軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

盟約 ⑮

「ほう? 精霊術式か」

「フィオレには変わった精霊が付いていると報告が有ったが、それのことだな?」

お母様とお父様の確認に私が頷き返していると、ケイナちゃんが情報を補足する。

「木の精霊―――、いいえ。植物の、でしょうか。とても珍しい子ですよ」

その必要が有るのか無いのか私には判断が付き兼ねたんだけど、お父様は補足情報が有ったことに満足しているみたいだね。

お母様は事前に聞いていた情報だから、そこはスルーだ。

新たに得た詳細情報を吟味しているお父様が首を傾げた。

「フィオレは植物の育成を早められると?」

「多少はそういう部分も有るかも知れませんね」

「ふむ? 多少は?」

ケイナちゃんの答えにお父様の首の角度が深くなった。

ケイナちゃんの言わんとするところは分からなくもないな。

私のイメージと違って力加減ができず、地面に大穴を空けたりした現象が精霊のお手伝いによるものだったとすれば、イレギュラーが起こる可能性が無いとは言えないだろう。

精霊という第三者を介して効果を発揮するのが精霊魔法である以上、その可能性はゼロにはならない。

「精霊は願いに応えてお手伝いをしてくれるだけですから」

誤解やイレギュラーが有った場合に精霊を擁護するためか、慎重な口調のケイナちゃんがお父様に頷き返した。

ケイナちゃんは、前も同じようなことを言ってたね。

「そんなので良いの?」と首を傾げたくなったものだけど、ケイナちゃんが言った通りだったと今なら私にも分かる。

「願いに・・・、ということは、何が起こるかは予測できない部分が有り得ると理解して良いのか?」

「そうですね。術者の思いを精霊がどう感じ取ったのかは、術式が効果を現してみないと分からない部分が有ります」

お父様も私と同じ解釈をしたみたいだね。

お父様の念押しにケイナちゃんも認識を明確にした。

一方、お母様の関心は精霊魔法に向いているようで、有識者であるケイナちゃんに質問をぶつける。

「術者の想像力に依存するのだな? だとすれば、他系統の術式と根っこは同じということになるが」

「そうですね。精霊には憑いている術者の思いや想像しているものが分かるようで、応えてくれますから。想像力に依存するという受け止め方は間違っていないかと」

「ふむ。面白いな」

納得顔のお母様がケイナちゃんの答えに頷く。

ちなみに、お母様はまだ自分に憑いているという精霊の存在を感じ取れずにいるらしいんだよね。

手伝ってあげたいのだけれど、私自身が精霊に対する理解がまだまだだからね。

切っ掛け次第だと思うんだけどなぁ。

振り返ってみれば、私が胸のざわざわを感じたのは本気で魔法を使おうとしていたときが多かったように思う。

じゃあ、普段が本気で魔法を使うつもりじゃないのかと言えば、決してそんなことはなかった。

どう教えれば良いものかと悩んでいると、セリーナお婆様が参戦してきた。

「エライワーというのは植物油が採れるという植物だったかしら」

「・・・はい。芽が―――、正確には“根”だと思うのですが、発芽しにくいものだと聞いていたので驚きました」

殻に守られた種子が硬い殻を割って芽を出すときって、芽が先か根が先か決まっているわけじゃないように思うんだけど、今回に限っては発芽を促すために水に浸している段階での発芽だから、根の方が先に出たんじゃないかと私は予想している。

「普通ではないことなのね?」

「・・・えっ? あ。はい。そうだと思います」

意図がよく分からない質問に戸惑いながら肯定を返す。

私の答えを聞いたお婆様たちが顔を見合わせた。

「人目に付かないようにした方が良いかも知れませんね」

「私もそう思うわ」

「・・・ではどうしましょう? 芽が出た場合、苗床に植え付けて、少し育ってから農地へ植樹するつもりでいたのですが」

1日で芽が出たのなら、苗床への植え付けだけでなく、植樹に適した大きさにまで育つ期間も短くなる可能性が有るんじゃないだろうか。

どこに植えるのかは早めに決めておいた方が良い気がする。

シェリアお婆様がセリーナお婆様に確認する。

「ピーシス領とロス領で試験栽培させるつもりだったのですよね?」

「そのつもりだったけれど、拙いかも知れないわね」

「・・・拙い、ですか」

どういうこと?

新作物の試験栽培はロス領でも行いたいとミセラさんたちが名乗りを上げていて、私もそのつもりだったからお婆様たちに報告して有った。

お婆様たちからも了解を得ていたのだけれど、セリーナお婆様は今になって拙いという。

どういうことなのかと視線で問えば、セリーナお婆様は理由を教えてくれる。

「思ったよりも人の流入が多いのよ」

「・・・流入ということは、エクラーダ系の領民のことでしょうか?」

レティアの町に残る人数よりも、ロス領や新領地へ居住したがる人数が多いってことなんだろうと理解した。

「西部国境地域からの移住民もですよ。まだ居住希望の段階ですけれどね」

「意外なほど早く馴染んでいる様子よ」

ヨシヨシ。みんな頑張っているんだね。

でも、それのどこに問題が?

「・・・そうですか。良いこと・・・ですよね?」

「ええ。とても良いことよ。でも、まだ機密に触れさせられるところまで選別ができていないわ」

んん? 機密?

お婆様の答えに私の首が傾ぐ。

「・・・選別・・・。間諜の疑いが晴れていないという理解で良いのでしょうか?」

「そういうことよ。もう少し経過観察の時間が欲しいわ」

なんだ。具体的に何か疑いを受けることが有ったのかと思えば、そういうわけではなかったらしい。

だったら良いや。