軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迫る影 ⑬

「エレーナさんとノイエラさんにも要請が行っていたようですし、そうなるかと」

「・・・そっちが優先だな。じゃあ、採掘場はどうしよっか」

大規模で危険だった城壁移動と違って、住居建設は動員されている領民や難民と一緒になっての作業になるだろう。

つまり、不特定多数との距離が近くて護衛の必要性が高い。

そうなると、ピーシーズやミセラさんたちを傍に置いておく必要が有って別行動の任務は頼み辛い。

今日も治療を終えて冷静になったときにヒヤッとしたもんね。

群衆の真っただ中へ1人で突っ込んで行って危険性を認識した今日の明日で、護衛の必要性を軽視するほど私もバカじゃない。

しかも、明日は初めての回収と出荷の作業になる人がいる。

万が一にも事故が起こった際の責任を、猟師さんたちやエターナさんや新人さんたちに背負わせることなんて出来ない。

そういった責任は、為政者側の私たちが背負うものだし。

慣れている人たちの手が空いているなら引率を頼むことが出来るけど、今はあっちにもこっちにも手が取られている状況だから頼めない。

本気でどうしたものかと頭を悩ませ始めたら、ミセラさんという名前の救いの神が先手を打ってくれてたらしい。

「ジアンさんに伝令を出してありますので、お任せになっても良いのでは?」

「・・・だ、大丈夫かな」

つい、口を突いて本音が出る。

何の心配かと言えば、ジアンさんに初心者たちが付いて行けるのかという部分だ。

心が折れて苦手意識を持ってしまうと、有望な人材を活かしきれなくならないだろうか。

ジアンさんなら実力にも管理能力にも指導力にも不足はないけど、初心者にスパルタはキツいんじゃないかな、という私の思考はミセラさんに読まれていたようで、ミセラさんはフフッと笑う。

「ジアンさんの訓練は厳しいですが、ある程度の下地の有無で手加減ぐらいはしますよ」

「・・・そ、そっか。じゃあ、採掘場は任せようかな」

助かるよ。助かるんだけど、私の思考回路ってそんなに読みやすいんだろうか?

釈然としないものを感じてムムムと心の中で唸っていたら、立て続けに起こる出来事の記憶に埋もれていた緊急タスクをマーシュさんが発掘してくれた。

「それよりも、農作物の処理を済ませておかないと手が回らなくなるのでは?」

「・・・ハッ! そうだった!」

ヤバイ。

サッサと処理しないと折角の 農作物(かねづる) を処分されちゃう。

いくら気温が低い時期で冷蔵倉庫に保管してあっても、傷みが進んで腐敗を始めている生鮮食品は足が早いものだ。

ダメにしたら悔いても悔いきれないし、食料を無駄にするなんて私の 信条(ポリシー) に反する。

モノに出来なかったとなれば王都で散財した費用の回収もできないし、余暇が少ない中で買い集めに走ってくれたクラリカさんやメイリスさんに申し訳ない。

出来ることなら、クラリカさんたちが見つけてきたから産業が興せたんだ、という成果を作ってあげたい。

そうやって成果を残して褒められることは、クラリカさんたちだけでなく、今後、王都に駐留する他のメンバーのモチベーションにも繋がる。

数年後、数十年後の先を見据えるなら、マーケティングの継続は重要な仕事になるはずだ。

「食料倉庫の方は私たちが」

マーシュさんの申し出にレヴィアさんが頷き、お母様からの命令を受けているミセラさんも頷く。

この3人が打ち合わせている姿を見るのは珍しいかも。

いつもはアイコンタクトでサッと動いて、どうやって意思疎通しているのか分かんないからね。

これで終わりかと思えば、今度はエターナさんがエイラさんに目を向けた。

「エイラ。元気が有るなら、どの程度できるか見てあげます」

「ぜひ! お願いします!」

早速、力量の把握か。エターナさんも現場主義の騎士様だけあって動き出すのが早い。

目を輝かせたエイラさんの返事に、表情を柔らかくしたエターナさんが頷き返す。

「では、食事が終わったら訓練場へ出て来なさい」

「はいっ! ・・・あの。訓練場とは?」

エターナさんはエイラさんの食事が終わるのを待たずに訓練場へ戻るようだ。

たぶん、難民たちの様子も気になるんだろうね。

勢い込んで返事をしたエイラさんが、一転、眉尻を下げる。

「荷馬車を下りた場所です」

エターナさんの返事にエイラさんはパッと表情を明るくしたけど、大丈夫かな・・・。

全景が正方形をした領主館は、四面のどの面から見ても似たような構造で、慣れるまでは道に迷いやすい。

まあ、間違った出入口から館外へ出ても、訓練場は領主館の敷地内で建物の隣だから、グルッと建物の外を1周すれば間違いなく訓練場に出るんだけどね。

エイラさんは私の心配に気付いて居ないのだろうけど、面倒見の良いミセラさんが先回りして助け船を出す。

「食事が済んだら一緒に行きましょう。ついでに装備品も見てあげます」

「お願いします!」

エイラさんが元気よくミセラさんに頭を下げる。

何かアイシアちゃんと波長が合いそうだなあ。

エイラさんたちの様子を黙って見守っていたエバンさんが深く腰を折る。

「済まない。トラヴァス卿。それと―――」

「フィオレ様のお側に仕えさせていただいております、ミセラ・ウィートと申します」

エバンさんが言い淀んだ理由を察したミセラさんが自ら名乗る。

エターナさんはエバンさんに首を振って返す。

「エイラは私の部下になるのですから構いません。あなたの今の仕事は体力の回復ですから、フィオレ様の治療が無駄にならないように全力で努めてください」

「そうさせて貰おう。ミセラ嬢も恩に着る」

「お気になさらず」

ミセラさんは本当に大人だよね。