軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

コーニッツ・ムーア制圧戦 ⑦

何が悪かった? 研磨剤が散らされてたよね。

何が足りなかった? 風の圧縮?

でも、表面を滑っていたよね? じゃあ、研磨剤を増やせば? 摩擦係数は上がると思うけど。

なんで爆発した? 赤熱してたよね。

それって摩擦係数が高すぎた? いや、土埃か。

土埃で粉塵爆発? 水蒸気爆発? いやいや、粉塵爆発は発生条件が限られているはずだけど。

火花を抑えれば? どうやって火花を抑える?

研磨剤を減らす? でも、摩擦係数が下がっても斬れる?

そもそも、火花が散る必要ってある? それって、金属を斬るイメージってだけだよね。

風ジェットカッターは、もともと工作技術のウォータージェットをイメージしたものだ。

ウォータージェットってそういうものじゃないよね? 加熱しないように水なんだから。

水。・・・水か? 風の代わりに水を使えば研磨剤の粘度が上がって摩擦係数を上げられないかな?

でも、今みたいに水が無い場所で大量の水を生み出して使う方法よりも、試してみたい方法がある。

お師様の顔を見上げる。

難しい顔で甲冑を取り囲んでいるハインズ様たちの様子を見ていたお師様が、私の視線に気づいた。

「どうした?」

「・・・もう一回、やってみて良い?」

面白いものを見るように、お師様が口角を引き上げる。

「構わんとも」

「ええっ! まだやるの!?」

ルナリアが上げた声に、マルキオ様が私を見た。

「・・・手伝って」

「わたし?」

「・・・うん」

きょとんとしたルナリアに、深く頷く。

「実験を再開する! 散れ、散れ!」

立ち上がったお師様の一喝で、実験対象の木杭の周囲から騎士様たちが追い散らされた。

わらわらと。

ハインズ様たちも。

前領主様たちで、偉い人なんだよね?

「で、どうすればいいの?」

「・・・ちょっと待って」

もう一度、カッターを発動し、地面に押し付けて風に研磨剤を混ぜる。

いつもよりも、研磨剤は少な目。

平たい円盤状ではなく、カッターを上向きのバケツのような器状に成型する。

「・・・ルナリア。ここに水を出してもらって良い?」

「ここって、この中に?」

「・・・うん」

何か始めたぞ、と、ハインズ様や騎士様たちが、ガヤガヤやっている。

ハロルド様とお師様は、黙って見守る体勢。

ん? マルキオ様は何か深刻そうな表情をしているね。

「どのぐらい出せばいいの?」

「・・・コップ1杯―――、いや、2杯ぐらいで」

「分かったわ」

ルナリアが、水魔法の呪文を詠唱して、宙空に小さな水の玉を発生させた。

どうやら、ルナリアは水が生まれるイメージをするのが、まだ難しいみたいだね。

水蒸気が凝結して水になる様子を、実験して具体的に見せてあげたら上達するかな?

じわっと虚無から湧き出すように生じた水球は、徐々に大きく成長し、ソフトボール大になった。

「・・・そのぐらいで」

「入れるわよ」

「・・・お願い」

風に水が弾き飛ばされてしまわないように、雑巾の上にポトリと水が落ちてくるイメージで、カッターに水を吸収する。

少しだけ茶色掛かった白濁色だった風の刃が茶色に色を変えた。

「・・・ありがと。危ないから離れて」

「うん!」

遠心力かな? 水分を含んだ研磨剤が重くなったせいか、風が解けようとする力が強い。

カッターが解けてしまわないように、内側に寄り集まるイメージで風の向きを向けて、遠心力を相殺する。

速度と遠心力のバランスを取りながら、魔力を押し込んで風を加速する。

もっとだ! もっと、もっと! もっと、もっと、もっと!

できる! キミならできる! 諦めるな!

どこか遠くの宇宙のプロテニス選手みたいになってきたけど、もっとだ!

これ、ヤバいなあ。このカッターの刃に触れたら、腕でも脚でも一瞬で吹き飛ぶんじゃないかな。

未使用の甲冑の前に立った私は、大きく腕を振るった。

シュウウウウウウウ! と、いつもよりも低い擦過音を立てたカッターが、金属の表面に食らいついた。

「・・・ふひっ」

変な声がでた。

イケる! イケるぞ! 接触面も、さっきより赤熱していない。

魔力消費も、それほど酷くない。

甲冑の横っ腹に食い込んだ風の刃が、ぐいぐいと食い進む。

やっぱり硬い金属だと斬るのに時間が掛かるなあ。

これ、実戦じゃ使えないかも。

だって、のんびり斬り終わるまで、斬られている敵が待ってくれるわけが無いもんね。

ユニバ――――――ス!!

シュカアアアン! と、金属っぽい擦過音を残して、甲冑が上下半分に切断された。

ドスン、と、重い音を立てて、甲冑の鳩尾から上が地面に落ちる。

斬り終わるのに、所要時間は体感で1分———、いや、2分ぐらいかな。

ブレーキが掛かるイメージで術式を解除されたカッターは、湿った砂と土の粒子を撒き散らして消滅する。

「やったわ! フィオレ!」

「・・・ああ、うん」

首っ玉に飛びついてきたルナリアを賢者タイムの私は抱き止めた。

うおおおお!! と、万雷の拍手でオーディエンスが盛り上がっている。

喝采に応えてペコリと頭を下げたものの、私の中では納得が行っていない。

今のままじゃ使えないよねえ。

関節を狙うか? 金属甲冑の関節部は下に着ている鎖帷子か何かだったと思うから、もっと簡単に斬れそうな気がする。

まだまだ改善する余地があるなあ。