作品タイトル不明
妖精のカンテラ①
今は梟と呼ばれている悪魔オルオートはまだ200歳にも満たない若輩者でありながら子爵位を持っている。
その実力は確かな物で、そこそこの強さの人間が3人程度いたところで、問題なく殲滅出来ると確信していた。
梟をこの人間界に呼び出したのは娼婦の様な服装の女、烏であり、オルオートは烏との契約によって行動している。
今回の仕事は、ナイル王国に侵入して来たエリー以外の人間を始末する事。
どうと言う事はない、簡単な仕事のはずだった。
「ちっ!」
梟の拳が目の前のミレイに当たる瞬間、彼女が手にするカンテラ型の神器の炎が揺らめくと、ミレイの姿は陽炎の様に消えてしまう。
そして……。
「ぐぁ!」
死角に現れたミレイの一撃を、何とか急所を外して受ける。
これを繰り返していた。
(あの神器の能力はなんだ?透明化……いや、幻影か⁉︎)
ミレイに向けて魔法を放つがやはりその姿が消えて別の場所に現れる。
「【剛撃】」
「ぐぁあ!!」
不意に脇腹に打ち込まれた短剣による刺突。
着込んでいた鎖帷子と魔力による防御で突き刺さりはしていないが、衝撃は伝わる。
見れば猫の耳とリボンが巻かれた尻尾の少女。
「ちっ!」
咄嗟に身体を半回転させた回し蹴りを放つが、ミーシャはミレイと同じく姿が掻き消えてしまう。
(確かに実体が有った。つまりこれは幻影ではなく転移。
それも自分以外にも使える)
再び近くに現れた気配に視線をやると、ルノアが杖を掲げていた。
「不味……」
「【 万物を粉砕せし斬風(ブレイド・テンペスト) 】」
ほぼゼロ距離から放たれた上級魔法。
不完全とは言え、その威力は鎖帷子程度では防げない。
「くそっ!」
ルノアの姿はすぐに消え去り、梟の反撃は虚しく空を斬った。
「はぉはぁはぁ」
視線の先には3人の人間の姿が有る。
距離にして20メールと言ったところか。
一瞬で詰められない距離ではないが、先ほどからの転移速度からして、避けられてしまうのは明らかだ。
「何だ……何か条件やリスクがあるはずだ。」
神器とて何でも出来る訳ではない。
ノータイムの瞬間転移なんて、人間に使いこなせるレベルを超えている。
何かしらの秘密があるはずだ。
再びミレイのカンテラが揺らめく炎を見せる。
3人の姿は消えて背中に衝撃を受ける。
しかし、今度は予想して背中側の鎖帷子に多めに魔力を込めていた。
そして見えた。
「なるほど、影か」
奴のカンテラから揺らめく炎が見えた時、影が不自然に動いた。
おそらく影が転移の条件に関係している筈だ。