軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

未来 ②

日本のプレハブ式仮設住宅をイメージするから認識がズレるわけで、地球標準で言っても、難民キャンプなんてものはテントか廃材利用のバラックが普通だったものね。

それを思えば、この仮設住宅はよく出来てると言えるのか。

ミセラさんも私たちと同じように共同炊事場とやらの方へと目を向けているけど、新しい生活を始めた新領民たちの姿を見る目は優しいものだった。

「まだ家財道具は何もかも足りていないでしょうが、これからゆっくりと揃えていけば良いでしょう」

「・・・そうだね」

きっと今はベッドも椅子もテーブルもタンスも何も無いだろう。

でも、安心して眠れる場所は出来た。

彼らにとって、ここがスタートラインで、ここから安定した日常が始まる。

彼らの日常を守るのは私たちの仕事だ。

もう誰にも奪わせない。

どんな手を使ってでも必ず守り通してみせる。

決意を固めていると新領民たちの笑い声が私の耳に届く。

今日の頑張りが具体的に見えた気がして安堵に胸を撫で下ろす。

ルナリアも同じ気持ちだったみたいで、優しい顔で共同炊事場の人集りを見つめている。

「さて。領主館へ戻りましょうか。いくらもしない内に陽が暮れちゃいますよ」

「そうね! 帰るわよ!」

「・・・うん」

鞍によじ登って空を見上げれば頭上は朱く、西の空に夕陽直前まで傾いた太陽が有る。

推定時刻、16時30分ってところだろうか。

今日はちょっと遅めまで頑張ったよね。

17時頃には日没だから早く帰らないと。

ルナリアと私の馬を先頭に、領主館への帰還の途に就く。

馬列は北門前へ出て、通行人や荷馬車の姿が減りつつ有る目抜き通りを南門へ向けて下る。

北門から500メートル近くの範囲は城壁の移動で新たに城壁内の敷地として取り込まれた農地と原野だから、仮設住宅が建った区画を抜けるとしばらくは建物が建っていない広大な平地が続く。

屋外活動が出来る昼間は一部に残った農地で農作業に従事する人たちの姿が散見できるんだけど、この時間になれば人の姿は―――、あれ? あの人たち、何してるんだろう?

目抜き通りから200メートルほど奥まった辺り。

ルナリアと私が穴ぼこを埋めた城壁跡の場所に10―――、20人ぐらいの人影が有る。

夕闇が迫る空の下、練習中の身体強化魔法まで駆使して目を凝らす。

んん~? あれって―――。

「・・・ちょっと待って! 止まって!」

「ど、どうしたの!?」

急に大きな声で停止命令を出したものだから、馬を並べていたルナリアが驚いている。

「・・・うん。ちょっと。―――ディディエさん、ダーナさん、付いて来て!」

「「は、はいっ!」」

手綱を引いて馬の顔を人集りの方向へ向けると、指名を受けたディディエさんたちも慌てて馬首を巡らせる。

「ルナリア様。私たちも行きましょう」

「そうね! みんな、行くわよ!」

「「「「「はっ!」」」」」

ミセラさんとルナリアの声にピーシーズが答えたのが、駆け始めた馬の背に乗る私の耳にも聞こえた。

みんなで付いてくるつもりらしい。

暴走族じゃないけど12騎もの馬が一斉に駆ければ、スドドドド! と大きな音が平地に響き渡る。

日暮れ近くの薄暗い空の下を馬群が迫ってくれば誰だって驚くよね。

突進してくる私の姿に気付いた人集りがわらわらと散って馬群の通り道を開けようとする。

「・・・こんばんは! 逃げなくて良いよ!」

かなり驚かせちゃったみたいだね。

手綱を引いて人集りの手前で速度を落とし、直前で馬の脚を止める。

「うえっ? フィオレ様!?」

「フィオレ様だって?」

馬の首を避けてヒョコッと覗き込めば、農民スタイルの男性たちが目を丸くする。

ああ。馬が迫ってくると驚いていただけで、私の姿は見えてなかったのかも。

体の小さな私だと馬の首にほとんど姿が隠れちゃうし、薄暗いから視認し辛くて当然か。

「・・・ごめんね! 驚かせて!」

「いえいえいえ! お気になさらず!」

安心した様子の男性たちが首を振る。

大人しくしててね、と馬の首をポンポンして鞍から下りる。

「・・・これ、何してたの?」

「土を見ていたんですよ」

顔を見合わせた男性たちが困り顔で足元の地面へと視線を落とす。

やっぱりか。

そんな風に見えたから、何か問題が有ったんじゃないかと見に来たんだよ。

「・・・話を聞かせて貰って良い?」

「もちろんです」

「構やしませんとも」

私の申し出に、目を丸くしていた男性たちが破顔して頷く。

良かった。問題が起こったなら、伝言ゲームにせず現場の当事者から直接聞くに限るからね。

「・・・ここって私たちが城壁跡の穴を埋め戻した場所だよね?」

「ええ。諦めていた畑をフィオレ様が残して下さって」

オジサンの一人が嬉しそうに目を細める。

そっか。この辺りの畑って、農家の人たちが収入を増やそうとリスクを承知で城壁外に作っていた畑だったね。