軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

開戦⑤

ブラート王が来る。

その話を聞いた帝国軍の上層部達は僅かに動揺を見せた。

『雷神』と渾名されるブラート王の武名は、戦場で生きる軍人達にほど轟いている。

勿論、それで怖気付く様な事は無いが、張り詰めた緊張感が空気を満たす。

軍の情報士官が資料を見ながら状況を説明する。

「ブラート王の目的は不明だが、まず間違いなく侵略軍への援軍だと思われます」

「暴走したフリード王子を止めに来た可能性は?」

「絶対に無いとは言えませんが、可能性は低いでしょう。もしその様な目的なら事前に連絡が有って然るべきです。

事前通告無しに国境を越えた時点で協定違反は明らかでしょう」

「うむ、やはり最悪の事態を想定するべきだな。

ブラート王が率いる軍は敵の援軍と想定する。

それを踏まえて何か意見がある者は居るだろうか?」

オーキスト殿下の問い掛けに、数人の軍人が発言の許可を求めた。

オーキスト殿下が許可を出す。

「やはり、ブラート王との合流を許すのはリスクが高いと思われますな」

「然り、レクセリン砦を包囲している敵軍を先に撃破すべきと具申致します」

「防衛では無く撃って出るとすると魔物が厄介ですね」

「うむ……エリー軍団長。敵軍の魔物に関して何か意見はあるだろうか?」

「そうですわね。義勇軍に所属する多くは冒険者です。魔物との戦闘なら、専門家である彼等を頼るのが常道かと」

「役割を分けると言うことか」

「はい、魔物は義勇軍が、侵略軍は帝国軍、砦の防衛をレブリック辺境伯軍が担うのがよろしいのではないでしょうか」

私の進言を元にオーキスト殿下や参謀達が話し合う。

その上で決まった作戦は、全軍から選抜された魔法使いが広域魔法を撃ち込み、混乱の隙に義勇軍が魔物を、軍が兵を攻めると言う物だった。

その命を了解した各員はそれぞれ準備に動き始める。

決行は明日、朝日が昇るのと同時に、だ。

義勇軍に与えられた作戦室に主だった者達を集めた私は、作戦内容を伝えた。

「ようやく出番だな!」

「へっ!魔物相手ならこっちの物さ」

「魔物の素材はどうなるんだ?」

得意分野を任される事になった冒険者達の士気は上々ね。

普段、警備や護衛などを主としている傭兵団には別の指示を出しておく。

魔物と戦っている冒険者に、侵略軍の兵士が不意打ちしない様に牽制する役目だ。

魔物と兵士の板挟みになる危険な役目だが、こう言った中規模の集団戦は彼等の得意とする所だ。

その他、細かい指示を出した私は、最後に今日はお酒を控えて早めに休む様に言って、アリス達が待つ部屋に戻り明日に備える。

作戦決行当日、私は選抜された魔法使い達と共に城壁の上から少し離れた場所に布陣するハルドリア王国の侵略軍を見渡していた。

見張りは立っているが、この時間は気が緩んでいる筈だ。

私は集まった魔法使い達に行動内容を確認する。

「先ず、私が敵陣の対魔法防御結界を破るわ。

あなた達はその後、時間差を付けながら魔法を撃ち込んで頂戴。火属性持ちは備蓄された物資、その他の属性持ちは歩兵戦力を狙って。

火属性持ち以外は威力よりも攻撃範囲を意識して」

「そうなると一撃で戦闘不能とするのは難しいと思いますが?」

「いいのよ。この攻撃で敵兵を倒す必要は無いわ。

負傷させて戦力を削るだけで良いのよ。

相手は此方の領土に突っ込んでいるから、簡単に補給は出来ない。なら敵兵を殺すよりも負傷させて医薬品などの物資を消費させたり救護の為の人的リソースを割かせた方が良いわ」

「なるほど、了解しました」

指示を終えた私は魔力を練り上げ魔法を構築する。

狙いは敵陣を囲む結界。

戦争では自陣を守る為に結界を使うのが定石だ。

そしてその結界の強度はなかなかの物。

だが、私の魔法なら撃ち破る事が出来る筈だ。

「豪雪と氷塊 薄氷と魔槍 穿ち、撃ち抜き、抉れ

それは白き終焉を齎す者 我が名は 氷狼(フィンリル) 【 霜巨人の氷槍(ヨツンヘイム) 】」