軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

02 錬金術好感度アップ法

結局そのまま午前中はフォルシーナと共に執務を行った。

俺が決済をした書類のうち機密性の低いものを見せ、どのような業務が行われているのかなどをそこから読み取らせたり、数字のチェックなどをさせたりした。

もちろん時々家宰のミルダートや他の役人が執務室を訪れることもあり、そのやり取りなどにも同席させる。

前世でやった新人教育を思い出しながらやっていたが、正直14歳のフォルシーナのほうがはるかに優秀なのには苦笑いをするしかなかった。 創造神(クリエイター) に愛されたヒロインと比べるのも可哀想かもしれないが。

ちょっと気になったのは、俺が書類とにらめっこをしていると、時々フォルシーナの席から射抜くような視線を感じることだ。まさかもう狙われているのかと思ったが、そちらに目を向けるとニッコリと屈託なく笑うのでただの気のせいかもしれない。

昼食後は俺個人の錬金棟へと向かった。

例の人体実験室に続く地下への通路は完全に塞いであり、今はただの個人の研究室である。

まずは将軍のドルトンら兵士たちが取って来た『マナビーストの血晶』を使って『エクストラポーション』を錬成する。『マナビーストの血晶』は一日に1つ取得でき、1回の錬成で『エクストラポーション』は10ビンできるので、いま公爵家にはすでに300本以上の『エクストラポーション』が保管されている。1本で日本円に換算して3000~5000万(需要により変動)くらいの価値はあるのでこれだけでひと財産である。

「錬金釜にすさまじい量の魔力が吸い込まれているのを感じます。お父様でなければ『エクストラポーション』は作れないのですね」

「今のところはそうかもしれん。だがお前の魔力もじきに私に届くようになるだろう」

見学したいというので今日はフォルシーナもついてきた。彼女にも今錬金術は習わせているが、魔導師としての適性がゲームでもトップクラスの彼女なら、錬金術も余裕で扱えるようになりそうだ。

俺は『エクストラポーション』をビンに詰め終わると一息ついた。

「よし、これでよい。では今日はお前のために新しいものを錬成しようか」

「私のため、ですか?」

「うむ。お前のその美しい髪をさらに美しくする魔法の薬だ」

と言うと、フォルシーナは紅潮した頬を両手で隠した。う~ん、好感度アップ(大)なんだけどなあ。午前からどうも追放ルートがちらつくので、今回フォルシーナに、ゲームにもあった好感度アップアイテムを贈ることにした。

俺は棚から必要な材料をピックアップして錬金釜に放り込んでいく。

蓋をして魔力を流すと、それはすぐに完成した。

蓋を開けると、そこにはかすかにピンク色っぽいどろりとした液体がなみなみと入っている。前世の風呂場でさんざん嗅いだことのある香りが部屋に広がる。

「これは……不思議な香りですね。花のような、果実のような……」

「錬金術による香りだからな。自然のものとは違うだろう」

なにしろこれは工業的に作られたはずの『シャンプー』だし。

大きめのビン5本に『シャンプー』を詰め、俺はさらに『コンディショナー』を錬成、そちらもビン5本につめた。

しかし見た目も香りも完全に前世のものなんだが、いくらゲーム世界だからっていいのだろうかと思わなくもない。まあ考えても仕方ないのだが。

「それでお父様、これはどのように使うものなのでしょうか?」

「これは風呂で髪を洗う時に使うものだ。今は石鹸を使っているだろう? その代わりとして使用する。使い方はミアールに教えるので、今日から使ってみるといい」

公爵家令嬢のフォルシーナの長い髪は当然のようにメイドのミアールが洗っている。恐らくミアールも使いたいと思うだろうが、その時は売ってやればいいだろう。

「ありがとうございますお父様。早速使わせていただきます」

「気に入ってもらえるといいのだがな。もし売りものになるようなら、領内の産業にしようとも考えている。売れそうかどうかも評価して欲しい」

「お父様がお作りになったものなら間違いなく売れると思いますが、使って考えてみたいと思います」

「うむ」

思ったよりフォルシーナの反応が淡泊だったが、まあ実際使ってみないとわからないものだからな。ゲームだと強力な好感度アップ用アイテムだったし、効果はあるはずだと信じたい。

その日の夜。

俺が自室で読書をしていると、廊下をパタパタパタと走ってくる音がした。二人分の足音なのでフォルシーナとミアールだろう。

何事かと思っていると、ノックもなしにいきなり扉を開けてフォルシーナが入ってきた。後ろでミアールが「お嬢様、ノックを……」と言いかけていたようだ。

「どうした、夜に騒々しいぞ」

「もっ、申し訳ありませんお父様……っ! ですがっ、そのっ、これっ、どうでしょうか!?」

『氷の令嬢』のニックネームが微塵も感じられないほど舞い上がった様子で、フォルシーナはその場で身体を一回転させた。美しい銀髪が広がってその後を追うように流れていく。なんか昔の化粧品のコマーシャルにこんなシーンがあったな。

「ほう、また一段と髪が美しくなったようだな。陽の光の下なら、まさに輝くように見えることだろう」

「はいっ! そのっ、そうなんです! しかもすごくサラサラで! 私の髪ではないようなのです!」

「ふむ……」

俺は立ち上がってフォルシーナのところへいき、その髪を手に取って眺めてみた。

なるほど確かにサラサラしている気がする。それとコンディショナーの香りも漂っていて、なかなかにいい感じの効果がでているようだ。

「例の物を使ったのだな。効果は確かなようで私も安心した。お前の場合元がいいということもあろうがな」

と好感度アップを試みるが、フォルシーナはすでに顔を真っ赤にしてプルプルしていた。

あ、もしかして髪を触るのはマズかっただろうか。この年頃の女の子は繊細だからな。失敗したかもしれない。

「……あうぅ。お父様、女性の髪を触るのは……」

「すまぬ。親子と思って気安くしてしまったな」

「いえ、嫌というわけではありませんが……その……」

と言いながら、フォルシーナは俺を離れてミアールに抱き着いてしまった。ミアールがその背中をさすって落ち着かせているのだが、やっぱり追放ルートに入ってしまったのだろうか。

「ああ、フォルシーナ、済まぬ」

「お館様、お嬢様は恥ずかしがっていらっしゃるだけなので大丈夫です」

「そ、そうか?」

セリフのわりにミアールの視線がちょっと生温かい気がするが、一応言葉通り大丈夫なのだと思っておこう。

「それでフォルシーナよ、使ってみてどうであった? 私が見る限り有用だと思うのだが」

「……あぅ、はい。これは素晴らしいものだと思います。女性なら誰もが欲しがるでしょう。是非とも領の産業とされるのがよろしいかと思います」

「そうか。まずは館の者たちにも試させてみるか。男が使ってもいいものゆえな」

俺の言葉に、ミアールの目が光った気がした。

「お館様、使用人が使うのもよろしいのでしょうか?」

「そのように取り計らおう。ミアールも使いたいと思うか?」

「はい、是非使わせていただきたいと思います。その、お値段は……」

「館の人間には高くはせぬ。ただ売り出す時は高くするつもりだ。その方が価値がでるゆえな」

「それがよろしいと思います。恐らくは奪い合いになるかと思いますので」

「……そこまでか?」

と聞き返すと、フォルシーナとミアールと、2人ともが強くうなずいた。

まあフォルシーナの騒ぎぶりを見れば確かにそうなのかもしれないな。なんにしろ好感度は上がった気がするのでよしとしよう。