軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迫る影 ⑫

「ミセラ。後は任せるぞ」

「はっ。承りました」

ミセラさんに一声掛けて私たちの頭にポンポンと手を置いたお母様も、お父様を追って背中を向けた。

エバンさんの件は私も今はミセラさんにお任せってことで良さそうだね。

エバンさんにはエウリさんたちに合流しろってお父様からの直接命令が出ていたから、旧知のエウリさんたちが上手くウォーレス領に馴染ませてくれるだろう。

エイラさんの方はお母様から命令が出ていたから、私もエターナさんに丸投げだな。

ただし、仕事を増やしたのは私なんだから、礼は尽くしておくべきだろう。

「・・・ミセラさん。手を掛けちゃけどお願いね」

「お任せください」

声を掛ければ、ミセラさんはニコリと笑い返してくれる。

続いてエターナさんへと向き直る。

「・・・エターナさん。エイラさんは預けるよ」

「はっ。出来れば明朝からでも採掘場へ連れて行きたいのですが、よろしいでしょうか」

「・・・ふむ?」

早速だな。

エターナさん自身もまだ採掘場へ通いたいのだろうし、止める理由は無いな。

採掘場での勝手は把握しただろうし、順応性の高い猟師さんたちや、色々な人たちを迎え入れてきた採掘場の兵士さんたちなら上手くやってくれるだろう。

ただ、気になるのはエイラさんの身なりか。

出荷作業と回収作業は戦闘をしに行くわけじゃないし、万一に備えて防具を身に付けていれば問題ないとは思うんだけどね。

ルナリアや私なんていつも乗馬服で、防具なんて身に付けさせて貰ったことも無いし。

他の新人さんたちが防具を着けている手前、平均値に近付けておいた方が良いだろう。

性根を入れ替えた新人さんたちが、みみっちいイジメをするとは思わないけどね。

団結心を養っている状況で異物感を漂わせていることは、エイラさんにとっても新人さんたちにとっても、マイナスは有ってもプラスは無いはずだ。

見た目の異物感を減らすことにも意味は有ると思う。

「ミセラさん。衣服や装備の準備って出来そう?」

「訓練用の革鎧や剣であれば問題なく」

打てば響くミセラさんから即座に答えが返ってくる。

あ。そうだ。

「・・・それって、どのぐらいの数が揃っていそうなもの?」

「100や200で有れば、常に備蓄が有るはずですが」

ほほう。そうなのか。

訓練用? いや。有事の領民動員に備えてかな。

戦況によっては全領民が戦闘要員として動員されるウォーレス領なら、防具類も有事の備蓄が有るはずだ。

「・・・子供たちも含めて、騎士志望者と領軍勤務希望者がそれなりに居そうなんだよね。騎士の選抜試験や領軍の募集は新領地と併せて行うつもりなんだけど、それまでも採掘場での強化訓練は進めて置きたいんだよ」

私の思惑を伝えると、何度か小さく頷いた上でミセラさんは首を傾げた。

「武器防具の貸し出しですね。思惑は理解しましたが、恐らくですが、ルナリア様とフィオレ様には工兵部隊から要請が入るのでは?」

「・・・あっ。土魔法か」

人材育成に手を割く余裕が有るの? との意味を込めたのであろうミセラさんの指摘に思い出さされる。

ただでさえ城壁移動の後始末とカリーク公王国の侵攻に備えて大忙しなのに、さらに緊急性が高い案件が割り込んできたものだから、工兵部隊はてんてこ舞いのはずだ。

城壁移動でルナリアと私が戦力に数えられると判明した以上、きっと支援要請は来るだろう。

もちろん手伝うつもりでは居たけど、緊急性で言えば明らかに建設作業の方が上だ。

効率で考えれば私たちに求められるのは、資材供給や大雑把でも許される工程じゃないかな。

短期間に大量供給する場合、規格化して工程ごとに分業するのが効率的だ。

食肉加工場で進めた工場制手工業の分業化と同じだね。

その手法に則るのであれば、私たちに任せてもいい仕事は限られるはず。

私たちに工兵部隊が求めるものと言えば、建設作業工程の中でも特に緊急性が高い基礎工事かな?

だって、私たちは建てるべき建物の規格を知らない。

人手が足りている工程と足りていない工程も知らない。

でも、土を固めて平たい地面を作るぐらいは朝飯前だからね。

そこで私たちがすべき仕事は、一番大変で体力が必要な土木作業―――、土魔法の行使になると予測する。

建物という重量物が乗っかる基礎がしっかりとしていないと、建物は建てられない。

建物の重みで地面が沈み込むと、建物そのものが傾いてしまうからだ。

”バブル経済”と呼ばれた好景気に沸いた日本でも、膨大な住宅需要に供給が追い付かなくなって住宅の粗製濫造が横行した結果、手抜きがバレにくいからと疎かにされたのが基礎工事。

床のビー玉がノンストップになったりドアや窓が閉まらなくなった建物が乱立して、日本全国で社会問題化した。

建物にとって基礎工事はメッチャ大事。

そして、基礎は地中に埋もれて見えなくなる部分だから、不慣れで多少仕事が粗くても構わない。

資材となる土を大量に生み出せるコピペ魔法を私たちが使えることも、土魔法で土を固めて巨大建造物を作れることも工兵部隊は知っているのだから、手伝って欲しい仕事は、きっとコレ。

基礎工事がちゃんと出来ていないと、あれほど巨大で重たい慰霊碑は自立できないからね。

たぶん、この予測が大きく外れることは無いはずだ。