軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

05 待ち伏せ

『モバイルフォートレス』でゆっくり寝て、翌日の朝。

朝食を終え、フォルシーナに連絡を取り、そして俺と魔族の少女ターナは再び街道を歩く旅に出る。

なお、ターナは夜のベッドの寝心地の良さも、朝の料理も感動していて「こんな快適な旅は……初めてです」と目をキラキラと輝かせていた。

ターナと錬金術の話をしながら歩いていると、これが魔族領の旅かと思われるほどのどかな時間が過ぎていく。モンスターも午前に1度遭遇したが、その時は俺が魔法で倒してしまった。

「マークスチュアートさんは、魔法も極めて……いるんですね」

「ありがたい言葉だが、この程度で極めたなどおこがましくて口にできんよ」

「そんなことはないと……思います」

などと話をしながら昼飯を食べ、さらに午後も街道を歩いて行く。

「このペースなら……今日の夕方には、ジスタリに……着くと思います」

「それは助かるな。ターナ殿のおかげだ」

ここに至るまで、道には5つの分岐があり、しかも非常にわかりづらいところもあって、ターナなしでは迷っていた可能性が高かった。飛ばされてすぐに彼女と出会えたのは本当に幸運であった。

「僕も錬金術のお話がいっぱいできて……とても楽しかったです。マークスチュアートさんとは……もっとお話を……したいですね」

「うむ、それは私もだ。もし魔王殿との話がまとまったらターナ殿を我が城にお招きしよう。私の臣下には錬金術が好きな者が他にもいる。楽しんでもらえるだろう」

「それはすごく楽しみ……です。そうなると……いいですね……」

一瞬嬉しそうな顔をするが、すぐに下を向いてしまうターナ。こういう不思議な態度はこの2日間ずっと見られるが、彼女の悩みの根はよほど深いらしい。

さて、街道は森の中に入っていき、少しモンスターに警戒しなければならなくなってきた。しかし歩いていて思ったが、魔族領は非常に森が多い。開墾されて耕作地となっている場所もあるのだが、それより森や山の方が圧倒的に多いようだ。これは魔族の人口が少ないことに起因するものだろう。

と考察しながら歩いていると、いきなり10メートルほど先、街道の脇の地面に魔法陣が浮かび上がった。

「む……?」

「あ、あれは……」

どこかで見たことがある魔法陣……と思って気付いた。それは魔族謹製の『転移の魔導具』に使われている魔法陣であった。どうやら地面の下に『転移の魔導具』が埋め込まれているようだ。

「これは……やられました。まさかここで待ち構えているなんて……」

そう言ったのはターナである。彼女は眉間を厳しく寄せ、腰に吊っていた片手杖を抜いて構えた。

その言葉も多少気になったのだが、それより『転移の魔導具』から出てきたものの正体に俺は驚いた。

それは黒いローブを羽織ったスケルトンだった。手にするのは2メートルくらいある禍々しい杖で、膨らんだ杖頭には目玉のような装飾が多数ちりばめられている。着ているローブの襟口にも目玉の装飾が多く施されており、虚ろな眼窩の奥には、青い光がゆらめいている。

一目見て高位のアンデッドとわかる姿。それもそのはず、目の前のアンデッドは、四至将ネクライガの右腕にして新四至将のネブノーであった。

ゲーム通りの見た目だが、目玉の装飾過多なその姿は思ったよりも不気味であった。

ネブノーは俺とターナを交互に見ると、その杖でトン、と地面を叩いた。

「フムフム、マサカココデ、ロゼディクス様ノ邪魔ヲスル人族ト会エルトハ。面白イ面白イ」

そう言って顎をカタカタと鳴らして笑うネブノー。あ~、確かにそんなキャラだったなあ。

「ふっ、まさかここで四至将が出てくるとはな。しかもわざわざ『転移の魔導具』まで用意して、なんともご苦労なことだ」

俺がマークスチュアート的煽りで対応すると、ネブノーは再びカタカタと笑った。

「馬鹿メ馬鹿メ、貴様ナド所詮ツイデニ過ギヌ。ダガ丁度良イ、ココデ貴様ヲ討チ取ッテ、ソノ頭蓋骨ヲロゼディクス様ニ捧ゲルコトニシヨウ」

「それができぬから、愚かなロゼディクスも配下を失い引き籠ったのであろうに」

「貴様貴様、言ッテハナラヌコトヲ口ニシタナ。覚悟覚悟覚悟セヨ!」

ネブノーは口をカタカタカタと激しく鳴らすと、その杖を一振りして構えを取った。

「マークスチュアートさん、ここは僕に……!」

となぜかターナがやる気になっているのだが、どう考えてもネブノーの相手は俺がするのが筋である。陰険眼鏡中ボスとはいえ一応主人公ルートを辿っている身であるし。

「ターナ殿、ここは私に任せられよ。この程度の二流など相手にならぬゆえな」

「しかし……っ」

「まあ見ているとよい」

俺は『シグルドの聖剣』を抜いて前に出る。

マークススチュアートとネブノー、中ボス同士の戦いだが、こちらはもともと四至将と同等のキャラ。さらにいくつものチートを備えたスーパー中ボスである。ネブノーとは格が違うが、ネファリスの一件を考えればこのネブノーもロゼディクスに何かされている可能性はある。俺は慎重を期し、まずはネブノーの出方をうかがうことにした。

「さあ、存分に魔法を使うがよい。すべて弾き返してくれよう」

「生意気生意気人族ゴトキガ! ナラバ見ヨ、『 闇龍(やみりゅう) ノ舞』!」

ネブノーが杖の石突きで地面を叩く。すると杖頭の目玉が赤く光り、瞬間杖頭から黒い炎が生じ、それはまるで龍のように螺旋を描きながらこちらへ飛んできた。自分でも口にしていたが、『闇龍の舞』というネブノー独自の闇属性魔法である。

「その程度か」

俺は『シグルドの聖剣』に魔力を注ぎ、上級光属性『ライトオブジエンド』を放つ。

黒い炎龍と太い光線がぶつかり合い、凄まじい光芒と大音声を周囲に撒き散らす。闇と光の拮抗は2秒ほど続き、そして何事もなかったかのように終息した。

「意外意外、マサカ止メラレルトハ。ダガコレナラドウダ、『 闇獅子(やみじし) ノ 哮(たけ) リ』!」

同じ魔法発動の動作を行い、ネブノーは次の独自魔法を発動した。ネブノーの前に黒い炎で形作られた獅子が3匹出現、一声吼えると俺に向かって突進してくる。

「ふっ、面白い芸だが余興には足りぬ。『 無尽(むじん) 冥王剣(めいおうけん) 』」

勝手に出る煽りセリフとともに、俺は『シグルドの聖剣』を一振りする。無数の斬撃エフェクトが俺の目の前に現れ、突っ込んできていた黒い炎の獅子3匹をズタズタに切り裂いて消滅させた。『シグルドの聖剣』が聖属性を持つからこその荒業である。

「馬鹿ナ馬鹿ナ、人族ゴトキガアリエヌ! 『 闇王(やみおう) ノ裁キ』!」

続けざまに3発目の魔法をネブノーは放ってきた。

『闇王の裁き』はネブノー最大の魔法のはずだ。ゲームでは全体攻撃+状態異常の面倒な魔法だったな。

出現したのは、黒い炎で形作られた巨大なスケルトンだ。手には黒い炎の剣。その剣をスケルトンは両手で天に掲げた。

すると、俺たちの周囲に無数の黒い炎の剣が現れる。切っ先は全てこちらを向いていて、一拍置いて無数の剣は俺へ向かって飛んできた。全周囲からの飽和攻撃だが、このままだとターナにも被害が及びそうだ。

「うわ……、これは……っ」

「ターナ殿、失礼する。『 蓋天(がいてん) 冥王剣』」

俺はターナに近づき、その小さな身体を左腕で引き寄せて、右手の『シグルドの聖剣』を天に突き上げた。

中ボス必携の全周囲攻撃により、俺とターナを中心に無数の斬撃エフェクトが荒れ狂う。もちろんネブノーが放った炎の剣はその攻撃に飲み込まれてすべて消滅した。

「ふわわ……マ、マークスチュアートさん……っ!?」

俺の胸の中でターナが恥ずかしそうな声を漏らした。つい力がこもって引き寄せすぎてしまったらしい。

「済まぬ」

と謝って離すと、ターナは真っ赤な顔で俯いてしまった。

仕方ないこととはいえ、年頃の娘さん相手に申し訳ないことをしてしまった。丸眼鏡糸目中年男に抱き寄せられるとかトラウマにならなければいいんだが。