軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

生態系の覇者 ⑦

「これが何なのか気にはなりますが、ハッキリしないものに触れて騒ぎを起こすわけにも行かないでしょう」

「そうね。基礎の補強は保留にした方が良さそうです」

「・・・目的が違うものね。分かった」

触らぬ神に祟り無し、だ。

ただでさえ度重なる魔獣の襲撃で行動計画に遅れが生じているのに、これ以上の厄介事は本気で勘弁して欲しい。

これがハリウッド映画なら、欲の皮が突っ張ったおバカさんが手柄や利益の独り占めを目論んで、ちょっかいを出して謎の存在を目覚めさせたりするところだけど、生憎とクレバーな私は余計なものに手を出したりしない。

そんなわけだから、謎の存在が有ったことだけは記憶の端っこに覚えておくけど、ここはサヨウナラだ。

私に絡んでくるんじゃないぞ。

どうにも何かのフラグが立った気がしてならないけど、フラグなんて無かった。良いね?

「・・・さーて。燃やしちゃうかな」

記憶に有る死骸の山のレイヤーに火を点ける。

こういうときに魔法の何が便利といえば、目視する必要が無いことだよね。

どこに何が有るかが明確にイメージ出来ていれば、壁1枚を隔てた死骸の山に着火するぐらいはヨユーヨユー。

火が点いてしまえば物理法則に導かれた熱量は上昇気流を生み出して煙突から煙を吐き出し始める。

枝葉の上に突きだした煙突の先っぽは地上で休憩を取っている新人さんたちからは目視できないだろうし、混乱を起こすことも無い。

「・・・行こっか」

「ようやく一段落ですかね」

「じゃあ、私たちもお昼を摂ってしまいましょう」

「・・・うん」

エレーナさんたちと一緒に焼き鳥の配給列へ並びに行く。

あの焼却炉をどうするのかといえば、放置だよ。

焼却炉を建てた場所の地図は無いし、地図が有ったところで道も無い森の中だしね。

目印となるものはナーガ川だけ。

だけど、道が無い森の中だからこそ、これほど場違いな人工物を見落とすことは、まず無い。

私たちはナーガ川に沿って移動するからね。

燃やしておいて、任務を果たした帰り道にもう一度焼いて魔石だけ回収すれば良い。

焼却炉の内部温度は800度ぐらいだっけな。

性能が良いと1000度ぐらいまで上がるんだっけ?

人間の葬儀に使う斎場の焼却炉も800度ぐらいだったはず。

最新型の炉は1200度ぐらいまで上がると聞いたような気がする。

あっちはガス炉でオーブンレンジみたいなものだけど、ご遺体というナマモノを焼いても数時間でご遺骨まで灰になる。

今はその数時間も待っていられる時間的余裕が無いから、燃やすだけ燃やして放置していく。

3~4日後に帰って来た頃には、生焼けだとしても乾燥はしてるんじゃないかな。

昼食後にはすぐに移動を再開したけど、日暮れまでの推定移動距離は行動計画上の距離に少し届かないぐらいだった。

みんなで交代に不寝番に就いて一夜を明かす。

私が初めて森の中で一夜を明かしたときは、松の実でお腹が満たされて不安を感じる余裕も無く気絶するように眠ったから平気だったんだけどな。

100人もの人間が傍に居ても、危険な魔獣が跋扈する未知の森では安心して眠れるものではなかった。

そんなわけで、経験の浅い私たちは少し寝不足気味。

一度寝たら起きないルナリアでさえ眠そうにしてるぐらいだからね。

「ヨシ。ちょっと私を乗せて飛んでみろ」

だというのに、起き抜けのまだ空が白み始めたばかりの早朝、私の顔を見たお母様のひとこと目がこれだった。

敵地での野営慣れしている百戦錬磨なお母様たちは、しっかりと睡眠が取れているらしい。

「・・・良いけど、すごく高いよ?」

「高いぐらい何だ」

「・・・分かった」

平然と、どころか、楽しそうにニヤリと笑って言うぐらいだから、お母様も空を飛んでみたかったっぽい。

「おい。親父殿が用意した地図を貸せ」

「こちらに」

お母様が手を差し出せば、数十年前にお爺様が描き残したという渡河地点周辺地図の写しが、エゼリアさんから手渡される。

地図と言っても目印になりそうなものとの位置関係を示した略図だけどね。

大自然の中で確たる目印になりそうなものといえば山や川ぐらいのもので、山は兎も角、川だって数十年も経てば流れの形状が変わっている可能性が有る。

てなわけで、航空偵察だよ。

私と身長が変わらないルナリアなら遠慮無く私に負ぶさってくるところだけど、お母様の方が色々と大きいからね。

お母様が背中から私を抱え上げる体勢になって、傍目に見ればお母様がビヨーンと伸びた猫を胸に抱いているような格好になる。

私は脇の下から両腕を回されて後ろから抱え上げられているわけだけど、まあ、今さらだよね。

「・・・んじゃ、行くよ」

「おう」

魔力の手でガッチリと私の体とお母様の体を固定すれば、お母様は胸元に私の頭は有るけど両手がフリーになる。

「おお。これは面白いな」

「・・・そ、そう」

私という重石をお腹の前にブラ下げても、足腰が強靱なお母様はフラつきもせず立っている。

お母様のお腹の前にブラ下げられている私は両足が宙に浮いてしまってるから落ち着かないけどね。

両手を放しても私が落っこちないのが面白いのは分かったけど、振り回して遊ぶのは止めて欲しい。