが仲良くなること自体は、『オレオ』プレイヤーとしては嬉しいところではある。

しかしそうなると、この件の対応次第でまた断罪ルートが復活するなんてことが……ありそうだから怖い。

「フォルシーナよ。貴族というものは民を第一に考えなければならぬ。そのためには貴族自身が辛きを耐えることも必要となる。それだけは忘れるな」

「ですが……っ」

「マリアンロッテを求められて返さぬとなれば、我が公爵家は王家と対立することになる。それは国が割れることも同じ。それによって苦しむのは我らではなく民、それは理解できるな?」

「う……」

う~ん、理屈で丸め込むのは難しくなさそうなんがなあ。しかし『氷の令嬢』モードは怖いし、マリアンロッテの身の上にも同情しないではない。さらに言えば、マリアンロッテを返しただけで事が済むとは思えない。これは完全に勘だが、あのロークスが俺とローテローザ公をそのままにするとは到底考えられない。ゲームで王位を簒奪したマークスチュアートがそうしたように。

「フォルシーナよ、個人の感情に流されてはならぬ。情報を集め、いくつもの起こりうる状況を想定せよ。その上でマリアンロッテ嬢を返さぬ道を探る、それが我らにとって必要な態度であるのだからな」

なんかちょっとわかりづらい言い回しになってしまったが、フォルシーナは俺の言わんとしたことを察したのか、ぱあっと明るい顔になった。

「お父様、それでは……っ!」

「どちらにせよ、王太子がなにかを言ってくるのは当分先のことになろう。それまでに策を練ることとしよう」

「はいお父様! 私も全霊をもって考えます!」

「うむ。それとマリアンロッテ嬢、とりあえず貴女はこの公爵家の客人として過ごされるとよい。それと貴女は光属性の魔法に適性があると聞いたがまことか?」

というのはただ単に彼女がゲームでは 回復役(ヒーラー) だったからなのだが、その言葉にマリアンロッテは目を見開いた。

「えっ、そうなのですか……?」

あれ? もしかしてマリアンロッテもまだその設定が判明してなかったのか。しまった、フォルシーナと同じ失敗をしてしまったな。

「ああ、いや、マリアンロッテ嬢の雰囲気が光の聖女のようなのでな。先入観で光属性が得意なのではないかと早合点したのだ」

「そんな、光の聖女だなんて……。ブラウモント公爵様にそのように言っていただけるなんて光栄です。光属性、試してみます!」

両手で拳を作って「ふんす」みたいなポーズをとるマリアンロッテ。たしかこれ好感度アップ(大)の仕草だな。しかも急にキラキラしだして、メインヒロインならではの強烈なまぶしさが目に痛い。

「そうするがよかろう。フォルシーナは今数名とパーティを組んでダンジョンに行って鍛えている。それに同行してマリアンロッテ嬢も己を鍛えるとよい。この先、恐らく乱世となる。力はつけておくに 如(し) くはない」

「はい、ブラウモント公爵様のおっしゃる通りにいたします。公爵様のお役に立てるよう、必ず力をつけて参りますね!」

まあ彼女の光属性の回復魔法はすさまじく強烈だからな。リアルな世界だとその重要性は測り知れない。速やかにレベルアップして一線級の力を身につけてもらいたい。

とゲーム脳を起動している俺を、冷ややかに射抜く氷の刃のような視線があった。

それは言うでもなく『氷の令嬢』モード全開のフォルシーナ……って、なんで全開なの!?

「お父様は、私は聖女のようではないとおっしゃるのですね」

「いや、そのようなことは言ってはおらぬが……」

「しかしマリアンロッテには聖女のようだとおっしゃいました。しかし私は言われておりません」

「いや、そのだな……フォルシーナ、お前は聖女というにはその美しさが氷のように透き通りすぎているのだ。聖女とはまた異なる個性があるということだな」

「透き通った美しさ……ですか? そう評していただくのは嬉しいですが……」

「そうそう、私もフォルシーナを初めて見た時は、青い氷のように綺麗な女の子だって思いました」

マリアンロッテがフォローを入れてくれると、どうやらフォルシーナも納得はしたようだ。

しかしそこでこの窮地は終わらなかった。

「ですがお父様、光の聖女でないとすれば、私はどのような言葉が似合うのでしょうか?」

「んむ……っ!? それは……そうだな……」

「ないのでしょうか?」

「ああいや、それはその……氷の令嬢……であろうか」

いや待て『氷の令嬢』って誉め言葉じゃなくないか……?

というのは杞憂に終わったようで、フォルシーナは一瞬呆けたようになった後、両手で顔を覆う好感度アップ(大)ポーズをとった。

「『氷の令嬢』……お父様にそう言われると、不思議と心がざわめく感じがいたします。ありがとうございます。そして申し訳ありません、お父様のお心を疑ってしまいました」

「う、うむ。これまで言葉にしてこなかった私にも落ち度はあろう。ともかくフォルシーナ、これからはマリアンロッテ嬢と共にダンジョンに行き、互いに高め合うようにせよ。友人として大切に思うならな」

「はい、必ずお父様のご期待に沿えるように精進いたします」

ふう、どうやらこれで急な危機は乗り切ったようだ。

そういえば『氷の令嬢』は『光の聖女』とともにゲームの公式設定の二つ名なんだよな。とすると、それらが彼女たちにとって特別な言葉になっている可能性はありそうだ。

しかしロークスは思ったよりも破滅ルート主人公っぷりが強いようだ。このままロークスを国王として 戴(いただ) いていたら、この国だけでなく、本当にこの大陸が滅ぶまであるかもしれない。

ただだからといって俺がロークスと対立する立場になって、もしフォルシーナの言うように王位を奪うなんて話になると断罪ルート復活も怖いしなあ。

正直フォルシーナとマリアンロッテがここまでロークスを嫌っている以上、ゲーム通りの断罪はないような気もするのだが……マークスチュアートの末路を知る者としては、もっと強い確信が欲しいところだ。