軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

開眼 ㊺

「・・・これから王国を挙げて始まる事業なんだけどね。他領に一歩、先んじられるよ」

「それは本当ですか!?」

勢い込む騎士様に頷いて返す。

心配顔になったのはジアンさんだ。

ジアンさんたちの過去を知らないエターナさんも話に付いてこられていないだろうけど、エターナさんは余計なところに首を突っ込まない賢さが有るし、もっと深いところまで知ってる。

「フィオレ様。よろしいので?」

「・・・大丈夫だよ」

ジアンさんに深く頷いてみせる。

「国を挙げて」ということは、王家あるいは王宮も絡む案件だからね。

私がどこまで話すつもりかが分からなければジアンさんだって心配顔にもなるだろう。

でも、だからこそ関係が緊密なファーレンガルト家なんだよ。

「・・・ミリア叔母様もアレイオス叔父様も知ってることだから」

「なるほど。ミリア様でしたら上手く情報を扱われることでしょう」

ミリア叔母様の名前でジアンさんが安堵を見せた。

アレース・アスクレー兄弟がジアンさんに懐いているということは、今でもミリア叔母様との確たる信頼関係が有るのだろう。

泣く子も黙るウォーレス家と王宮の橋渡しをしてくれているのも、ミリア叔母様とアレイオス叔父様だからね。

私自身のことでもミリア叔母様たちには色々とお世話になったし、今後のウォーレス領が防諜に力を入れなきゃいけない以上、その道の専門家で有るらしいファーレンガルト家との関係は、さらにガッツリと深めておきたい。

「・・・バンダースナッチの安全な獲り方はウォーレス領でも最新の情報だからね。持ち帰ればアレイオス叔父様からも褒められると思うよ」

「安全な獲り方ですか!?」

「是非とも、ご教授いただきたく!!」

前のめりになる騎士様たちに頷いて返す。

バンダースナッチの獲り方ごときでファーレンガルト家に恩を売れるなら安いもんだよ。

この人たちの窓口はジアンさんに―――、いや。違うな。

ここは―――。

「・・・エターナさん。明日から、この人たちも参加するから」

「はっ!」

声を掛けると、悪ノリしていなければキリッとした美人に見えるエターナさんが一歩踏み出す。

「・・・紹介しておくね。元・エクラーダ王国騎士で、今は私の側近の一人を務めてくれているエターナさんだよ」

「おお。やはりエクラーダ王国の」

ファーレンガルトの騎士様たちの間から響めきが上がる。

私の出自に関する情報をカレリーヌ様から貰って持ち帰ったのがミリア叔母様なんだから、騎士様たちも私の出自は聞いているのだろう。

エターナさんの見た目はエクラーダ人なのにウォーレス領軍の甲冑を身に付けてるから、エターナさんの立場がどういうものなのか判断に困ってたんだろうね。

踵を打ち合わせたエターナさんがファーレンガルトの騎士様たちに向け、ガツンと胸に右拳を当てるリテルダニア王国式の敬礼を取る。

「フィオレ様にお仕えさせていただいております、エターナ・トラヴァスです。お見知り置きを。私の同僚である元・エクラーダ騎士たちがアスクレー様の側近に就くと聞いておりますので、後ほど紹介いたします」

「えっ? そうなの?」

そうだよ?

突然、自分の名前が出て興味を持ったみたいだね。

母親が井戸端会議に突入して待たされてる子供みたいに不満そうな顔をしてたけど、「待て」を食らっているアスクレーくんは私と同レベルで渦中の人なんだからね?

アスクレーくんにも分かっておいて貰わないと困る。

「・・・みんな今はピーシス領の領民なんです。エクラーダ剣術って、防御にめちゃくちゃ優れてるんですよ。だから、みんながお兄様を守ってくれます」

「ふぅん。そうなんだね」

お? アスクレーくんにとってはもの凄く有り難い人たちになると思うんだけど、そんな不貞腐れた態度で良いのかな?

でもまあ、アスクレーくんはこれから第一歩を踏み出すんだから、長い目で見てあげよう。

今すぐには理解できなくても、そのうち分かるようになってくれるだろう。

ここで叱って引き籠もりを再発されても困るから助っ人を頼むか。

「・・・ビシバシと魔獣を倒せるようになれば、色んな魔獣を見に行けますよ? ね。ジアンさん」

「ええ。そうですね」

面白そうに表情を緩めたジアンさんがしっかりと乗ってくれた。

私の言葉では信用が足りなくても、信頼関係の有るジアンさんの言葉なら信じられるんじゃない?

「ほああああっ!! やる!! ジアン! 僕に剣術を教えてくれ!」

チョロい。

スパルタ鬼教官の懐に飛び込んだことに気付いていないんだろうか?

まあ良いや。アスクレーくんがヤル気になっている内に外堀を埋め尽くしておこうかな。

「・・・槍ならマルキオお爺様が教えてくれますよ」

「そうか! お爺様は槍の名手だったね!」

耳元で囁けば、謎の万能感でハイになっているらしいアスクレーくんは深みに嵌まっていく。

もう一声、行ってみようか。

「・・・魔法術式はお母様や私が教えますから、頑張ってください」

「頑張るよ!」

ヨシ。言質は取ったよ。

正気に戻っても、もう逃がさないからね?

インドア派なアスクレーくんはシェリアお婆様の授業は自分からお願いして受けているみたいなんだけど、運動となると秒で撤退して部屋での籠城戦を強行すると聞いている。

外孫とはいえ直孫のアスクレーくんをマルキオお爺様が可愛がって居ないわけがないし、お母様も妹の息子たちを可愛がっていることは聞いている。

お二人は絶対に断らないとの確信が私には有る。