軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

02 魔族領へ向かうために

「陛下のお考えは、魔宰相ロゼディクスという者を打倒し、それを以て魔王と講和を結ぶと、そういうことでしょうか」

「うむ」

マルダンフ侯爵の言葉に、俺は重々しくうなずいてみせる。

ここは王城の会議室。

俺の前には、フォルシーナ、マリアンロッテ、アミュエリザの3ヒロインと、ドルトン、リンの2将軍、さらに宰相のマルダンフ侯爵、家宰のミルダート、その他6名の大臣たちが席についている。

メイドのミアールは給仕のために部屋の端に控えており、獣人剣士のクーラリアは俺の後ろに護衛として立っている。エルフのアルファラも端の席に座っているが、これはエルフに対しての信頼を示する狙いがあったりする。さらに、秘書のラエルザ――魔族軍四至将ミルラエルザ――も俺の後ろに立たせているが、これももちろん彼女に対する俺は裏切らないぞというアピールである。

そんな中で、俺はまず皆に魔族のことを全て説明した。

一つ、魔族は穏健派と急進派に分かれており、穏健派は南下の意思はなく、今回の攻撃もは急進派によるものであること。

一つ、穏健派の長は魔王、急進派の長は魔宰相ロゼディクスという者であること。

一つ、ロゼディクスを倒せば、魔王と講和を結ぶことが可能であること。その為の使者が、今国王秘書をしている四至将ミルラエルザであること。

話し終わるとフォルシーナら3ヒロインとアルファラ、そして将軍リンは目を輝かせ、ドルトンは呆れ、ミルダートは深くうなずき、大臣たちは眉間に皺を寄せ、そして宰相のマルダンフ侯爵は先の通り確認を取ってきて、それからさらに質問をしてきた。

「陛下が魔族を完全に滅ぼそうとなさらないのには理由がおありなのでしょうか」

「理解が及ばぬからといって、また過去のしがらみがあるからといって、今戦う意思のない者たちを滅ぼすほど私は野蛮ではないつもりだ。また彼らと友誼を結べば、彼らの進んだ魔法技術や錬金術なども手に入れることができよう。さらに言えば、私は魔族にも存在理由があると考えているのだ。我らのあずかり知らぬところで、彼らがこの世界にいなければならぬ意味があると考えている。それが、私が魔族を滅ぼさぬ理由だ」

ちなみに最後のものは、ゲーム内でそれとなくほのめかされていた内容である。魔族は人間と対となる存在で、世界の調和のために必要な種族らしいのだ。だから彼らを滅ぼしてしまうとゲームではバッドエンド確定になるのである。

まあそんな適当な理由で納得はしてもらえないかもしれないが……と思っていたが、マルダンフ侯爵は逆に妙に感じ入ったような顔になっていた。というかその場にいた全員が差こそあれ同じような態度を見せている。ラエルザは『冷笑のミルラエルザ』の二つ名通りに冷笑しているかと思えば、神妙な顔で何度もうなずいていた。

俺としては逆に不安になるのだが、もしかしたらゲーム設定の話は、この世界の人間にはすごく説得力があるように聞こえるのかもしれない。フォルシーナたちも設定されていた二つ名には妙に反応していたしなあ。

「なるほど、陛下の深いお考えは理解できました。では、我が国としては、今後魔宰相ロゼディクス征討のために軍を起こすことになりますな」

少しして、マルダンフ侯爵がそう確認をしてきた。

そう、普通に考えれば向こうも軍を率いてやってきたのだからこちらも軍を、という話になるはずだ。だがそうはいかない事情があった。

「それなのだがな、知っての通り魔族領は北の平原の先に広がる、『万魔の森』『千剣山脈』のさらに奥にある。しかも魔族領は険しい山の合間にいくつかの町があるだけという、軍を進めるのに適さぬ土地なのだ。その上我が軍は先に大きな戦をしたばかり。兵たちも疲れていようし、すぐにまた戦となれば民心も落ち着くまい」

「それでは……?」

「私自らが少数の精鋭を率いて『万魔の森』『千剣山脈』を抜け、そして魔族領へと入り、魔宰相ロゼディクスを討つ。私の相手になるのは四至将ネクライガとロゼディクスのみしかおらぬし、それで片はつこう」

なにしろそれがゲーム通りの進行だからなあ。

自分で言っていて、「どうしてそうなるんだ?」と自問自答したくなるところもあるが、しかし魔族領が軍で攻めるのに適していないのは真実である。

もっとも、だからといって国王がヒロインを連れて魔宰相を倒してきますとならないのも確かではあり、マルダンフ侯爵を筆頭に大臣たちは揃って青い顔をした。

「陛下、さすがに陛下御自らが魔族領に向かわれるというのはすぐには承服いたしかねます。我が国は未だ安定しているとは言い難く、陛下が長期に不在となられるのはいささか問題があるかと存じます」

「それはわかっているが、『通話の魔道具』により常に連絡は取れようし、なにかあれば『転移魔法』でただちに戻ることも可能だ」

「それは確かに、その通りではありますが……」

「更に言えば、魔宰相ロゼディクスは非常に強力な魔族だ。ゆえに『シグルドの聖剣』がなければ倒すことは難しい。ここはどうあっても私が行くしかないと理解してもらいたい」

俺が語気を強めると、マルダンフ侯爵は溜息をついて、しぶしぶといった雰囲気でうなずいた。

「そういうことでしたら致し方ありません。ですが毎日の連絡は欠かさぬようにお願いいたしますぞ」

「わかっている。私とてこの国の民を一番に考えている。国政をおろそかにするつもりはない」

とやりとりをしたが、このやりとりは半分は演技である。マルダンフ侯爵も俺を本気で止めるつもりはなく、この場にいる人間、特に大臣たちを納得させるための芝居に近い。

そのやり取りをうんうんとうなずきながらいていた将軍リンが、

「では陛下、陛下の魔族征討には誰を伴うおつもりでしょうか? 可能ならば私も是非お供つかまつりたいのですが」

と聞いてきた。

うん、正直リンは元プレイヤーとしてすごく連れて行きたいんだけどねえ。しかしさすがにこのタイミングで将軍を連れて行くことはできない。

「リン将軍にはまだしばらく周辺国へ睨みを利かせてもらわねばならぬ。魔族もまだ軍勢をすべて失ったわけでもない。済まぬが王都に詰めていて欲しい」

「それは残念です。是非とも同行をしたかったのですが……」

「今後魔族との同盟が結ばれれば将軍にも余裕が生まれよう。その時には同行を頼むこともあるだろう」

リンがすごく悲しそうな顔をしているので、俺は一応そうフォローをしておいた。

すると途端にパアッと明るい顔になる『燐光の姫騎士』。なんとなく犬っぽいと思ってしまったのは秘密にせねばなるまい。

「さて、同行する人間だが、フォルシーナ、マリアンロッテ嬢、アミュエリザ嬢、この3人は力が必要になるので必ず来てもらわねばならん。それから護衛のクーラリア、メイドのミアールも来てもらう」

と、主人公パーティ(改)のメンバーをまず指名する。

この時点でかなり深刻な風評被害が出てきそうなメンバーだが、しかしすでに彼女らはこの国でもリン、ドルトン両将軍にも匹敵する強者である。事情を分かっている者なら納得はしてくれるだろう。

「それからアルファラ殿も同行するのだったな?」

「うむ。母上から国王マークスチュアートには必ず付いていけと言われている」

ということで、これでゲームメインキャラ美少女6人パーティが確定である。

まあイベントクリアだけならフォルシーナたちメインヒロイン3人だけで十分なのだが、レベルアップし放題の魔族領にクーラリアたちを連れていかないという話もない。今後のことを考えると、強者はいくらいても困らないのだ。

と、そこで同行するメンバーの話は終わりになるはずだったのだが、マリアンロッテが口を開いた。

「陛下、聖女オルティアナ様も是非同行したいとおっしゃっていましたが、お声がけはなさらないのでしょうか?」

「む、そうであったかな。では話はしてみようか」

たぶん言えば来てしまうだろうなあ。聖女オルティアナは自分の後継者となるはずの『光の聖女』ことマリアンロッテを気にしてるからな。

「陛下、姉上も必ず付いていくと言っていたので、姉上にも知らせたいのですが」

と言ってきたのはアミュエリザだ。彼女もいつの間にか王城詰めになっているが、確かに長期の旅に連れていくとなれば、姉バカのヴァミリオラも色めき立つだろう。

「ではローテローザ公にも私の方から伝えておこう」

「よろしくお願いします」

結局いつものメンバーになりそうだと思っていたら、再びリンが物欲しそうな目で俺を見てきた。そういえばリンは聖女オルティアナとヴァミリオラと仲がいいのである。

そう考えると、俺としても心が動いてしまう。

俺の顔色を読んだのだろうか、将軍のドルトンが頭を掻きながら珍しく口を出してきた。

「ええと、国王陛下、軍の方は自分の方でなんとかしときますんで、ラシュアル将軍も供をさせてやってくださいませんかね。陛下が魔族領にカチコミかけるのに、軍の関係者がいないってもの色々とマズいと思いますんで」

「む……、確かにそうか」

ドルトンの指摘はなかなか鋭いところを突いていた。

いくらチート中ボス国王とはいえ、それが直接敵地に乗り込むのに将軍を従えないというのは、軍側の面子が立たない話である。王としてもそこは考慮しないといけないのも確かである。

もしかしたらリンが最初に供を申し出てきたのもそれが理由だったのだろうか。だとすれば俺としても反省しなければならない。

「ドルトン将軍の言うことももっともかもしれぬ。リン将軍、先ほどの話を違えてしまうが、共に来てもらってよいだろうか?」

「はっ、はい! リン・ラシュアル、地の果てまでもお供をさせていただきます!」

ビシッと敬礼をするリン。だがその顔はかなり緩んでいて嬉しそうである。クーラリアみたいに尻尾があったら全力で左右に振っている気がする。

ということで10人パーティが決まったわけだが、まあゲーム的には10人まで仲間にできるシステムだったので、これが世界の強制力なのかもしれない。

俺以外全員美女美少女なのはやはり甚大な風評被害を生みそうだが……これも強制力のはずだからなあ。

フォルシーナがなにかブツブツ言っていて、それをマリアンロッテとアミュエリザが左右から挟んでなだめているのは気になるが、それ以外のマルダンフ侯爵や家宰ミルダート、将軍ドルトンや大臣たちはどことなく「わかっています」的な顔をしているので、俺が無実だとわかってくれていると信じたい。