軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13 エルフの秘宝探索

翌朝、俺たちは装備を整えて族長の館前に集合していた。

同じく装備を整えたアルファラがいて、ゼファラとその右腕ミュゼもいる。

朝の空気はすがすがしく、昨夜エルフの里に漂っていた香りは一切ない。あるのはひんやりとした森の清澄さのみであり、これこそがイメージ通りのエルフの里である。

見渡すとすでに多くのエルフたちが通りに出て動き回っていて、荷物を運ぶもの、車を 牽(ひ) くもの、広場でトレーニングをするものなど様々だが、男も女も大人も子どもも皆一様に明るい表情をしている。

彼らは俺たちの姿を見ると礼をしてきたりと、そこに人族を 忌避(きひ) し隠棲してきた種族の雰囲気はない。

「皆お父様の偉大さを理解しているようでなによりです。エルフ族が話のわかる方々で本当によかったですね」

「それだけあの病に悩んでいたということだろうな。さて、では行くか」

フォルシーナに答えて、俺はゼファラたちのほうに歩いていった。

全員が揃うと、ゼファラは俺たちを見回してから口を開いた。

「用意はいいな。では大地の裂け目まで案内しよう。それからアルファラを貴殿のパーティに随行させるが構わないな」

「無論だ。ただし戦力として考えさせてもらうぞ」

「そうしてくれるとむしろありがたい。まだまだ未熟なのでな」

俺がチラと見ると、アルファラは険しい顔でじっとこちらを見ていた。

フォルシーナの話だと俺に感謝しているという話であったが、それとは別にまだ多少の警戒心というか、思うところがあるようだ。

「よし、ではついて来い」

ゼファラは広場から館を迂回して、館の北へと歩いて行く。

そちらには細い通りがあり、左右には倉庫らしき木造の建物が立ち並んでいた。石畳の通りを進んでいくと、木造の建物ばかりの里にあって、非常に目立つ石造りの建物が見えてきた。大きさは二階建ての一軒家ほどだが、作りはどことなく神殿を思わせるものだ。

「ここがエルフ族に伝わる秘宝『破邪の弓』を収めている聖廟だ」

そう説明しつつ、ゼファラは扉の閂にかかった大きな錠前に鍵を差し込んで解除した。金属製の両開きの扉が開かれると、ダンジョンのそれに似た、わずかに魔力を含んだ空気が奥から流れてくる。

「入るぞ」

ゼファラに続いてその建物に入る。

中はそこまで広くはなく、幅10メートル、奥行き15メートルくらいだろうか。

奥に磨かれた石造りの台座があるのだが、その台座は床に沈み込むように斜めに傾いでいる。そしてその台座の脇の床に亀裂が開いていて、深い穴のようになっていた。

「ふむ、この亀裂に『破邪の弓』が落ちてしまったはずなのだな」

俺が聞くと、ゼファラは苦い顔をしてうなずいた。

「ある日大きな地震が起き、気付いた時にはこうなっていた。『破邪の弓』は台座の上に置かれていたので、斜めになった台座から穴へ滑り落ちたのだろう。もちろん亀裂の中に下りて探索はしたのだが……」

「地下遺跡につながっていて、『破邪の弓』はそこにはなかったと」

「そうだ。地下には人ならざる者の足跡があって、その者が『破邪の弓』を遺跡の奥へと持ちさってしまったように思えるのだ。ただ遺跡の奥にどうしても進めず、手詰まりとなっている状態だ」

亀裂には縄梯子が下ろされており、ゼファラの説明通りすでに調査の手が入っていることが見て取れる。

俺は亀裂の中を見下ろしつつ、心の中でホッとしていた。ここまでは原作ゲームの「エルフの秘宝探索イベント」設定どおりだからだ。

「よかろう。では我らが下りて『破邪の弓』を取り戻してこよう。貴殿は館で待っているとよい」

「頼むぞ。『破邪の弓』が戻ったあかつきには、必ずお前との約は果たすと誓おう」

ゼファラはそう言って右の手のひらを向けてきた。俺は手を合わせることでエルフ流の挨拶を返し、そしてフォルシーナたちへ振り向いた。

「ではこれから、地下の探索を始める。地下は恐らくダンジョン化していると思われる。とはいえ気を抜かず、いつもの通りに進めば問題はない。準備はいいな」

「はいお父様」

「はい陛下」

「この槍にかけて」

俺は全員の顔色を確認し、ゼファラに「では参る」と声を掛け、光属性魔法『ライト』を発動して空中に光球を出現させ明かりを確保しつつ、亀裂に下ろされた縄梯子に足をかけた。

う~む、危うくリアルならではの罠にハマるところであった。

なんの話かというと、縄梯子で地下へと下りる途中、俺の次に下りてきたフォルシーナが声を上げたのでふと顔を上げたら、ミニスカートの中が『ライト』の魔法でくっきりと浮かび上がっていて……。

もちろん慌てて目を逸らしたのでフォルシーナには気付かれなくて済んだのだが、まったく恐ろしい話である。

ラッキースケベなどという言葉が前世の世界では存在したが、さすがに実の娘の下着をのぞく変態父という汚名だけは着るわけにはいかない。

さてそれはともかく、縄梯子を30メートルほど下りると、そこは広い地下空間になっていた。天井までは15メートル、幅は30メートル、奥は光が届かず見えないくらいである。

俺はフォルシーナ、マリアンロッテ、アミュエリザ、ミアール、クーラリア、ヴァミリオラ、聖女オルティアナ、そしてエルフのアルファラの全員が下りてくるのを待って、その広い空間の奥へと足を向けた。

しかし9人パーティというのはさすがに多い。といっても、ゲームでもパーティは最大10人編成になるようになっていた。ただシステム的に戦闘に参加するのは最大4人で、後は待機という扱いであったのだが。

付近にモンスターの気配はなく、100メートルほど進んでいくと、奥に人工的な建造物が光に照らされ浮かび上がってくる。

それは縦横10メートルはある石でできた両開きの扉と、その左右に立つ鎧姿の巨人のレリーフであった。扉の表面も巨人のレリーフも所々が欠けていて、その建造物が古いものであることを示していた。

俺が立ち止まると、フォルシーナが横に並んで見上げてくる。

「お父様、なぜこのような遺跡が地下にあるのでしょうか?」

「さてな。さすがに私も古代人の意図までは汲み取れぬ。だがこれだけの遺跡があるということは、その奥に相応のものがある可能性は高い」

「大森林の遺跡のように、古代人の技術が眠っていると?」

「もしくは重要なものと祀ったとか、危険なものを封印したとかだな。とはいえ今問題となるのはそこではない。その扉の下の地面を見よ」

「地面……、これは扉が開いた跡、でしょうか」

俺が指さした先には、扉がわずかに開かれたことを示すように、重いものを引きずったような跡が扇状についていた。それに加えてかすかに足跡のようなものも見える。見た感じは四足歩行の獣のような足跡だ。

「うむ。ゼファラ殿が言ったように、落ちてきたエルフ族の秘宝を、この扉から出てきた何者かが持ち去って扉の中へと入ってしまったのであろうな。我らの目的はそれを取り返すことにある」

「わかりました。お父様がいらっしゃる以上難しいことではないでしょう。ところで私やマリアンロッテ、アミュエリザの三人が必要になるのはいつなのでしょうか」

フォルシーナの質問に合わせて、マリアンロッテとアミュエリザも前に出てきて俺を見上げてくる。その期待に満ちた3対の目を前にして俺は大仰にうなずいてみせた。

「うむ、実はそこの扉を開くのに三人の力が必要なのだ」

「そうですか。ではその後は?」

「そこまでしかわからぬ。だが3人がいなければそもそもこの遺跡に入ることもできぬ。重要な役割だ」

「なるほど……」

とフォルシーナは納得した風だったが、マリアンロッテとアミュエリザは明らかに落胆の表情をしていた。多分自分たちが活躍できると思っていたんだろうなあ。でもこのダンジョンだとそれだけしか役割はないんだよね。

「ともかくまずは扉を開こうか」

扉へと目を向けると、そこには古代文字と3つの手形のようなへこみが掘られていた。

「『三人の高貴な乙女が力を合わせしとき、この扉は開かれ、大いなる力へと至る道が現れる』と書かれている。ふむ、情報通りだな」

「こちらの手形のへこみに手を合わせればよいのですね」

「そのようだ。3人とも頼む」

「はいお父様」

「はい陛下」

「お任せを陛下」

フォルシーナたち3人が前に出て、扉のへこみに手を合わせる。すると石の扉の表面に光の筋が何本も走り、ゴゴゴ……という音とともにゆっくりと扉が開き始めた。

それを見て、アルファラが後ろから怪訝そうな顔をしてやってきた。

「人族の王マークスチュアートよ、なぜ今のでこの遺跡の扉は開いたのだ。なぜ我らエルフでは開けなかった扉をお前たちが開けるのだ?」

「種族は関係なかろうな。古代文明において、高貴な女性の血を重要視する傾向、3という数字にこだわる傾向はたびたび見られるのだ。この扉もそれに従ったものだったということであろう。」

「そんな適当な理由でああまで自信ありそうに振舞っていたというのか……」

驚いたような呆れたような顔をするアルファラの態度に、俺は逆に新鮮さを感じてしまう。アルファラさん、その感覚は極めて正しいと思うよ。ただの腹黒ムーブだからねあれ。

「これがお父様のなさりようなのですアルファラさん。お父様は常に私たちには理解できない世界でものを考えていらっしゃるのです。適当に見えて、その裏では緻密な計算と推測が働いているとお考え下さい」

「そうだぜアルファラ。ご主人様のすごさはこんなもんじゃないからな、この程度で驚いてたら身がもたねえぜ」

だからフォルシーナやクーラリアに諭されて、「そ、そうか。確かにその通りのようだな」と納得しなくてもいいんですけどね。まああまり突っ込まれても困るので、俺にとっては助かりますが。

「では中に入るか。各自戦いの準備をせよ」

俺はそう指示をして、開け放たれた遺跡の入り口をくぐっていった。