軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

噂する者達

「エリーさん、お久しぶりです」

「お久しぶりですわ、村長様」

私とミーシャはガナ村に到着した後、村長と面会していた。

あの紛争の始末がようやく終わり、つい先日から少しずつ化粧品の生産が始まっていた。

「何か困ったことなどはありませんか?」

「いえいえ、トレートル商会のおかげで皆、安定した収入を得ることができるようになりますし、村の防衛にも人を送ってくださって、感謝しております」

紛争の後、私はセドリック商会で戦闘能力のある奴隷を数人購入し、この村に送り込んでおり、村の周囲の魔物の間引きと防衛に当たってもらっている。

待遇はミーシャと同じく、トレートル商会の商会員に準じており、数年、真面目に働いてくれれば奴隷身分から解放して商会員として雇用するつもりだ。

実力はほどほどでも性格的に協調性がある者を購入したので、村人とも問題なく打ち解けているみたいね。

村長と生産の監督として派遣した商会員から報告を受け、作業場の視察をすると、陽も落ちたので、今日は村長の屋敷に泊めてもらうことになった。

「さぁどうぞ。田舎料理で恐縮ですが、この辺りの郷土料理です」

「頂きますわ」

「頂きます」

村長の奥さんと娘さんが用意してくれたのは、キノコや山菜などの山の幸をふんだんに使った鍋だった。

「あら、キノコから良いお出汁が出ていますわね」

「美味しいです」

決して高級とは言えないが、滋味あふれる優しい旨味と沢山の食材による深い味わいが美味な逸品ね。

猫舌のミーシャもハフハフと美味しそうに食べていた。

翌日、昨日は遅くまで見回りに出ていた警備の責任者と面談し、不足している物資などを確認した私は、昼前にガナ村を出発するのだった。

再び馬車を走らせ数日、ブロッケン砦に到着した。

現在この砦はサージャス地方への関所を兼ねているらしい。

「止まれ!行商か?現在此処は通行するのに許可が必要だぞ?」

「商人ですが行商ではありませんわ。

許可証は此処に」

私はルーカス様のサインの入った通行許可証と商業ギルドの会員である証明となるギルドカードを提示した。

特別認可商人になると、この手の検問などもかなり簡略化されるらしいのだけれど、私はまだ特別認可商人としての証明書を貰っていないので、それなりに面倒な手続きを踏まなければならない。

「許可証は確認した。積み荷はなんだ?」

「アクアクローラーという魔物の卵ですわ」

「魔物の卵だと?」

「ええ、ミーシャ」

「はい」

砦の兵士が怪訝な顔をするが、私は先んじてミーシャに預けてあった書類を受け取り、兵士へ差し出した。

「コレがアクアクローラーの卵の所持許可証、こちらはサージャス地方への持ち込みの許可証ですわ」

「う、うむ」

兵士は書類を確認した後、アクアクローラーの卵が入った木箱の封印などをしっかりとチェックして通行を許可してくれた。

「随分と厳重でしたね」

「まぁ、ついこの間まで紛争中だったし、まだ併合したばかりの土地だからね。

テロリストや反帝国ゲリラなんかも居るかもしれないからしばらくは出入りが厳重になるのよ。

兵士達も皆気を張っていたでしょ?」

「はい、随分と緊張感がありました」

「少々気を張り過ぎだとも思うけどね」

手綱を握るミーシャにそう返した私は、目的の村までの地図を確認するのだった。

◇◆☆◆◇

「ふぅ、行ったか」

ブロッケン砦で通行する者のチェックを担当していた兵士は遠ざかる馬車を見ながら隣の相棒と共に肩の力を抜いた。

「今のがトレートル商会の『黄昏の魔女』なのか?」

「ああ、俺は此処に配属される前に領軍に居たんだ。その時に直接見たから間違いない」

その日、ブロッケン砦にやってきたのは女2人、それもまだ少女と言えるような若い2人組だった。

一瞬、その不用心さに心配になった兵士だったが、通行許可証を受け取る時に、そのうちの1人が、あの紛争で活躍した義勇軍を率いていた女商人だと気づいたのだ。

「そんなに凄かったのか?」

「凄いなんてもんじゃないさ。

どんな手を使っているのか知らないが、多属性の大魔法が次々と放たれるんだぞ。

俺は砦の外から包囲していただけだが、それでも防壁越しに竜巻や石柱が敵兵を薙ぎ倒すのが見えたぞ」

「マジかよ」

「それで陽が暮れ始めてから、沈むまでも掛からないほどの時間で敵兵は皆殺しさ」

「それで『黄昏の魔女』か……」

「ああ、ルーカス伯爵閣下とも懇意にしているらしいし、絶対に怒らせるなよ。

首が飛ぶぞ、色々な意味で」

「わ、わかった」

軽い雑談を終えて、2人の兵士は持ち場へと戻っていくのだった。