作品タイトル不明
新たな芽吹き ㉑
「余所見してる場合か!」
「とことん舐めやがって!」
少女たちが斬り掛かって来ているけど、この子たちで風バリアーを突破できるとは思えないな。
水玉をぶつける?
攻撃に使えるほどの速度で水玉をぶつけるとなると、時速何キロメートルでぶつければ良いんだろう?
「あっ!」
「うわっ!」
この子たち、身体強化魔法を使えるっぽくて思ったよりも動きが速いよね。
ぴょんこぴょんこ飛び回ってて、この速さで動くマトに水玉をぶつけるのは手間だなあ。
魔力の手で捕まえたい誘惑に駆られるけど、この後に備えて手札は残しておきたい。
「なにコレ!?」
「剣が通らない!?」
んんー・・・。今、考え事をしてるのに五月蠅いな、もう。
あなたたちに酷いケガをさせないようにする方法を考えてるんだから、邪魔しないでくれる?
魔力の手で輪っかを作って風バリアーの周りの地面をベコリと凹ませる。
「ひぎゃっ!?」
「イッタ~い!!」
私の周りに居た子たちがボトボトとドーナツ状の穴底に落ちていく。
ヨシ。これで邪魔者は居なくなった。
さてさて、ケガをさせない水魔法を考えなきゃな。
さっきの少年たちだってケガをさせずに無力化できたかも知れないんだし。
拗らせたクソガキでもピーシス領の領民なんだから、私には従えて引っ張っていく義務があるはずだ。
いっそのことトイレみたいに流しちゃうか? クソガキだけに。
改めて足元の地面に魔力の手を突っ込む。
有るかな? 水。
胸の中で魔力がざわめく。
有る・・・ね。
浅い位置にも有るけど、深い位置に、もっと大量の水が有るのを感じる。
かなり深いけど、届くだろう。
地中、奥深くの帯水層まで魔力の手を伸ばして、水の通り道を作る。
結構な勢いで水の気配が近付いてきたので、出口を穴ぼこの壁に寝かせて空ける。
2時間かけて帰らなきゃ行けないのに私までズブ濡れになるのは嫌だし、真冬なのに風邪ひいちゃうじゃん。
「きゃああああああ!」
「うええええええ!?」
「ちょっ! 何、この水!?」
ブシャアアアアアアアアアア! と、噴き出した大量の水は、ドーナツ状の壁を重力に逆らって横向きに走り、見る間に穴ぼこの底で渦を巻く。
ハハッ。水流に足元を掬われてギャアギャアと楽しそうに溺れかけている少女たちは、便器の中で流されていくナニカか、洗濯機の中で揉まれている洗濯物のようだ。
これなら大したケガはしないんじゃないかな。
精々が、泥水を飲んでゲップが出るぐらいだろう。
「助けて! 私、泳げないのよ!」
「誰か! ロープを!」
おや? 泣きベソどころか、今にも死にそうな顔で必死に助けを求めている少女たちの姿に、そんな大袈裟な、と、思うけど、そこで思い返す。
地球でも日本みたいに泳げる人の割合が高いのは、日本を含めた数ヶ国ぐらいで、大陸国だと泳げない人の割合が圧倒的に多いんだっけ?
水に浮くのは比重が軽い脂肪で、重たい筋肉は沈むんだっけか。
水深が20センチメートルも有れば人間は溺れ死ぬことができるって言うし。
ちょっと、やり過ぎたかな・・・。
いやいや。大したことしてないよね?
何か、思ってたのと違うけど、やってしまったものは仕方がない。
さっさと決着を付けてしまおう。
「・・・降参するー?」
「「「「「します! しますうううっ!」」」」」
即答だな・・・。
泥水の流れるプールになった穴ぼこの底へと声を掛けると、かなり必死そうな合唱が返ってきた。
何なんだ? この子たち。
まあ、痛い目に遭ったのだから、これで少しは従順になるのだろう。
なるんだよね?
脅威は無くなったと言うことで、再び風バリアーを消す。
取りあえず、水を噴き出し続けている出口を土で塞いで、水の通り道になっていたパイプ状の地面をキュッと絞める。
元栓が閉まれば水流の勢いは緩やかになっていく。
足元を掬われなくなれば、脱出するのは簡単だったようで、濡れ鼠になった少女たちが離脱していく。
釈然としないけど、泣きが入っているのに続けたら、私の方が悪者になってしまう。
少女たちが逃げて行った後に残ったのは、ドーナツ状に泥水が貯まった壕のような大穴だ。
この水、どうしよっかな。地下に戻せる?
元々、地下へ染み込んでいたものなのだから、理屈上は戻せるはずだよね。