軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17 検証結果

――得意属性には、術者の性格が関係しているらしい。

『アバドン魔法全書』得意属性の項にそういう記述があった。

いきなりで何が言いたいのかわからないかもしれないが、こういうことだ。

――ジュリア母さんの得意属性が火なのにはちゃんとした理由がある。

一見するとジュリア母さんは優しげで、水や風や光なんかが得意そうだけど、いざ戦いとなると怖いくらいの闘争心を見せるし、魔法のレクチャーをする時も真剣だ。

真剣に――生徒の心をえぐってくる。

「もぅ~、だから、《フレイムビット》の時の 卜(フレイム) は、単体発動の 卜(フレイム) とは違うの。こう、びしゅって感じで打つの」

「 ル(コンセト) は単体じゃ意味がないんだから、次の 卜(フレイム) にこう、めり込ませる感じで使うの。だからそうじゃなくて……」

「ほら、《フレイムランス》なのに《フレイムビット》の 卜(フレイム) になっちゃってるから失敗するんだよぉ。もっとよく集中して、ぐわわってやるの!」

今母さんから習っているのは、 卜(フレイム) 一字で発動できる《フレイムビット》と、 ル(コンセト) 卜(フレイム) 二字で発動する《フレイムランス》の使い分けだ。

母さんの言うように、それぞれ 卜(フレイム) の使い方に微妙な違いがある。

まだ初級から中級の魔法だから、《フレイムビット》も《フレイムランス》も、単体で使うだけなら何とか使えるようになっている。

が、この《フレイムビット》と《フレイムランス》を交互に使う、あるいはアトランダムにどちらかを使う、というのが意外に難しいのだ。

格闘ゲームでいえば、中段と下段の択をえんえんかけられている状況、だろうか。

格ゲーならまだしも中段は発生が遅かったりして目で見てから反応できるのだが、《フレイムビット》の 卜(フレイム) と《フレイムランス》の 卜(フレイム) を瞬時に切り換える作業はほとんど直感力の勝負だ。

【不易不労】のおかげでそういう精神的にキツい作業自体は問題なく続けられるのだが、問題は母さんの指導である。

悪意がないだけになかなか受け流しづらく、結構精神力を削られるのだ。

最近は練習のやり方だけ教えてもらって後は自習、という形式を取るようにして、半ばジュリア母さんから逃げるような格好になっている。

まあ、とても熱心に教えてくれるし、こっちができるまで付き合ってくれるから、基本的には有り難いんだけどな。

《 火炎嵐(ファイヤーストーム) 》はまだまだ先だが、《フレイムランス》くらいならすぐに安定して使えるようになりそうだ。

◇◆◇◆◇◆◇◆

さて、【投槍技】の検証結果である。

【投槍技】のスキルレベルが上がると実験時間が長くなるので、槍としてカウントされなさそうなものから順に5時間ずつ【物理魔法】で的目がけてぶん投げる作業を繰り返した。

もう一回、集めたもののリストを出しておこうか。

第1グループ「槍」 長い槍、短い槍、投槍用の槍、取り回し用の槍、

騎馬用の槍

第2グループ「武器」 剣、ハルバード、斧、ナイフ、弓矢の矢

第3グループ「細長いもの」 ただの棒、物干し竿、箒、薪、太い針、木の枝

とりあえず、カウントされなさそうな第3グループ「細長いもの」から試した。

ただの棒→×

物干し竿→×

箒→×

薪→×

これらはえんえん投げ続けても【投槍技】のスキルレベルは上がらなかった。

高レベルになった【物理魔法】も上がりは遅くなり、スキルレベルは変わっていない。

だいたい予想通りの結果を得たが、そのために20時間をかけたのはもったいなかったかもしれない。

次が、意外な結果である。

太い針→汎用スキル【手裏剣技】を獲得

なんと、始めて1時間ほどで【投槍技】とは別のスキルを獲得してしまった。

せっかくだからそのスキルを使って残りの4時間針を投げ続けてみたら、【手裏剣技】はレベル2になった。

【投槍技】よりも小回りが利いて便利そうなスキルで、このスキルが得られただけでも第3グループの成果としては十分だろう。

そして、最後の木の枝は、なんと【手裏剣技】のスキルレベルが3になるという結果を得た。

針にしろ枝にしろ、手裏剣かと言われると怪しいが、おそらくサイズの小さい尖ったものを投げると【手裏剣技】にカウントされるのだろう。

【手裏剣技】と【投槍技】の両方にカウントされる可能性も考えたが、結局第3グループをやっている間に【投槍技】のレベルが上がることはなかったから、その辺の境界線は結構厳密なのかもしれないな。

ここまで合計30時間、6日間に分けての作業だったが、【手裏剣技】という思わぬ副産物を得られたのだから、十分に成果があったと言えるだろう。

俺は意気を新たにして第2グループ「武器」へと取りかかる。

まずは剣。

投げようとすると重心が安定せず、回転しながら飛んでいくことが多かったのだが、そのおかげか、【飛剣技】なる汎用スキルを獲得した。

よくわからんので【鑑定】のヘルプ情報を見る。

《飛剣技:宙を浮遊させた剣を用いて戦う剣技。》

うん。まんまだね。

それにしてもこのスキルは一体どういう人が使うことを想定してるんだ?

普通は【物理魔法】で剣を操って戦うなんて発想はありえないはずだ。MPの効率が悪すぎるからな。

だがまあせっかくなので【飛剣技】とやらを使って、武術書に載っていた剣技の型をやらせてみたりはした。

やっているうちに、なんとなく感覚がつかめてきたのだが、要するに剣の持ち手がいないのだから、もっと自在に剣を回転させたり、連続で突きを放ったりしてもいいわけだ。

そう考えると、従来の剣技とは異なる原理に基づいた、新しい技の体系が作れるのかもしれず、キワモノのようでいて案外面白い可能性を秘めていそうである。

【剣技】と別のスキルにまとめられているのには、そういう理由があるのかもしれない。

それに、俺はまだ3歳児相当の身体だから、自分で剣をぶん回すわけにはいかない。

でも、【飛剣技】ならば問題はないわけだ。

今度暇を見つけて研究してみようかな。

ハルバードは【投槍技】のスキルも上がらず、独自スキルの獲得もなかった。

ハルバードが槍扱いにならないのなら、斧をやる意味はなくなったが、せっかくなのでスキルを獲得しないか試してみる。

結果、【 投斧技(とうふぎ) 】のスキルを獲得。

やっぱりね。

次のナイフでも同様に、【ナイフ投げ】を獲得する。

それ自体は大方の予想通りだと思うが、【手裏剣技】と何が違うのか、という疑問は出てくるな。

今から検証し出すと収拾がつかなくなりそうなので、また次の機会にやろう。

第2グループ最後は弓矢の矢だったが、【投槍技】は上がらず、スキルも獲得せず。

ひょっとしたら【弓技】でも獲得するかと期待したんだが、要するにちゃんと弓を引いて矢を撃てってことなんだろうな。

で、最後に残った第1グループは簡単で、最初の長槍で【投槍技】のスキルレベルが2に、その後、他の種類の槍をひと通り投げまくって合計でスキルレベルが5に到達した。

最後の方は上がりが悪くなってきたから、取り回し用の槍と騎馬用の槍を合わせて4から5に上がったという形で確認を取った。

ここまでの所要時間、合計75時間、15日間かけての作業だった。

もちろん、合間合間にMP最大値の拡張や母さんとの魔法特訓もある。

槍を投げる作業があまりにも単調になるときには、並行して辞書や『アバドン魔法全書』の暗唱作業もやっている。

ちなみに、そんな作業に耽る俺を、ステフは何が楽しいんだろうと言わんばかりの気味悪そうな目で眺めていたりするのだが……まあ、気にしないことにしよう。

というわけで、総合結果として、【投槍技】はやっぱり「槍」じゃないとダメだということが判明した。

ちょっとがっかりの結果である。

ただ、実験の副産物として、【手裏剣技】、【飛剣技】、【投斧技】、【ナイフ投げ】以上4つのスキルが獲得できた。

ちなみに、現在の俺のステータスはこんな感じだ。

エドガー・キュレベル

レベル 31

HP 63/63

MP 1911/1911

スキル

・神話級

【不易不労】-

【インスタント通訳】-

・伝説級

【鑑定】9(MAX)

【データベース】-

・達人級

【物理魔法】7

【付加魔法】3

【魔力制御】6

【無文字発動】6

・汎用

【投槍技】5

【飛剣技】2

【手裏剣技】3

【投斧技】2

【ナイフ投げ】2

【火魔法】6

【水魔法】2

【風魔法】6

【地魔法】2

【光魔法】2

【念動魔法】9(MAX)

【魔力操作】9(MAX)

【同時発動】9(MAX)

《善神の加護+1》