軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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花の祝祭日の学園行事が盛況のうちに幕を閉じ、ジェフリーへ多少なりとも罪滅ぼしになったと思いたい。

(対価はしっかりいただいたけれど!)

ギブアンドテイクだからこそ、ジェフリーは面倒な元婚約者候補に借りを作ったことにはならないはずだ。

あとはもう近づかない、関わらないが、アレクシアにできる最善だ――なんて呑気に考えていたのに、なぜかまたジェフリーに呼び止められ、王族専用サロンでお茶を飲む羽目になるのは完全に想定外だった。

なんで? を表情を繕いながらアレクシアが心の中で繰り返していると、来年度も花の祝祭日に同様の行事を開催したい、いいだろうか、そんな要望を、生徒会を代表して伝えられた。

律儀だ。アレクシアは対価をもらいアイディアを渡したのだから、すでに生徒会の行事だ。念のためだとしても、その場で確認してくれればよかった。

話に区切りがつき、退席をアレクシアが考えていると、そういえば、とふと思い出したように、側妃が今後ロシェット家へ干渉することはないと教えてくれた。

きっとこちらが本題だった。だからこそ場所を変える必要があったのだと、アレクシアは察した。

完全に憂いが晴れた。

これからは平凡な日々が待っている。そんな風に思っていた矢先、朝食の席で挨拶を交わしたサヴェリオがどことなく疲れた顔をしていた。

「お父様、昨夜は遅かったのですよね。無理されないでくださいね」

どうしても都合がつかない場合を除いて、ロシェット家では家族揃って食事をする。特にサヴェリオとレイモンドの中では、アレクシアとの食事は優先度が高く設定されていた。同席できない時には、事前に申告するのが暗黙の了解でもあった。

それでも王宮に出仕しているサヴェリオは、急遽帰宅が間に合わないことも当然ある。昨夜もそれで、帰宅できない旨の連絡と共に仕事が慌ただしかったのか、無念、とだけ書かれたメッセージが届いた。

アレクシアはもう幼い子どもではないのだから、事情を理解できる。けれど一緒に過ごす時間を大切にしているサヴェリオの気持ちは、しっかりと伝わっていた。

「大丈夫だよ、シア。昨日は臨時会議に招集されたんだ」

「何かあったのですか? 父上」

食べる手を止め、レイモンドが尋ねる。何か不測の事態が起きたのだろうかと、アレクシアも意識を向けた。

「そうだな……まだここだけの話にしてほしい。聖樹が新芽をつけたと、神殿から王宮へ報告が上がったんだ」

「新芽、ですか?」

驚きを滲ませ、レイモンドが確認する。聖樹の新芽はこの国に伝えられている、聖女誕生の前触れだ。

ゲーム内では語られていない。たぶん、とアレクシアは付け加える。適当に進めて、記憶にない可能性はゼロではなかった。

「ああ、そうだ。神からの祝福が降り注いだようだ」

「では、聖女様が誕生されるということですね」

「そうだな」

頷くサヴェリオを見て、アレクシアはぱっとヒロインであるナタリーの姿が浮かぶ。

ゲームのシナリオと同じならば聖女はナタリーだが、疑問が残る。

「お父様、聖女様が誕生されるのは聖樹の新芽でわかるとして、それが誰か、はどうやってわかるのですか?」

「それは私も疑問に思って尋ねてみたんだが」

言葉を切って、サヴェリオが軽く息を吐く。

「神殿に残された文献には、時が来れば神託がおり、聖女様は自ら神殿に足を運ばれるとのことだ」

は? 以外が浮かばない。

唖然としたのはアレクシアだけではないらしく、沈黙が落ちる。なんとも言えない空気が流れた。

「以前いらした聖女様も、自ら神殿に名乗り出たのでしょうか?」

疑問を素直にアレクシアは口にする。ある日突然、私が聖女だ! ってわかる力が与えられるのだろうかと想像してみるが、うまくいかない。

物語のイベントのように、大けがをした大切な人を助けたいという強い思いから覚醒ならなんとなく理解できる。けれどゲームのシナリオでもそんな描写はなかったはずで、だいたいヒロインがどうして聖女とされたのかアレクシアはわからなかった。

(ほんと役に立たない前世のゲーム知識!)

知っているのに、重要なところを知らないもどかしさがある。

「随分前のことで、当時を実際に知る者はいないが、神殿はそうであると考えているのだろうな」

前回聖女が誕生したのはかなり前で、神殿の関係者も文献や言い伝えでしか知らないらしい。

(控えめに言って、頭お花畑じゃない? 他力本願とか)

「そう、なんですね」

私は聖女よ! と、名乗り出る光景を思い浮かべて、うさんくささをまず感じる。利益を得られるとなれば、詐称する者が必ず出てくるはずだ。

「それ、偽者も現れるのではないですか?」

同じ懸念をレイモンドも抱いたようだ。

人が善だけでできているのなら、争いや犯罪などはない。

「神殿に、聖女だと証明できる聖遺物があるらしいが」

それもそうかとアレクシアは納得する。聖力を有する者は少なからずいるので、自称で聖女の称号が得られるのなら溢れ返りそうだ。

王族との婚姻も視野に入る身分を得られる。本来の役目もあるが、欲に目がくらんだ者はそこまで考えていない。

「それには、聖女様が自覚して足を運ばなければいけませんね」

「そうだな」

(私だったら絶対名乗り出ないけどな)

面倒くさい役割を押しつけられるだけだ。

自由気ままな暮らしが制限されるなど、最悪としか言いようがなかった。

「もう少し様子を見て新芽が増えていくのが確認できたら、正式に神殿が告知を出すはずだ」

聖女の力を判別できる水晶が、一般公開されるらしい。

関わらない、と決めてはいても、周囲が慌ただしくなりそうだ。

巻き込まれませんようにと、アレクシアは信じてもいない神に祈った。