軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

未来 ⑱

「・・・あは。あはは。あはははははははははははははははは」

「フィオレ?」

大々的な堆肥の生産は、昨日、ようやくスタートを切れた農地開墾の第一歩。

お父様とお母様にも報告してお爺様たちやお婆様たちも期待してくれている。

食料生産量の向上はウォーレス領だけでなく、新領地や新領民たちの未来を決める重要な事業の一つだ。

ギリッと奥歯を噛みしめる。

私の大切な人たちの未来を粘菌生物ごときに奪われて堪るか!!

「・・・あんの野郎ッ!!」

「あっ! 待ちなさいよ!」

ブワッと魔力の手を生み出して飛び立とうとした私の背中にルナリアが飛び乗ってくる。

反射的にルナリアのお尻を固定すると同時に私の両足が大地を離れた。

「・・・ブッチ殺ォ―――――――スッ!!」

「あっ! フィオレ様!?」

私の怒声とイディアさんの焦った声を置き去りに急速浮上する。

前進せよ!! 蹂躙せよ!!

我らが未来はこの一戦にあり!!

数多の「足」が大地を掴んで後方へと蹴り出す!!

「イディア―――ッ!!」

「アンリカさん! みんな!」

空気を震わせる蹄の音と叫び声は突き抜ける風に掻き消されて殆ど聞き取れない。

そんなことよりもだ!!

あの粘菌野郎、どこ行った!?

「居た!! あそこ!!」

「・・・ 了解(ラジャー) !!」

ルナリアが指す先をギロッと睨む。

敵影視認! 2時の方向! 距離100! 俯角30度!

「ブルルルルアアアアアアアアアアアア――――――ッ!!」

畑に貼り付いている粘菌生物に向けて、魔力の手を思い切り振りかぶって振り下ろす!

ズンッ!! と地響きを立ててパーの形に畑が陥没する。

舞い上がった土埃に霞む巨大な手形を凝視する。

「 殺(や) った!?」

まあ、待ちたまえルナリアくん?

ナチュラルにフラグを立てるのはいただけないな。

フラグじゃないよね!?

5メートルぐらい陥没した手形の底にはスライムの痕跡を示すものは何も見当たらず、綺麗な縞々を見せている地層の断面から地下水らしきものが流れ出している。

スライムはどこ?

「・・・んん?」

ルナリアと私の頭が傾ぐ。

あそこに見えてるのって、地下水だよね?

粘菌でも潰れれば磨り潰された組織が痕跡を残すものじゃないの?

何も無いってことは無いよね?

念のため、1本の「手」を地中に潜らせてアクティブソナーを放ってみる。

「・・・居た! 生きてる!?」

「ええっ!? これで死なないの!?」

ダメージを与えられたのかは分からない。

ただ、私の魔力が浸透せず弾かれたものの存在は捉えた。

魔力の気配としては薄いものだけど、何か大きな存在が地表近くの地中をゆっくりと移動して行く。

移動する先は私たちから離れる方向だ。

ははぁん? ゴメンナサイも無しに食い逃げしようっての?

余計にムカつくなぁ。

地面の下に隠れてても見えてんだよ、粘菌野郎!!

「・・・逃がすかあああああああああああああっ!!」

広げた「手」を振りかぶって振り下ろす!

ズシン! と地面に大きな手形が刻まれるけど、まだ移動している!

もう1発、もう1発と「手」を振り下ろしても、反応の移動はまだ止まらない!

「・・・くっそおおおおおおおおっ!!」

魔力の手10本の内、「足」に4本使って、ルナリアを固定するのに1本、アクティブソナーに1本。

残り4本で乱打しているのに、まだ叩き潰せない。

確実に 命中(ヒット) しているのに、陥没した手形と断層の境界部分からジワッと染み出した粘菌は、断層を這い上がって顕わになった地層の隙間に染み込んでいく。

「ねえ。効いてないんじゃない?」

「・・・うぐっ!」

ルナリアのツッコミに反論する言葉が見つからない。

そうじゃないかなー、とは私も感じていたんだよね。

しかし。しかしだ!!

「・・・認めたくな―――い!!」

「いや。認めなさいよ」

「・・・ぐぎぎぎ!」

ド正論をブッ刺されて、言い返せなくて歯噛みする。

悔しいけど、このままじゃ被害が拡大するばかり。

農作物を全滅させただけじゃなく農地を穴だらけにするなんて、なんて奴だ!

これで仕留められずに逃亡を許したと有っては大惨事は免れないだろう。主に私が!!