軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

未来 ⑮

「・・・今、何ヶ所ぐらい?」

「ちょっと待ってくださいね。・・・えーっと、70ヶ所ぐらいですかね」

図面とペンを手にした技師さんが大雑把に数えた成果に、私たちのテンションが上がる。

「・・・おおっ! そんなに行ったんだ!」

「頑張ったものね!」

朝6時から昼の12時前まで何度か小休止を取っただけで、ひたすらモコモコしては移動してを繰り返してたからね。

昨日の遅れを今日中に取り戻せそうだ。

「この調子なら、余裕で予定数を達成出来ますよ」

「行けるところまで行くわよ!」

「・・・うん!」

グッと拳を握った技師さんの激励にルナリアが拳を突き上げた。

今日、ノルマを上回っておけば、明日はもっと余裕を持って作業できるからね。

何事もギリギリは良くない。

余裕が有れば何が起こっても対処できる。

ヤル気を高めている私たちの傍に有る区画では、相変わらずアンリカさんが唸っている。

「くぬぬぬぬぬぬっ!! どうだぁっ!!」

色気のない叫びを上げて肩で息をしているアンリカさんを放置して、ノイエラさんが台座の出来映えを確認しに掛かる。

正面から横から淡々と確認して回ったノイエラさんが大きく頷いた。

「今度は良いですね。一発合格です」

「ヨッシャアアアアアアッ!!」

全身を使ったガッツポーズで歓喜の雄叫びを上げるアンリカさんに、ノイエラさんが呆れた目を向ける。

「“紅蓮”は平気なのに、何で土術式だとこんなに苦労するんですかね?」

「ぜんぜん違うじゃない!」

アンリカさんの抗議にノイエラさんは首を傾げる。

「ええ~? 押し込むのは同じじゃないですか」

「それはそうだけど! ぜんぜん違うじゃない!」

理解を得られなかったアンリカさんが両の拳を握って力説しているけど、ノイエラさんは涼しい顔で受け流す。

「ハイハイ。もうお昼ですし休憩にしましょう」

「くっ・・・! これだから上手い子は!」

悔しそうなアンリカさんの背中をノイエラさんが押していく。

私たちも一緒になって向かう先にある土台の上では、ディディエさんたちがシートを広げてお弁当の準備をしている。

ディディエさんたちもバックアップ要員の仕事が板に付いてきたみたいだね。

胸を張って仕事を出来るポジションが有るのは確たる居場所が有るってことだ。

それはディディエさんたちにとって良いことで、バックアップを受ける私たちにとっても非常に助かることだ。

ディディエさんたちの邪魔にならない範囲を見極めつつも、アンリカさんたちは相変わらず戯れている。

アンリカさんと同じようにエレーナさんに背中を押されてきたエゼリアさんに、アンリカさんが縋るように抱き付いた。

「エゼリア~! ノイエラに軽くあしらわれた~!」

「ハイハイ。分かった分かった」

雑な感じでアンリカさんの頭を撫でたエゼリアさんも、ちょっと疲れた顔をしている。

「・・・お疲れさま。2人とも」

「あの術式、難しそうよね!」

私たちの労いにエゼリアさんたちが苦笑する。

「昔、フレイア様―――、お姉様に散々やらされたんですけどねぇ」

「あはは。使っていないと忘れるわよねぇ」

お復習いを監督していたエレーナさんとノイエラさんも表情を緩める。

「土術式の精度は体感的な部分が大きいですからね」

「大事なときに上手く出来ない、なんてことにならないように、定期的に訓練は続けてくださいね」

「そうするわ」

エレーナさんたちが厳しく指導していたのは、嫁ぎ先で苦労しないようにと心配してのことだったんだろうね。

エゼリアさんたちも表情を緩めて頷いて返している。

会話の中にコツに関するヒントが含まれているから、護衛任務の傍ら姉貴分たちの訓練を見守っていたピーシーズも真剣な表情で頷いている。

そこで気付いた。

ん? なんか人数が少なくない?

土台に集まっている人数が勘違いじゃないぐらいに少ない。

居るはずの人たちを数え上げてみる。

「・・・そう言えば、イディアさんとレヴィアさんとマーシュさんは?」

おや? みんな気付いてなかったのか。

私の指摘に目を丸くしたみんなが周囲を見回し始める。

「さっきまで居たのに、居ないわね」

「あの子たち、どこへ行ったのかしら」

「イディアたちがサボるなんてことは無いと思いますけど」

少し離れた場所で作業していたイディアさんは兎も角、レヴィアさんたちは常に気配が無いとはいえ、ピーシーズの視界に入っていたはずだ。

なのに、ピーシーズも見失ったのか。

隠密性が高すぎる人たちも困りものだなあ。

イディアさんたちの姿を探していたエレーナさんが北門を指した。

「あ。あれってドネルク閣下じゃないですか?」

「あら? もう到着されたのね」

エゼリアさんが目を丸くする。

ドネルクさんが今日明日ぐらいに到着するっぽいことは、私たちも聞いてたね。

「うりうり。行って来なさいよ」

「わ、分かってるわよ」

ニンマリと笑って肘で突っつくアンリカさんに、薄く頬を染めたエゼリアさんが澄まし顔を作る。