軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

09 亜竜のねぐら 2

『亜竜のねぐら』ダンジョン攻略開始から4時間程で、地下3階のボス部屋前までたどりついた。

ヴァミリオラが、石の扉を見上げながら少し呆れたような声を漏らす。

「このダンジョン、こんなに簡単に踏破できるものだったのかしら。私の記憶とは随分と違うのだけれど」

「これだけの戦力が揃っていて、通路に迷わなければこんなものだろう」

「そうかもしれないけれど……。貴方はこのダンジョンは初めてではないの?」

「冒険者をしていた時はお忍びであちこち回ったからな。知らぬダンジョンはほぼない」

まあゲーム知識も含めての話だけど。ただ実際、マークススチュアートは少年期に大陸の半分くらいのダンジョンは踏破している。さすが将来の中ボスである。

「では挑むとするか」

「あ、あの、お願いがあります!」

俺が扉に手をかけようとすると、騎士少女アミュエリザが声を上げた。

「どうした?」

「できれば少しだけでもブラウモント公爵様の本気の剣を見せていただきたいのです。今日はあまり剣を振るわれていらっしゃらないので」

「ふむ……。わかった、フォルシーナたちと仲良くしてもらった礼ということでご覧にいれよう」

「はい! ありがとうございます!」

さすがメインヒロインの一人、真面目キラキラ顔で見上げられるとその破壊力が恐ろしいほどだ。横でヴァミリオラが睨んでいるからそれ以上の感想は出てこないが。

ともかくメインキャラの好感度を稼いでおくのは悪いことではない。アミュエリザはこの後もフォルシーナたちとパーティを組む可能性は高いし、そもそもメインヒロインはマークスチュアートにとって全員断罪に加担するキャラなのだ。

巨大な石の扉を開くと、そこは広い空間になっていた。

奥に寝そべっているのは、二本の長い首を持つ、全長20メートルほどの四足歩行のドラゴンだ。『ツインドラゴヘッド』という、微妙な名前のボスである。

『ツインドラゴヘッド』は、俺たちの姿を認めるとのそりと身体を起こし、ンギャアと一声鳴いて立ち上がった。

「お父様、お一人で戦われるのですね?」

「うむ。ブレスが来るかもしれぬから離れておけ。まあすぐに終わるがな」

信頼の目を向けてくるフォルシーナに答えて、俺は一人『ツインドラゴヘッド』に向かって歩いていく。

二つのドラゴンの頭が、口を開いてブレスを吐こうとする。

「『アースウォール』」

目の前に岩の障壁を作り出し、二重の炎のブレスを防ぐ。それでも熱までは防げないが、各属性耐性スキル完備の 中ボス(オレ) にはノーダメージだ。

ブレスを吐いた後、『ツインドラゴヘッド』は少しだけ動きを止めた。『 神速(チート) 』持ちの俺にとっては大きすぎる隙だ。

「『 無尽(むじん) 冥王剣(めいおうけん) 』」

勝手に口から出る必殺技名とともに、無数の閃光が『ツインドラゴヘッド』の全身を駆け巡る。攻撃範囲拡大スキル『烈波』と切断力強化スキル『 殻(から) 断ち』を併用しながら一瞬で無数の斬撃を繰り出す、みたいな技だ。範囲内に大ダメージとかいう中ボス必携の必殺技である。

一瞬の静寂の後、『ツインドラゴヘッド』は全身をバラバラにしながら光の粒子になって消えていった。モンスターは消えるからグロ度が減って助かるな。

「これでは剣の錆にもならんな」

やっぱり勝手に出る勝ちセリフ。

俺が振り返ると、アミュエリザがすごい勢いで走ってくるところだった。フォルシーナもほぼ同時に走ってこようとしていたのだが、前衛職には身体能力で敵わなかったようだ。

「公爵様、素晴らしい剣技でした! 『蒼月の魔剣士』の秘技をこの目で見ることができて、私感動いたしました! 私も今に甘んずることなく精進を続けたいと思います!」

「う、うむ。アミュエリザ殿の槍の腕は私から見ても優れたものがある。長ずればこの国一番の槍の使い手になることも可能であろう」

そういえば真面目すぎて周囲が見えなくなるような性格のキャラだったと思い出しながら、褒めて伸ばす的な感じで対応する。まあアミュエリザが槍の腕で大成するのはゲーム的にも確実だからな。

「ありがとうございます! 公爵様に認めてもらえるように鍛錬を重ねます!」

「姉上の期待に応えるためにも頑張るといい。期待しているぞ」

「はいっ!」

アミュエリザはピシッと背筋を伸ばして一礼をしてから、姉のヴァミリオラのところへ走っていった。「ブラウモント公爵様に褒めていただきました!」とか嬉しそうに報告しているのはいいが、代わりに姉の公爵がすごい目つきでこっちを睨みつけてくるのに気づいてほしい。

しかも睨みつけてくる人間がもう一人。『氷の令嬢』モードに入ったフォルシーナだ。

「お父様、随分と派手な剣技をお使いになりましたね。それほどアミュエリザの気を引きたかったのですか?」

「彼女とはそう会うこともあるまいしな。せっかく見たいというのだから見せてやったまでだ」

「お父様の剣技は、そのように安く売るものではないと思います」

「あの程度の技、私の持つ力の極一部に過ぎぬ。心配せずともよい」

「でしたら、私にはお父様のすべてを見せていただくことはできますか?」

「お前が望むならそうしよう」

と圧に負けて答えてしまったが、これもしかしたら俺を追放する時に備えて戦力分析をしたいということではないだろうか。

そんな背筋を寒くする想像から逃れるようにして、俺は『ツインドラゴヘッド』のドロップアイテムを拾いに向かった。

それはバレーボール大の水晶球だが、中に心臓のような臓器が封入されていて、ドクンドクンと脈打っている。『亜竜の心臓』という錬金術用のアイテムである。確定ドロップ品だが、『ツインドラゴヘッド』自体が強敵なので流通量は少ない。

俺が『亜竜の心臓』をマジックバッグにしまっていると、ヴァミリオラが近づいて来た。

「それがあれば貴方は本当に薬を作れるのよね?」

「うむ、早速戻って作ろうか」

「私の期待が裏切られないことを願っているわ。それとは別に、アミュエリザを狙うなら貴方とは決闘をしなければならないから覚えておくことね」

「公はなにを言っているのだ」

妹の願いをかなえたのだからそこは礼を言うところだと思うのだが、代わりにでてくるのが「決闘」という言葉なあたり、ゲームの展開を予感させて不安になる。

対決する運命にあるキャラなせいか、ヴァミリオラの好感度アップはなかなか難しいようだ。