軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10 常在断罪

アルバッハの立て籠もり事件を華麗なチート濫用で解決した俺は、その場をリヴィヨン嬢たちに任せ、宮殿を出た。

フォルシーナ、マリアンロッテ、アミュエリザ、ツクヨミの四人を連れて向かう先は、聖女オルティアナたちがいるはずの、ベランゴル民主国の首都にあるラファルフィヌス教の教会である。

教会は、宮殿から通りを歩いて10分ほどのところにあった。

神聖インテクルース王国の大聖堂には比べるべくもないが、教会としては立派なもので、しかも今、その入口前にはかなりの人だかりができていた。見えるだけで500人くらいはいるだろうか。

今パリヨー将軍がアルバッハの私兵を説得したりと南地区では大騒ぎのはずなのだが、中央区のこの辺りにはその喧騒はほとんど聞こえてこない。というより、教会前の人だかりのせいで聞こえないと言った方が正しいだろうか。

教会の様子を目にして、マリアンロッテが後ろから声をかけてくる。

「陛下、あの人の多さは聖女オルティアナ様がいらっしゃっているからでしょうか?」

「であろうな」

確かに、聖女オルティアナの人気を考えれば、あれくらいの騒ぎになるのは当然ではある。しかも政情が不安定になればなおさら……などとアークスチュアート面が余計な考察をしたりもするのだが。

「オルティアナ様はすべての国の人々にとても慕われていますからね。どこへ行っても人々に寄り添い、困っている人がいれば手を差し伸べる。私の憧れの人です」

マリアンロッテが両手を合わせて嬉しそうに言う。

するとそれにフォルシーナが反応した。

「マリアンロッテならオルティアナ様の座を十分に引き継げると思うわ。聖属性魔法の力もとても強いし、魔力ならもう上でしょう?」

「オルティアナ様の素晴らしさは魔法だけではないから。それに私は――」

と言葉を止めて、急に俺の方を見上げてくるマリアンロッテ。

その目はどことなく熱がこもっているように見えるが、俺にはその意味がわからない。

なので、

「マリアンロッテ嬢なら立派に聖女オルティアナの後を継げるであろう。私が以前『光の聖女』と言ったのも故のないことではない」

と当たり障りのない対応をしたのだが、それによってマリアンロッテは急にプクッとむくれたような顔になった。そのリアクションはゲームで見たことがある。好感度ダウン(大)のしるしである。

いや、ゲームだとマリアンロッテはオルティアナの跡を継いで聖女になるんだし、そこで好感度が下がるのは意味がわからないんだが。と言ってみても始まらない。ヒロインの好感度ダウンは俺にとっては断罪ルート復活の兆しである。

俺は慌てて言葉を繕った。

「ま、まあ、しかしそれは当人の考えもあろうからな。必ずしもマリアンロッテ嬢が聖女を目指す必要はない。今のように私の側で力を尽くしてくれるなら、私もその方が嬉しく思う」

後半ちょっとなに言ってるか自分でもわからなかったが、マリアンロッテが両手で拳にぎってフンスと息を荒くする好感度アップ(大)アクションをしたので正解だったようだ。

「はい、国王陛下! 私マリアンロッテは、生涯陛下にお仕えいたします!」

「そ、そうか。それがマリアンロッテ嬢の願いなら、こちらも願ってもないことだ」

「不束者ですがよろしくお願いいたします」

嬉しそうに深々と一礼するマリアンロッテ。なんか妙にひっかかる言い方をされた気もするが、ふと見るとフォルシーナが『氷の令嬢』状態になっていて、絶対零度の目でこちらを睨んでいたのでそれどころではなくなってしまった。

「どうしたフォルシーナ。なにか気になることでもあったのか?」

「いえ、お父様はやはりマリアンロッテを大切になさっているのだと思いました」

「それは、ゲントロノフ公から預かる大切な令嬢であるからな。もちろんフォルシーナのことも変わらず大切に思っているぞ」

「それはわかっておりますが……」

「こ、国王陛下、私はいかがでしょうか!? 私も生涯陛下にお仕えしたいのですが!」

フォルシーナを遮るように、今度はアミュエリザが前に出てきて生真面目ヒロインフェイスを向けてくる。う~む、なにか妙なスイッチが入ってしまったのだろうか。しかし俺としては、彼女もぞんざいには扱えない。

「む、むろんアミュエリザ嬢もそれが願いなら、私としては否やはない。ただ姉上の許可は必要ではあるぞ」

「大丈夫です! かならず姉上の許可は取り付けてみせます!」

「う、うむ」

アミュエリザを勧誘すると姉バカのヴァミリオラが怖いのだが……そこはアミュエリザが上手く説得してくれることを祈るしかないな。どちらにしろ今後もフォルシーナ、マリアンロッテ、アミュエリザの3人はこの世界を救うのに必要だしなあ。

「そうですか、お父様はアミュエリザまでも手元に置かれる気なのですね」

さらに冷気を増すフォルシーナの視線。

慌てて俺がなだめようとすると、マリアンロッテとアミュエリザがフォルシーナの両脇をガッと抱えて、「陛下、少し失礼します」と通りの反対側まで離れていった。

そこでなにか説得をしてくれたらしい。3人が戻ってくる時には、フォルシーナは『氷の令嬢』モードを解除していた。ん~、前にも似たようなことがあった気がするが、彼女たちはいったいどんな手品を使っているのだろうか。

「……お父様のお考えはわかりました。いえ、わかってはいたのですが、その相手にマリアンロッテとアミュエリザも入るというのは今まで少し疑っていたのです。申し訳ありません」

頭を下げるフォルシーナの目にはまだ氷の棘のようなものが見え隠れしているのだが、元に戻っている以上、それを指摘することはできるはずもない。

「う、うむ。何度も言うが、私が一番大切に思っているのはお前なのだフォルシーナ。それが揺るぐことはない、それは忘れてくれるな」

「はいお父様。そのことは常に胸に刻んでおります」

しかし何気ない会話から急に断罪ルートが顔を覗かせてくるのは心臓に悪すぎる。

やりとりを見守っていた幼女ツクヨミが、コテンと首をかしげている姿に辛うじて癒されるが、俺も首をかしげたいくらいである。