軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

盟約 ㉒

「・・・爆炎系―――、炎が爆発する術式の名前だよ。内戦が終わるまでに“紅蓮”を習得しておけって戦場にいたお母様から課題が出てね。何とかしなくちゃって、あの手この手と試行錯誤していたら違うものが出来たって感じかな」

あのときは必死だったし大変だったなぁ、なんて懐かしく思いながらケイナちゃんに説明する。

あれから、ほんの数ヶ月しか経ってないんだよね。

すごく色々なことが有った気がするけど、私って呪われてるんだろうか?

だとしたら、呪いを無効化する魔法を作らなきゃな。

無効化するには、その”呪い”というものが何なのかを知らなきゃ対策も考えられないよね。

“呪い”・・・?

例の死霊系ダンジョンなら取っ掛かりを見付けられないかな。

死霊無線機を量産したいから魔石も必要だし、ダンジョンへ行きたいなぁ。

テツさんたちが行くときに付いて行っちゃダメか交渉してみよう。

先ずは目の前にいるケイナちゃんを味方に付けるか、などとターゲットへ目を向ければ、獲物に定められた当のケイナちゃんは目を丸くして驚いていた。

「全く新しい術式を作ったのですか。それは凄いですね」

「・・・そうなの?」

魔法って自分の中に有るイメージを科学反応や物理法則と整合性を取って具現化させるものなんだから、そこまで難しいものではないと思うんだけど。

「兄様でも新しい術式を作るのは難しいと、いつも仰っていますよ」

「・・・ふぅん。そうなんだ」

ケイナちゃんだけでなくレイクスさんの認識もそうなのか。

その辺、私は否定的だなぁ。

私の貧困な発想力では突飛な使い方は思い付かないけど、イメージが有って、“なぜ、そうなるのか”のメカニズムが自然の法則に沿っていれば、魔法というものは発動するものだよ。

これって、カルチャーギャップが有るんじゃない?

エルフ族の考え方と私の考え方を寄せ合ってミックスして整合性を取れれば、もっと新しい魔法が作れるんじゃないだろうか。

そんなことを話している間にも、お母様の魔法がテツさんを狙い、火魔法が宙を滑って爆発している。

ギリギリ影響を受けない効果範囲外へ逃れたテツさんが踏みかけた地面から石の“棘”が生えてきて、テツさんが強引に踏む場所を変える。

「あっ。また土術式」

「・・・風術式も使ってると思うよ」

ルナリアの声に補足を加える。

何もない場所でテツさんが仰け反ったり横飛びしたりしているところを見るに、目に見えない術式も躱しているんだろうね。

パンッ! と破裂音が聞こえてくることからも、お母様が風魔法を攻撃に混ぜ込んでいるのは間違いないと思う。

たまに土魔法で生み出した“礫”を視界外から撃ち込んでいるけど、テツさんはその攻撃も避けている。

あの大きな体で器用だし、見た目の印象よりも体が柔らかいようで、軽業師のような身のこなしで攻撃を躱し続ける。

私なら足元一面にビー玉みたいに小さな石の球を敷き詰めて、テツさんが踏んだら転けるように仕向けるかなぁ。

また増えた攻撃のバリエーションにケイナちゃんが憂いの表情を深くする。

「さらに攻め方を変えられたようですね」

「・・・そうだね。でも、そろそろ―――」

私の予想を肯定するように、お母様が動いた。

攻撃を避けたテツさんの移動先に、先回りしてお母様が剣を突き込む。

それでもテツさんは体を捻って剣先を躱した。

1度躱されただけでお母様は止まらず、魔法で逃げる先を限定した上で予想されるテツさんの未来位置を狙って剣を振る。

2度、3度、4度、5度と連続して振られ、突き込まれる剣を、テツさんは避ける。

「うわ。アレでも避けちゃうの?」

「フレイアさんも凄いですね。あれだけ絶え間なく術式を発動しながら剣を振れるなんて、あんな戦い方は見たことが有りません」

ルナリアとケイナちゃんがそれぞれに驚きの声を漏らし、躱しきれなくなったらしいテツさんが今までとは違った行動に出た。

自らの未来位置に飛び込んできた“火弾”を左の裏拳で爆発させた上で、拡散して消えゆく炎が有った場所へ炎を押し退けるように体を滑り込ませたんだよ。

「「「「「おお~!!」」」」」

「術式を手で潰しちゃったわよ!?」

観衆の響めきに負けない声でルナリアが驚嘆する。

「・・・お母様も本気を出してきたんじゃないかな」

「あれでも当たらないなんて、どうなってるのかしら?」

ルナリアは感心しているけど、迎撃ミサイルのように自分で魔法に攻撃を加えて潰しに掛かるようになったのだから、テツさんも追い込まれつつ有るんだろう。

余裕が無くなってきても変わらないテツさんの姿勢に、ずっと思っていたことを口にする。

「・・・当たらないのも驚きだけど、反撃していないよね?」

「反撃する気が無いのでは?」

「・・・だよね」

ケイナちゃんも私と同じように思っていたらしい。

ケイナちゃんと私の会話にルナリアが首を傾げる。

「えっ? 模擬戦なのに?」

「・・・なんでだろ?」

「さあ?」

私にも分からないからケイナちゃんに目を向ければ、ケイナちゃんも首を傾げた。

「・・・ケイナちゃんにも分からないんだ?」

「何か考えてのこと、では有ると思いますよ」

「・・・そうなんだろうね」

確かに何か考えての行動なんだろう、とは私も思う。

でも、何かを狙って、という印象は受けないんだよね。

ほんと、何を考えてるんだろう?