軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3章 → 4章

―― ローテローザ公爵邸

「お姉様、ブラウモント公爵様と同盟を結べてよかったですね。お姉様の悩みも解消されるのではありませんか?」

「そうね。公爵間の足の引っ張り合いなんてうんざりだもの、相手が一人減っただけでも儲けものかもしれないわね」

「しかも相手が『蒼月の魔剣士』ブラウモント公ですから。あのダンジョンでの剣 捌(さば) きは一生忘れられそうにありません」

「んっ、んん」

「あれお姉様、お風邪ですか?」

「そうではないわ。でも私の魔法も大したものだと思っているのだけれど」

「もちろんお姉様の炎の魔法も素晴らしいです。でもやはり私自身が槍使いなので、どうしても剣技のほうに興味がいってしまいます」

「それはわかるけれど……。彼は貴女と同じ年のフォルシーナの父親よ。それは忘れてはいけないわ」

「父親……フォルシーナが羨ましいです。あんなに素敵なお父様がいたら、私きっと……」

「貴女はお父様のことがあまり記憶にないから、憧れてしまう気持ちはわからなくはないわ。でも相手は選びなさい」

「憧れる相手として、ブラウモント公爵様以上の方がいらっしゃるのですか?」

「んっ!? ま、まあ、彼が優秀なのは疑いないでしょうね。ダンジョンでの剣技は私も圧倒されたわ。その上魔導師としても国内屈指、錬金術師としての腕も疑いようがない。しかも知略にも謀略にも長けていて、領主としても優れているという評判ね。唯一気に入らないのはなにを考えているのかよくわからないところだけど」

「でもロヴァリエを助けてくれました。悪い方ではないと思います」

「そこだけ見ればそうね。王位を狙ってるなんて疑いもあったのだけれど、フォルシーナを王太子に差し出すこともやめたみたいだし、ここ最近の動きが少し不思議なのは確かよ」

「お姉様は、ブラウモント公爵様のことはなんとも思っていらっしゃらないのですか?」

「なんとも、というのはどういう意味かしら?」

「だって、狙うならお姉様だとおっしゃっていましたし……」

「あ、あれはただ、アミュエリザに比べれば私の方が歳が近いというだけの話でしょう」

「でもお似合いな気もしますけど」

「アミュエリザがそういう話を気にするのはわかるけれど、あの男にもその気はないでしょう。……たぶん」

「あ、そうですね。やっぱり違いますよね」

「そ、そうよ。だいたい私だって年齢は10以上離れてるのよ。そもそもあんななにを考えてるかわからない男なんて、相手にするのはありえないわ」

「それにクーラリアたちを見れば、ブラウモント公爵様が好きなのは若い娘みたいですからね。お姉様だと少し……」

「……え?」

「でも、それなら私も十分に対象のはず。槍の腕を磨いて認めていただければもしかして……」

「ちょ、ちょっとアミュエリザ、なにか怪しいことを言いながら行かないで。ちょっと、アミュ、待ちなさい……っ」

―― ブラウモント公爵邸 フォルシーナ私室

「はぁ……」

「お嬢様、いかがされましたか?」

「お父様はなぜああなのかしら……」

「あ……っ」

「ねえミアール、お父様は何かお考えがあって女性たちにあのような態度を取っていると思うのよ。ミアールはどう思う?」

「ああ、ええと、単に女性がお好きという可能性は……」

「そこは帰りの馬車の中で何度も問いただしたからありえないわ。お父様が言うには、私以外の女性に優しくするのは彼女たちが有能な人材だからで、結局は領地や領民を考えてそうしてるという話なの」

「お館様がそうおっしゃるならその通りなのではありませんか?」

「詳しく話を聞くと確かにその通りなのだけど……でも行く先々で女性を口説くようなことをなさる必要はないと思うの」

「お館様のおっしゃりようが勘違いを生みやすいということもあるとは思います」

「そうね、それはあるかもしれない。お父様はご自分がどれだけ魅力的なのか気付いていらっしゃらないようだから、つい隙の多い言葉を選んでしまうのかもしれない」

「そういうことだと思います。それに今回の旅では、相手が精霊様や公爵様ですから、政治的な意味合いも強いでしょうし」

「そうね、その通りだわ。少し考えすぎかもしれないわね。しかしそうなると、また別の話が出てくるのだけれど」

「それは……?」

「精霊様やローテローザ公を手の内に入れるということは、相当に大きなことだと思うの。領地を守るためだけならばそこまで手を伸ばす必要はないと思うのよ。ドルトン将軍率いる軍は精強、エクストラポーションを多く用意し、Aランクの冒険者を雇い、私やミアール、クーラリアもいてゴーレムまで10体以上。さらにお父様自身が一騎当千の魔剣士。魔族相手ということを考えても明らかに過剰よ」

「確かにその通りかもしれません。先日のダンジョンで拝見した技を考えても、公爵閣下に勝てる魔族がいるとは思えません」

「でしょう? そう考えると、お父様は領地防衛の先を見ているのだと思うの」

「まさか」

「その通りよミアール。お父様は恐らく、この国自体がもう危ないと気付いている。ローテローザ公爵様もこの国に波乱が起きるとおっしゃっていたでしょう? そしてもし国が傾くことがあるなら、新たに強い指導者が必要になるわ」

「お館様がその指導者になる、と……?」

「ふふふっ、私が思った通りのことをお父様は考えていらっしゃったのね。もちろんこんな行動は表には一切出せない。だから表面上は、女性を取り込むという形に擬装して実行しているのね。さすがお父様、どれだけ深い謀をなさっているのか、それを思うと身体が熱くなるよう」

「それは擬装……なのでしょうか……」

「とすれば娘として、お父様の隣に立つ者として、お父様の目的が成就されるように手助けをしなければいけない。ミアールにも手伝ってもらうからそのつもりでいてね」

「わ、わかりました。精一杯務めさせていただきます」

「ミアールの働きによっては、お父様の寵愛を少し受けることを許してもいいわ。ふふっ」

「お嬢様!? ……それはその……ええと……」