軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

05 練兵場

翌日午後、練兵場を視察に訪れた。

もともと王都の練兵場は2カ所あり、今は将軍ドルトンの率いる軍と、将軍リンが率いる軍がそれぞれ使用している。

まずはドルトンの方からだ。

今までドルトンが率いていたブラウモント公爵領の軍は領地に返し、そちらは今まで副将をしていた人物に任せている。長年現場主義のドルトンの右腕として書類仕事を含め堅実な仕事をしてきた人間なので、問題なく務められるだろう。

そしてドルトンの方は、新たに王家軍3万の大将となってもらっている。王家軍の古参将兵相手で大変ではあるだろうが、ドルトン自身高ランクの戦士であり、長年公爵軍の将軍を務めた男であるので、実力主義の軍で表立って文句を言えるものはいない。

ドルトンは相変わらず練兵場で腕組みをして訓練の様子を見守っていた。現場主義なのは変わらないようだ。

「ドルトン、兵たちの様子はどうだ? 練度が低いということはないと思うが」

「これは公爵閣下。そうですな、公爵領の連中と比べると個々の練度はちと劣りますかね。とはいっても個々の部隊ごとにモンスター狩りやダンジョンにはいかせてるんで、じきに能力は上がっていくでしょう。部隊長たちのレベルはまあまあ高いんで、軍としてはすぐに閣下の要求レベルには達すると思いますぜ」

「それは助かるな。一月半後に魔族の再襲来があると情報が入った。今回も野戦で対応するつもりなので、そのつもりでいてほしい」

「マジですかい。野戦にするのはやはりデーモン系が多く出てくるんですかい?」

「それもあるが、今回は四至将2人が出てくるようだ。しかも一人は本人がドラゴンで、ワイバーンを50体以上率いる厄介な相手だ。城壁に 拠(よ) って戦うと王都の被害が無視できなくなる」

「ワイバーン? たしかに火を吐かれたら王都が火の海になっちまいますな。とすると弓兵と魔導師兵が多く必要になりますか」

「そこは私にあてがある。それとは別に、強力な魔導師兵も100人ほど雇える予定だ。魔導師兵はお前に預けるので、戦術に組みいれておけ」

と言うと、ドルトンは呆れたように溜息をつきながら、頭をポリポリとかいた。

「ま~た閣下の神のごときお知恵が出てくるんですかい。今度はなにがあるんで?」

「それは秘密にしておこうか。なに、即位の儀が終わったらすぐに用意はする。それまでとにかく兵の練度を徹底的に上げておけ」

「わかりやした、とりあえず戦えるようにはしときます。ただやっぱり、戦場での頼みは公爵閣下の力になっちまうかもしれませんな」

「それは構わぬ。戦の時は私が常に矢面に立つ。それも最大限活かすようにせよ」

「へい、わかりやした。ゴーレムも数が揃ってるんで、魔族軍に後れを取ることはないでしょう」

「『紅蓮の息吹』もこちらに呼び寄せる。それと周辺国の動きもある。そちらに対応するためにも、魔族には大打撃を与えてしばらく大人しくしてもらわねばな」

「しっかし公爵閣下も大変ですねえ。王様になってもしばらく休めそうにありませんな」

「それはお互い様だ。だが我らが苦しめばそれだけ早く民は楽ができるようになる。今しばらくは力を貸してもらうぞ」

「承知しましたわ。そこは手を抜くとうちのカミさんから怒られちまいますからね」

そこでドルトンは珍しく苦笑した。

彼の奥方は、例の便通の薬やシャンプーなどのヘビーユーザーであるらしく、俺にやたらと感謝しているらしい。

「あ、そういやカミさんなんですが、どうやらできたみたいなんで」

自分の腹のあたりをポンポンと叩くドルトン。

「それはめでたいではないか。4人目であったか?」

「ですな。一番上も冒険者として一人立ち始めたんで丁度いい感じでさ」

「その子が生まれるころには平和な世にしておきたいものだ」

「ですなあ」

互いにしみじみとうなずき合う俺とドルトン。

おっさん同士で連帯感を持つのは仕事場では重要なことである。

俺はドルトンと別れ、練兵場の端の方に歩いて行った。

そこでは金髪狐獣人娘のクーラリアと赤髪ボブカットメイドのミアールが2人で鍛錬をしていた。クーラリアは木刀、ミアールは木製の片手剣と円形の盾を持ち、互いに激しく打ち合っている。

冒険者ランクで言えばB前後はある2人なので、その打ち合いは一般の兵士とは比べ物にならないほど激しく鋭いものである。

見ていると、剣士として経験年数の長いクーラリアの方にまだまだ分があるようだが、まだ戦い始めて半年も経たないミアールがそのクーラリア相手に十分太刀打ちできているのも末恐ろしく感じる。もやは2人ともに完全にメインヒロイン級である。

俺が近づくと2人は一撃ずつ出し合って、互いにさっと身を引いた。両者ともに呼吸が荒いが、やはりミアールの方が苦しそうだ。

「精が出るな。腕の方もますます上がっているようで頼もしい限りだ」

俺が声をかけるとクーラリアは尻尾をブンブンと振りはじめ、ミアールは 慇懃(いんぎん) に礼をした。

「ご主人様の役に立つようになるのは並大抵じゃ足りないからな、鍛錬は死ぬほどやるぜです」

「先の戦いではお館様のお役に立てませんでした。私自身まだまだ力不足ですので、鍛錬の時間をいただけてありがたく思っております」

「うむ、2人ともに私から見ても筋がいい。たゆまず鍛錬を続ければこの国を代表する剣士となれよう。期待している」

「この間のリープゲンのおっさ……侯爵様くらいには勝てるようになるぜです」

クーラリアは先日の俺と剣の達人であるリープゲン侯爵の一騎打ちを見てかなり衝撃を受けたようだ。俺と違って彼は純粋な剣士なので、クーラリアが目標にするには格好の相手である。

「あの域には並の鍛錬では届くまい。しかしお前なら超えられるはずだ。ゲントロノフ領では剣術大会もあるようだから、それに出てみるのもいいかもしれん」

「それは絶対に出たいぜです! ミアールももちろん出るよな?」

「そうですね。お館様とお嬢様のお許しが出れば」

クーラリアとミアールが互いにうなずき合って、俺の方に期待の目を向けてくる。

「よかろう。その件はゲントロノフ家に伝えておこう。それから即位の儀が終わった後、『不帰の森』の探索を行う。お前たちも連れていくのでそのつもりでいるように」

「わかったぜです。でも『不帰の森』になにがあるんだですか?」

「それはまだ話せぬ。探索自体は大森林の時と同じような形になろうから、準備をしておくがいい」

「また水着が着られるんだですね。アタシの身体も見てもらいたいし、ご主人様の身体も見たいぜですよ」

「ク、クーラリア、なんということを言ってるの……!」

クーラリアが目を輝かせていきなりとんでもないことを言い始め、顔を赤くしたミアールが慌ててその口をふさいだ。

そういえば『不帰の森』は大きな水場はなかった気がするな。大森林の時と同じようにフォルシーナ達を連れて行くなら、身体を洗えるような工夫が必要だろうか。と言っても、水魔法を使うくらいしかないのだが。