軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

開戦⑥

私が創り出した巨大な氷の槍が高速で侵略軍の陣地へと飛ぶ。

この魔法は貫いた物を凍らせるなどの特殊な効果を持たない純粋な物理攻撃魔法だ。

陣地の防衛で使われる結界魔法は、主に魔法に対する防御であり、物理攻撃に対しては矢を止めるのがせいぜいだ。

この魔法の威力ならば一撃で結界を破壊する事が出来るだろう。

氷の槍が侵略軍の陣地へ到達すると、光の膜が揺らめいたが、次の瞬間ガラスが割れる様な音と共に結界が光の粉となって消える。

そして降り注ぐ数々の魔法。

炎の槍や岩の礫、風の刃が侵略軍の陣地に備蓄されている物資を焼き、天幕で休んでいた兵士を負傷させて行く。

私も再び魔法を使い、無数の氷柱を雨の様に降らせる。

それを確認したオーキスト殿下が合図を出すと、義勇軍と帝国軍が侵略軍に向けて進み始めた。

侵略軍は突然の魔法攻撃にまだ混乱しており、立て直すには少し時間が掛かる。

兵士の命令系統はめちゃくちゃで、魔物はパニックになって好き勝手に暴れ出している。

「私達も行くわよ」

魔法を撃ち終えた魔法使い達にそう言って、私も防壁から跳び降り、フリューゲルを片手に進撃する義勇軍の後を追うのだった。

◇◆☆◆◇

その時、フリードはまだ眠っていた。

布陣した軍の中心部、一際大きな天幕の中で精鋭に周囲を警戒させた上で休息を取っていたのだ。

シルビアは占領した都市に残してきたので、今は1人だ。

自身の采配を以てしても数日がかりでレクセリン砦を落とさない兵士達を無能と散々罵った後、戦地とは思えない豪華な夕食を食べ、わざわざ持ち込んだベッドに横になったのだ。

そんなフリードは明け方、空気を揺るがす轟音と、大地がひっくり返る様な衝撃に叩き起こされる事になる。

「な、なんだ!何が起こっている!」

無警戒に天幕から飛び出したフリードに空から鋭く尖った氷が降り注いだ。

「殿下ぁ!!」

天幕を警備していた騎士が咄嗟にフリードを突き飛ばした。

彼は、王城から逃してもらう時に連れて来た男の1人で、フリードにたいする忠誠心の高い数少ない騎士だ。

騎士はフリードを庇った事で背中から複数の氷柱で貫かれてしまう。

「ごはっ……で、殿……か……ご、ご無事で……」

騎士のお陰で難を逃れたフリードは立ち上がり、血を吐き膝を突く男に歩み寄ると、その頭を蹴り飛ばした。

「この無礼者がぁ!!この俺を突き飛ばすなど、許されると思っているのか!!」

「げぶ……で……ん……」

「貴様ら騎士が王太子である俺を身を挺して守るのは当然の事だろうが!身を盾にするなり、剣で打ち払うなり出来ないのか軟弱者め!恥を知れ!!」

騎士を罵って溜飲が下がったのか、フリードは少し冷静になり、自身の身代わりとなり、だんだんと冷たくなって行く騎士を捨て置き周囲を見渡した。

「ちっ!これはなんの騒ぎだ!誰か報告せよ!」

「で、殿下!ご報告致します!突如、強力な魔法で結界が破壊され、陣地への魔法攻撃を受けております!」

「何をやっているんだ貴様らは!結界担当の魔法使いは何処だ!処刑してやる!」

「い、今はそれどころでは有りません。物資に火が着き消火が追いついておらず、また負傷者が多く出ております。

また、帝国軍が此方に向かっているとの報告も……殿下、どうか撤退を!」

「ふざけるな!」

撤退を進言した兵士を殴り付け、フリードは叫ぶ。

「帝国軍を迎え討て!」

「お待ち下さい!負傷者の手当にも人が足りていません!とてもでは有りませんが迎え討つなど……」

「戦えない負傷者など放って置けば良いだろう!」

「なりません!その様な事をすれば士気が……」

「五月蝿い!

この俺の采配に意見するな!この軍の指揮官はこの俺だ!

命令に反するならば今この場でその首を叩き斬ってやるぞ!」

「ぐっ……ぎ、御意」

兵士は罵倒の言葉を飲み込んでフリードの命令を了承する。

絶望的な戦いに赴く事になると確信した男は、王国に残してきた妻と子供の顔を思い浮かべながら腰の剣を確かめ、前線へと走って行った。