軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

奮戦の日

「不味い、見つかった!」

「まってナナキ!アリスちゃん、防御魔法を!」

咄嗟に飛び出すナナキを追って広間に足を踏み入れながら、ルノアはアリスに指示を出す。

「で、でも……」

「早く!」

「み、水よ その水流を以て 遮断せよ

【 水壁(ウォーター・ウォール) 】」

アリスが水の壁を作り出し広間と通路の間を遮った。

アリスは身体強化や防御系の魔法を中心に習ってはいるが、それでもまだ魔法を習得してから半年も経ってはいない。

ましてや魔法を補助する杖なども無いのだ。

アリスの【水壁】は形は出来てはいるものの、魔力の込め方が甘く、生身でも突破出来てしまう程度の防御力しか無かった。

ルノアは男達がそれに気付く前に、と1番手前の男に組み付いているナナキの背後から魔法を放つ。

「撃ち抜け その風圧を以て粉砕せよ

【 風弾(エア・バレット) 】」

「ぐぁ!」

完全に詠唱した【風弾】は、前に野盗に使った短文詠唱とは違い、杖の無いルノアでも体格の良い男を数メートルの距離を吹き飛ばした。

男は頭を床に打ち付けて意識を失ったのか、動きを止める。

それを見た残りの3人がルノアを警戒した。

「あのガキ、魔導士だぞ」

「バカな!魔封じの枷を付けていなかったのか⁉︎」

「いや、確かに付けた筈……」

「うおぉぉお!!!」

動揺する男達に、ナナキが近くに有った燭台を振りかざして殴り掛かる。

「ぐっ!てめぇ!!」

男が咄嗟に腕を上げて燭台を受け止めるが、その腕からは鈍い音が響く。

しかし、男も荒ごとに慣れており、直ぐにナナキの体を蹴り飛ばす。

後方に倒れ込むナナキの影に隠れる様に迫っていたルノアがステップを踏む様に軽やかに接近する。

「っめんなぁ!!」

ナナキを蹴り飛ばしたのとは、別の男がルノアに向かって拳を振り抜く。

だが、ルノアはバクバクと轟音を鳴らす自分の心臓の音を聞きながら、何処か冷めた目で見ている意識が有ることを自覚していた。

恐怖と緊張でパニックになる自分。

男達の位置取りを確認し、迫る拳を避ける為、【スキル】を使う自分。

まるで2人の自分が同時に存在する様な不思議な感覚だった。

「【フェザー・ステップ】」

ルノアが使った【スキル】は自身の体重を一瞬軽くするだけの風属性の【スキル】だ。

男の拳に足を掛け、一息に跳躍したルノアは、中空で体を反転させ天井に着地する。

以前、訓練の時にエリーがミーシャへのお手本として見せていた立体的な体捌きの1つだ。

「荒野を走る疾風 荒ぶる風を束ねて剣を打つ【 風刃(エア・スラッシュ) 】」

「ぎゃあ!!」

男は咄嗟に転がり、頭上から叩き付けられる風の刃を躱そうとするが、ルノアの魔法は石の机を砕き、男の両足を深く切り付けた。

「女の方だ!魔法を使わせるな!」

男が近くに有った棒の様な物を、床に着地したルノアに振り下ろす。

「うぅ……」

避けようとするルノアだが、不意に目眩に襲われてタタラを踏む。

(ダメ……魔力が……)

「あぶねぇ!」

「きゃっ⁉︎」

反応の遅れたルノアだったが、背後から襟首を掴まれて強く引かれる。

入れ替わる様に前に出たナナキの手にも棒が握られていた。

どうやら部屋の端に積まれていた薪の様だ。

「おらぁあ!!」

「ぶぐっ⁉︎」

「おら!おら!孤児を舐めんじゃねぇぞ!」

ナナキは男の攻撃を懐に潜り込む様に避けると、手にした薪で男の顔を何度も何度も打ち据えた。

「ちっ!」

最後に残った男はナナキが取り落とした燭台に手を掛けると、それを大きく振り上げた。

ルノアは壁に掛けられていた布を引きちぎる様に手にすると、【風刃】で砕いた机の欠片を素早く包み込む。

「うわぁあ!!」

いざという時のために覚えて置きなさい、とミレイに教わった即席の打撃武器だ。

教わった時には、まさか役に立つ日が来るとは思わなかった。

無事帰れたらミレイにお礼を言おう。などと余計な事を考えながら、一方でルノアは男の顎を狙って冷静に武器を振るった。

「おごっ!」

仰向けに倒れた男をナナキと一緒に何度も打ち据え、男の意識が無くなった所でようやく安堵の息を吐いた。

「はぁ、はぁ、はぁ、や、やったのか?」

「は、はい……多分……」

息を整えながら視線をずらすと、水の壁が形を保てなくなり消え去る所だった。

水の向こうには少女に支えられながら肩で息をするアリスが見える。

「全く、騒がしいと思えば何だこの様は」

広間に聞こえた声に、ルノア達は一斉に顔を向ける。

そこには先程出て行った聖職者の男がいた。

ルノアとナナキはアリス達の前に立ち、聖職者の男と対峙する。

しかし、ルノアの魔力は既に尽き、ナナキの体力も限界に近かった。

「…………どうすれば」

「くそ……」

聖職者の男は呆れた様に溜息を吐き出す。

「はぁ、おいクソガキ共、死にたくなければ牢に戻、ぶがあぉ!」

「「⁉︎」」

聖職者の男は最後まで言い切る事は出来なかった。

何故ならその言葉を吐き出す筈の口が横から叩き付けられた拳に砕かれたからだ。

その拳の持ち主は肩口で切り揃えた金髪を不思議そうに揺らした。

「あれ?ルノアちゃんとアリスちゃんじゃないッスか?

こんな所で何してるんッスか?

子供はもう宿に戻って寝ないとダメッスよ。め!」