軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迷宮と現状

翌日、ギガンテスの解体に向かう《光の道》と別れた私達は下層を目指して森林の中を進んでいた。

既に数回、魔物の襲撃を退けた後、周囲を警戒しながら昨日、《光の道》のメンバーから聞いた情報について話していた。

「やはり妙だな」

「そうね。やはり何か原因があるのかしら?」

《光の道》が言うには、ここ数日、このダンジョンは異様に魔物の影が濃いらしい。

それに加えて今まで存在が確認されていなかったはずのギガンテスのような強力な魔物が出現している。

これらには何か関係があるのだろうか?

「現状では判断できませんね」

「あ⁉︎敵襲ッス!」

「敵、アーミーモンキー!囲まれてるぞ!」

「此処は木々が多い、開けた場所まで一気に抜けるぞ!前方はユウとティーダ!殿は私がやる!エリーは遊撃!」

周囲の木々から現れたのは群れを成し集団で連携して獲物を襲う魔物だ。

1匹、1匹は大して強くはないが、その連携はまるで熟練の軍人のようであり、時にはベテランの冒険者ですら餌食にされることもある。

エルザの指示が飛び私達は素早く陣形を整えて駆け出した。

「邪魔ですよ!」

「退くッス!」

ユウの手にする鉈が迫り来るアーミーモンキーを切り裂き、ティーダの鉄杖が華奢な骨を砕く。

「【 氷鎚(アイス・ハンマー) 】」

私の魔法で作り出した氷塊がティーダの死角に入ろうとしていた2匹を纏めて押し潰す。

「もう少しだ!」

前方に見える開けた場所を目指して走る私達に、背後のアーミーモンキーを斬り払いながらエルザが続く。

広場に躍り出た私達はお互いを背に周囲を囲む魔物の群れに対峙する。

「かなり大きな群れね」

「普通のアーミーモンキーの群れは多くても15匹前後のはずなのですが……」

「既に倒したのも入れると30匹は居るッスよ⁉︎」

「幸いこの広場なら木の上からの攻撃や立体的な動きも制限される。

直ぐに片付けて先を急ごう」

この様に私達は次第に多くなる魔物の襲撃を蹴散らしていくのだった。

◇◆☆◆◇

「【 治癒(ヒール) 】」

今日も、早朝から屋敷を訪れた宮廷治癒魔導士様がミレイ様やルノア様に治癒魔法を掛けてくれていた。

エリー様達がキングポイズンスライムの変異種の毒の解毒薬の調合に必要な素材を採取に向かった日から、皇太子殿下の指示を受けたという宮廷治癒魔導士様が日に1度、屋敷で療養されている方々に治癒魔法を掛けてくれていた。

治癒魔法をかけられたミレイ様達は、少しだけ楽になっているようで、荒れていた呼吸もかなり落ち着いていた。

「終わったよ、では私はこれで。

体力は回復したけど、毒が抜けたわけではないから目を離さないようにね」

「はい、ありがとうございました」

皇太子殿下の計らいでミレイ様達の症状が悪化しないように、定期的に治療魔法をかけてもらえているが、それでも目を覚ましている時間は短く、あまり食事も摂れていない。

このままでは長くは持たないことは私にも理解できた。

しかし、今私にできることはあまり無い。

私程度の実力ではダンジョンでは足手纏いになることは明白だ。

私は、自分の無力さを悔やみながら、エルザさんの仲間の方達の所へ向かう宮廷治癒魔導士様を見送るのだった。

◇◆☆◆◇

「それで、ソール王国の件はどうなった?」

ハルドリア王国、国王ブラートは執務室で書類を捌きながら宰相であるジークに問いかける。

「はい、既に暴動は鎮圧されたそうです」

「そうか、今回は属国の小さな地域でのことだったが、このまま関係が拗れると不味いな」

「ええ、既にいくつかの国では武器や食料を集めようとする動きが見えています」

「なに?」

「反乱……というわけではなく、我が国と属国の間で諍いが起こった時に自国を守るための備えのようですが、あまり好ましい状況ではありませんね」

「うむ、アーネストを欠いたのは痛いな」

「そうですね。しばらく辺境に置いた後、呼び戻すつもりだったのですが、監視の目を抜けて自刃するとは……」

ブラート王は深い溜息を吐き出した。

「エリザベートの捜索の方はどうなっている?」

「そちらも難航しております。

何分、属国との関係回復に注力しているため、遅々として進んでいないのが現状です」

「そうか……」

「陛下…………いや、ブラート」

ジークは臣下としてではなく、友人として砕けた言葉でブラート王に進言する。

「やはり、フリード殿下は政務から遠ざけるべきだ」

「うむ……」

「お前が雷の魔力を継ぐフリード殿下を寵愛しているのは分かる。

国の秩序を守るためにもフリード殿下を王太子として立てることは大切なことだ。

だが、フリード殿下はあまりにも…………」

「わ、分かっている」

「エリザベートのように完璧なフォローができる者が居れば良いが、このままでは国が崩壊する。私も優秀な補佐官を探してはいるが……」

「ああ、理解している。俺も手は打っている」

「では……」

ブラートは悲しげに頷く。

「うむ、先日の忠言のことだろう。

既に知らせを走らせている」

その言葉を聞き、ジークは臣下として王の判断を飲み込んだ。

「そう…………ですか。ご英断です」

この日も王城の空気は重いままだった。