作品タイトル不明
大戦⑥
ユウの従魔であるサンダーバードから飛び降りたシスティアは、後方から向かって来ていたハルドリア王国の竜騎兵が迫る中、素早く魔法を組みあげる。
「【泥弾】」
最も扱い慣れた魔法の1つ。
泥で出来た拳大の弾丸を高速で撃ち出す単純な魔法だ。
システィアの魔法適性は水属性と土属性の複合属性だ。
コレは水の柔軟さと土の頑強さを両立させる事ができる強力な魔法なのだが、現在の状況では少し使い 辛(づら) い。
空気中の水分を使える水属性は良いのだが、魔力のみで土を生み出すのはかなりのコストが掛かるのだ。
出来るならば、地面にある土を利用したいが、空中ではなかなか難しい。
泥の弾を受けて先頭を飛んでいた一騎の竜騎兵がバランスを崩す。
それにより、後方の竜騎兵も僅かに速度が落ちた。
システィアはその隙を見逃さない。
空中戦は得意では無いが、不得意だからと言って対応出来ない様ではトップクラスの冒険者など務まらない。
「荒廃せし天空の廃都 空を走る泥に塗れし箱庭 土と水の領域は我が意のままに【 泥の庭園(マッド・ガーデン) 】」
システィアが作り出したのは薄く広がる泥で出来た足場だった。
泥を操作する魔法を応用し、空上に泥で出来た庭園を形作ったのだ。
「敵兵!エンゲージ!」
「魔法使いだ!距離をつめろ!トーマス続け!」
竜騎兵は体勢を立て直すと、動揺などは無く、直ぐに2騎がシスティアに狙いを定めて槍を構えて突撃して来た。
「【泥の巨腕】」
泥の足場を作り出すのと同時に魔力を地面へと伸ばしていたシスティアは、巨大な泥の腕を使って向かって来る竜騎兵を掴み取った。
「トーマス!!」
「ぐあぁぁぁ!!」
ワイバーンごと掴み上げられた竜騎兵は、投げ飛ばされ下の軍勢の中へと叩き落とされた。
「くそ!よくもトーマスを!!」
「落ち着け、マイク!
奴はAランク冒険者の『泥のシスティア』だ。
片手間で相手に出来る相手では無い。
隊列を組め!水竜を相手にしているつもりで戦え!」
指揮官らしき竜騎兵が風魔法を使って仲間に指示を出した。
「ちっ、流石に対応が早いな。出来れば油断している内にもう2、3騎落としたかったんだけどね」
システィアは伸ばした泥の腕を使って蛇竜の様な形に変える。
「【泥蛇竜】」
身をくねらせ近くの竜騎兵に牙を向ける泥の竜を相手に、竜騎兵は見事な手綱捌きで散開し、タイミングを合わせてファイアブレスを浴びせる。
泥が乾燥し、土に変わってしまうとシスティアの操作から外れてしまう。
それを防ぐには、魔力を消費して水分を補充しなければならない。
竜騎兵の的確な対応に、舌打ちしながらシスティアは足場の泥を伸ばしながら走り出す。
今頃、ユウ達が騎兵部隊を狙った魔物の群れを相手取っているはず、そんな中で空から竜騎兵の襲撃を受けては、いくら実力者揃いのメンバーとは言え、致命傷になりかねない。
一騎たりとも此処を通す訳には行かないのだ。