軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11 エルフ

さて翌日は、朝から会談の間で女公爵ヴァミリオラと対談である。

ただその場には、必要があってフォルシーナやマリアンロッテ、そしてアミュエリザのメインヒロイン三人と聖女オルティアナも同席してもらっている。

メイドとしてミアールにお茶などの給仕をしてもらい、クーラリアも俺の護衛として後ろに立っている。

要するに、以前大森林へ一緒に行ったメンバー全員集合である。

「さて、今日はどのようなお話を聞かせてもらえるのかしら? このメンバーを集めたということは、もしかしてまたどこかへ探検にでも行くつもりだったりするの?」

椅子に座り足を組み替えながら、ヴァミリオラがそう切り出してくる。

後半の言葉は冗談半分なのだろうが、実はその通りだったりする。

「うむ。まず始めに、魔族の大々的な再侵攻が、恐らく一月の後にあることを伝えておこう。しかも今度は魔王軍四至将という実力者が2人出てくるという、かなり面倒な事態になる」

「その情報は例の秘書官ラエルザからね」

「そうだ。確度は非常に高い。さらに言うと、その四至将の1人エルゴジーラは、配下に最低でも50匹のワイバーンを従えている」

「ワイバーンが50? 待って、それは本当なの?」

「間違いない。前回撃退されたことで魔族は本気になったようだ。兵数も12万を想定している」

「大変な数ね。王都の兵は6万。城壁に拠れば守り切れない戦力差ではないけれど、そこにワイバーンが加わるとなると、王都の被害が馬鹿にならないわ」

「むろん城壁に拠って迎え撃つつもりはない。かといって、こちらにワイバーンへの対抗策がなければ勝利するのは簡単ではないだろう。勝利したとしても、兵の被害は甚大なものとなる」

俺がそう言うと、集まったメンバーは深刻な顔を……しないで、なぜか期待するような目を俺に向けてきた。ヴァミリオラだけは微妙に「またか」みたいな顔だが。

そんな中、マリアンロッテが両手で拳を作りながら身を乗り出してくる。

「それで、陛下としてはどのように対処されるおつもりなのでしょうか!?」

「うむ、私としてはここで、エルフ族の協力を取り付けたいと思っている」

「え……っ?」

俺がそう宣言すると、マリアンロッテだけでなく、全員が何を言われたのか理解できないといった感じで固まってしまった。

うん、まあそんな反応になるよね。

エルフ族。それはファンタジー作品ではお馴染みの種族である。

森に住み、自然を愛し、自然とともに生きる、尖った耳が特徴で超絶美形。

寿命は人間に比べはるかに長く、知恵深く、魔法と弓を 能(よ) く使う、まあ大体そんなイメージだろうか。

この世界のエルフ族もほぼその通りなのだが、彼らは過去に他の種族、特に人族との間に 軋轢(あつれき) があって、表の世界から身を隠したことになっていた。

そして今は旧ブラウモント公爵領の東に広がる『 不帰(かえらず) の森』の奥地にいくつかの里を作って生活している。原作ゲームの設定通りであればそうなっているはずだ。

実際だいぶ前に、将軍ドルトンが『不帰の森』でエルフらしき人影を見たと報告をしてきているので、エルフがいるのは間違いないだろう。

問題なのはそのエルフ、表世界から消えて数百年経つことで、この世界の人間にとっては幻の種族、もしくはすでに絶滅した種族と思われていることである。

ゆえに俺の「エルフ族の協力を得る」という言葉は、当然ながらすぐには信じてはもらえなかった。

俺のことを過剰に評価しているフォルシーナでさえ半信半疑といった様子である。

「お父様のお言葉ですから信じたいのですけれど、エルフ族というのはさすがに……。その、本当に今もいるのでしょうか?」

「以前将軍のドルトンが一度エルフらしき人影を『不帰の森』で見たと報告してきてな。私が冒険者時代に知りえた情報から考えても、エルフが今でも存在し、『不帰の森』の奥にいる可能性は高い」

「それなら探す価値はありそうですが、もしエルフ族が見つかったとして、彼らは魔族との戦いに力を貸してくれるでしょうか?」

「エルフ族との交渉については私に策がある。それは信じてもらいたい」

「お父様がそこまでおっしゃるなら……」

フォルシーナが辛うじてうなずくと、今度はアミュエリザが質問をしてきた。

「その、エルフ族というのは、ワイバーンに対して有効な迎撃手段をもっているのでしょうか?」

「彼らは弓と魔法の名手であり、その二つを組み合わせて非常に強力な遠距離射撃を行うことができるらしい。その力が空を飛ぶモンスターに有効であることは書物にも描かれている」

「あっ、それは読んだことがあるかもしれません。『ジャマダール戦記』ですね」

「アミュエリザ嬢は博識だな。その通りだ」

俺が褒めると、アミュエリザは背筋を伸ばして敬礼みたいな動作をした。確かそれが彼女の『好感度アップ(大)』動作だったはずだ。

しかし『ジャマダール戦記』か。原作ゲームでは、主人公たちがエルフ族を探すきっかけになるフラグ用のアイテムである。ワイバーン撃退の方法を探していた主人公一行が、その本を読んでエルフを探す旅に出るのだ。よく考えればそれだけの理由でよく探しに行こうと思ったな、と突っ込みたくなるが。

俺がゲーム知識を掘り起こしていると、聖女オルティアナが俺の手を取ってきた。どうも昨日の即位の儀の事故以来、さらに距離感バグってるんだよなこの娘さん。

「それでは国王陛下、今後そのエルフ族を探す旅に出られるわけですね。いつ出発でしょうか?」

「急がねばならんので、5日後を考えている」

「わかりました、用意しておきますね!」

「ちょっと、オルティアナも連れて行く気なの?」

慌てて遮ったのはヴァミリオラだ。

俺はそれを受けて、全員の顔を見渡した。

「うむ、今回の旅に行く人間だが、まずフォルシーナ、マリアンロッテ嬢、そしてアミュエリザ嬢の3人は必ず同行してもらいたい。これは大森林と同じく、3人の力が必要になる場面がありそうだからだ」

「もとよりそのつもりですお父様」

「はい! 国王陛下とともにどこまでも参ります!」

「わかりました。私の槍の腕をご覧ください」

3人が嬉しそうに反応する。

アミュエリザを連れていくとなっては、当然姉バカのヴァミリオラは黙っていられない。

「ならば私も同行するわ。本当にエルフ族がいるのなら、公爵としてもその場に立ち会う必要はあるでしょう。もちろんアミュエリザも守らなければならないし」

「歓迎しよう。それから私の護衛であるクーラリアと、フォルシーナの付き人であるミアールも連れていく。2人もいいな?」

「もちろんだぜですご主人様」

「かしこまりました」

クーラリアは尻尾を振り、ミアールは無表情に一礼する。

「となると、前回同様聖女オルティアナも参加という形がよかろうと思うのだ。オルティアナ殿もそれでよいのだな?」

「もちろんご一緒させていただきます。マリアンロッテに教えることもありますし、あの大森林の時のような旅ならぜひ行きたいと思います」

「聖女に同行してもらえるのは心強い。よろしく頼む」

「はい! お任せください」

と満面の笑みでうなずくオルティアナを見て、ヴァミリオラは「はあ」と溜息をつく。

「わかったわ。ここでオルティアナだけ除け者にするわけにもいかないわよね。しかし貴方は国王になっても変わらないわね」

「無論だ。国王となった程度で変わるような生き方はしておらぬ」

「それはいいことだとは思うのだけれど、貴方の場合はそれだと一部心配なところがあるのよ。昨日の宴でも少し気になることはあったし、そこはわかっているのかしら?」

そう言ってじろりと睨んでくるヴァミリオラ。

「ゲントロノフ家のことか? 公も納得はしていたと思うが」

「その分だとわかっていないようね。まあいいわ、それより貴方にはやらなければならない大きなことが残っているのだし。あの2人のこととか、ね」

「……うむ」

なんか思わせぶりに流されてしまったのだが、後で聞けば教えてくれるだろうか。

ヴァミリオラの言い方では致命的な話ではなさそうなので、放っておいても問題はなさそうだが……。

それに確かに今は、先に扱わないといけない重い案件があるのは確かだ。

そちらの方は俺も非常に気が重いのだが……国王として避けるわけにもいかないんだよな。