軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初めての出征 ⑰

逆に残しておくメリットは何か有る?

領民が安心感を得られるのなら、それはそれで「有り」だよね。

ムラ興し的に町のランドマークとしても「有り」なんだろうか。

例えば、大企業が大金を支払ってオリンピックの金メダル選手を従業員として雇ったりしていた理由は、話題作りや広告宣伝効果に期待してのことだと聞いたことが有ったな。

バルトロイさんでも「アレは何だ」と訊いてくるぐらいだから、ビジュアル的なインパクトは有るんだよね。

“獰猛くん”に広告宣伝効果は期待できるんだろうか。

いや。地方公共団体が税金で建てた意味不明なモニュメント程度の話題性は有るだろうし、意味不明具合でも負けてないよね。

「有り」と言えば「有り」なのか?

「・・・ふむ」

広告宣伝効果ねぇ・・・。

領地の宣伝をするの?

これは相談案件だな。

一旦、持って帰るとして、どうやってこの場を切り抜ければ良いんだろう。

名目上、私が新領地の領主だから、決定権は私が持ってることになってるんだよね。

みんな、そう思ってるから私を捕まえたんだろうし。

新領地の代官を務めてくれているマリッドさんでも出汁に使うかな。

たぶん、その形が一番自然で反発が小さいだろうし。

ヨシ、それで行こう。

「・・・う~ん。相談してからじゃないと決められないなぁ」

「フィオレ様がご領主様なのにですか!」

ほらね。当代の領主本人は最高位の意志決定者なわけだから、権力構造というものを理解している人ほど私との直接交渉をしたがることは見えてた。

逆説的に、権力構造の理屈を理解している人は、そういう素養を持っている有用な人とも言えるよね。

“獰猛くん”生存ルートのインパクトで見落としそうになったけど、エクラーダ系新領民を代表して意見を持ってきた男性を改めて観察する。

年齢的にはオジサンの部類だけど、壮年では有っても老境にまでは入っていないように見える。

具体的には40代後半の年齢かな。

身体的特徴は、絵に描いたようなエクラーダ人、かな。

金属的な色合いの銀髪もエクラーダ人の特徴だけど、微妙に垢にがかった色が入っている髪の人が多いのに、この人の銀髪は赤みは入っていないように見えるね。

長旅の後でも有るし、くたびれた感じには見えるけど知性的な目をしている。

代表者に押し上げられている辺りから考えても、この人、元は官吏か何かの仕事に就いていたんじゃないかな。

ふーん・・・? 元・官吏ねぇ。

私の予想が間違っていたとしても、知識層っぽい人だよね。

「・・・そうなんだけど、私はルナリア公爵閣下の側近でも有るから、領地のことは代官に任せっ放しなんだよ。だから、領地の詳しいことは代官の意見を訊いてからじゃないと軽々しく決められない」

「そ、そうでございますか・・・」

明確に伝えると男性は肩を落として目を伏せた。

この落胆は、どういう意味での落胆だろう?

“獰猛くん”の助命が明言されなかったことに対する落胆?

引き受けた仕事が上手く行かなかったことに対しての落胆?

それとも、私に対する落胆?

でも、まあ待て。

私はまだ、絶対に“獰猛くん”を壊すとも言ってないんだからね。

「・・・色々と緊急を要することが立て込んでるんだよ。ただ、あなたたちの要望は確かに聞いたから、あなたたちの意見も踏まえて判断するよ。今はそれで良い?」

「―――、!! ありがとうございます!」

私の補足にパッと顔を上げた男性が表情を明るくする。

「ご多忙の折、このように身勝手なお願いを、大変、申しわけございません! 何卒、民の願いをお聞き届けいただければ!」

「・・・じゃあ、答えが決まったら、あなたたたちにもしらせるようにするよ」

「なんと、暖かいご配慮を! 感謝の極みにございます!」

感動の面持ちで目を潤ませた男性が深く頭を下げる。

答えを知らせるって言っただけなのに、なんか、ちょっと大袈裟な人だな。

「・・・あなたの名前は?」

「は、はっ! グレーン、にございます!」

名前を訊かれるとは考えていなかったのか、男性に動揺が見られた。

おや? 「エ」じゃない?

私の予想によると、旧エクラーダ王国では名の方に「エ」が付くか、姓の方に「エ」が付くかのどちらかだ。

今までに聞いた名前では、名に「エ」が付く人よりも姓に「エ」が付く人の方が家格が高かった。

この人、やっぱり・・・。

「・・・グレーンさんね。家名は?」

「ただのグレーンにございます」

家名は無いと?

そんなわけ無いよね?

こっちの世界では、平民に至るまで家名―――、ファミリーネームは持っている。

そこにエクラーダのローカルルールが加われば、この人は身分を伏せているんじゃないかと疑われる。

要、調査だな。

「・・・そっか。じゃあ、グレーンさんに知らせるよにして貰うから、数日間ほど待っていてくれるかな」

「はっ! 御意に!」

私が追及しなかったことで、男性―――、グレーンさんは安堵の色を見せた。

何らかの事情「有り」っぽいなあ。