軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

未来 ⑭

みんなで現場へ向かって3の鐘を待った。

安心と希望を得た新領民たちも朝から元気一杯で顔色も良く、鐘の音と共に昨日の続きに取り掛かる。

そして、北門でのモコココ作業が始まって数時間、ルナリアと私が「指」を突っ込んで小山を作っている隣の区画でアンリカさんが唸っていた。

「むむむむむっ! コレでどうだ!!」

「ズレてますよ。修正してください」

出来上がった土台の出来映えを確認しているノイエラさんにピシャリと言われて、アンリカさんが愕然としている。

20メートル以上離れている私たちの目にも、確かに上面が斜めになってるように見えるな。

「ええ~!! 判定が厳しくない!?」

「なに言ってるんですか。基礎が正確じゃないと建物全体が歪むじゃないですか」

アンリカさんが放った抗議の矢は、ノイエラさんに容赦なくペシッと叩き落とされた。

「そうだけど!」

「壊す方が楽なのは分かりますけど、簡易砦の築造や城壁の補修にも使う術式なんですから、ちゃんとやってください」

腰に手を当てて困った顔をするノエラさんに、アンリカさんは少し離れた区画をビシッと指し示す。

「ほらぁ! エゼリアだって、あんなじゃない!」

「北部なんてワイバーンが出る土地柄なのに、何やってるんですかね」

指された先を見たノイエラさんが呆れた顔で首を振り、ルナリアと私の視線も釣られてアンリカさんが指した先を見る。

数区画離れた場所ではエレーナさんに監督されているエゼリアさんが、鏡餅のような形状のオブジェがオプションで付いた土台を生み出してダメ出しされていた。

四角い土台を作ろうとしているはずなのに、何をどうイメージすればあんなオプションが付くのやら。

いや。鏡餅部分の他はちゃんと四角いから、イメージが弱い部分が内部の圧力に負けて中身が漏れるんだろうか?

お餅って焼くと中身の体積が膨らんで、硬くなった表面を突き破って中身が漏れるんだよね?

そうすると、あの土魔法はやっぱり概念的に固定した空間に詰め込んだ土に圧力を掛けて固めてるんだな。

空間の固定が弱いとエゼリアさんみたいに中身が漏れて、空間のイメージが正確じゃないとアンリカさんみたいに歪な形状になるわけだ。

ふむふむ。魔法自体のロジックは具体的にイメージ出来てきたぞ。

まあ、固定する空間を正確にイメージ出来るかと言えば、エゼリアさんたちが苦労しているみたいにハードルは高そうなんだけど。

詰め込む土の圧力を高めるのにもコツが必要そうだし、やっぱりこれは専門技術の領域なのかな。

勝ち誇った顔でアンリカさんが、ゆさっと大きな胸を張る。

「私のところはワイバーン出ないし!」

「代わりにグリフィンが出るでしょうが。ほら。怠けてないで早く修正してください」

得意な土魔法による鉄壁の防御を誇るノイエラさんが、ヒラヒラと手首を振ってアンリカさんの反撃を弾き返した。

「ぐぬぬぬぬぬっ!」

「ちゃんと出来ないと、フィオレ様が“蒼焔”をブッ放しに飛んで行きかねませんよ」

ノイエラさん。なぜ、そこで私の名前を?

歯噛みしていたアンリカさんがパッと表情を明るくする。

「あっ! それ助かるわよね!」

「王都ではフレイア様が防いでくれましたけど、“白焔”以上の威力かも知れないんですよ? 必要以上に城壁を吹き飛ばされたら、それを誰が直すことになるんですかね?」

「うぐっ! ・・・くっ」

ノイエラさんに言い負かされたアンリカさんは、悔しそうな顔をしつつも大人しく修正作業に集中し始めた。

アンリカさん。なぜ、そこで負けを認める?

作業が進むのは有り難いけど、「なまはげが来るぞ~」みたいな脅し文句に使われた私としては複雑な気分になるよね。

それ、風評被害じゃない?

「・・・私、信用ないなあ」

「でも、エゼリア叔母様やアンリカ叔母様が危なかったら思いっきり撃つでしょ?」

私の隣で「指」を突っ込んでいるルナリアが、ヤレヤレと首を振りながら私のボヤキにノータイムでツッコミを入れてきた。

「・・・当然じゃん」

想定がどんな敵なのか分かんないけど、更地どころか凹んで大渓谷になるまで撃ち込みまくって敵を滅ぼし尽くすよ!

ノータイムで断言したら呆れた顔をされた。

「ほらね」

「・・・あっ。・・・ぐぬぬ」

言わされた!

だって、そんなの撃つに決まってるじゃん!

内側からモコモコされて表面張力が耐えきれなくなった小山の頂点が、パラパラと崩れ落ちてくる。

危ないから肘でルナリアを突っついて数歩後ろへ下がる。

小山の高さは見上げるほどで、ちょっと登ってみたくなるんだけど、空気を含んでフカフカな斜面を踏むと足が膝まで沈み込んだところへ支えを失った土が崩落してくるから登れないんだよね。

下手をすると、土に足を取られているところに崩れ落ちてきた土が熨し掛かってきて生き埋めになる。

「ここは終了でーす!」

「「はーい!」」

小山の大きさを見て回っていた技師さんからストップが掛かって「指」を消す。

「もう直ぐお昼ですし、そろそろ休憩にしましょうか」

「・・・もうそんな時間か」

指し示されて空を見上げれば、もう太陽が中天に差し掛かっている。

もうすぐ正午を知らせる5の鐘が鳴るはずだ。

今日は理想的なペースで進められたと思うんだけどな。