軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

再会 ⑮

「よくぞ参られた。儂はウォーレス血族の長、ハインズ・ウォーレスという。こちらは妻のセリーナだ。古き盟友の末裔にお会いできたこと。嬉しく思う」

「セリーナ・ウォーレスです。こうしてお会いできたのも精霊様のお導きでしょう。歓迎いたしますわ」

血族を代表して、ホスト役となるハインズお爺様とセリーナお婆様が挨拶を述べ、差し出されたお爺様の大きな手をレイクスさんが握り返す。

「僕はケルレイオス・アダレーの孫、ケルトレイクス・アダレーと申します。こちらは妹のピュリケイナ・アダレーです」

「ピュリケイナと申します」

綺麗なお辞儀で返したケイナちゃんに、お祖父様とお婆様が頷き返す。

「うむ。エルフ族が置かれた状況はフレイアたちから一通り聞いた。よくぞ危険の道程を参られた。そして、よくぞ今日まで生き延びられた」

「ありがとうございます」

お爺様の労いにレイクスさんとケイナちゃんが頭を下げて感謝を返す。

レイクスさんたちエルフ族の面々はターバンを外していて耳を出している。

耳だよ。耳。本当に耳が長いんだな。

美形だとは思ってたけど、ターバンを取るとレイクスさんは優男系の顔立ちが強調されて、ケイナちゃんも美少女っぷりが凄いことになってるよ。

ケイナちゃんはレイクスさんたちが着ているものと似た民族衣装っぽい意匠の衣服に着替えているんだけど、これがまた似合っていて可愛いんだよ。

素朴な色合いや刺繍っぽい縁取りはネイティブインディアンっぽい意匠に見えるけど、美少女が着るとどんな衣服でも似合うんだろうね。

対する私たちは誰も晩餐用の衣服に着替えていない。

エルフ族の来訪はウォーレス家にとっても一大事で、ルナリアも私も食堂へ移動するまで執務室で報告をしていたから、晩餐時のドレス着用は今日に限って免除されている。

軍服のままだから食べこぼしで汚さないように気を付けなきゃ。

お爺様に促されてレイクスさんたちが席に着き、私たちもタイミングを合わせて席に着く。

帰還後すぐに執務室で行われた緊急家族会議の結果、ウォーレス家およびピーシス家の総意はエルフ族をはじめとした亜人種族受け入れに“ 是(ぜ) ”となった。

それを踏まえての晩餐だよ。

「始祖レティアの頃より500年。友誼を結んだ友のことを我らウォーレスの血族は忘れたことがなかった。我が家と思って寛がれると良い」

「温かいお心遣い。痛み入ります」

お爺様にレイクスさんが感謝を返し、お爺様の目がテツさんへ向く。

「で。そちらが?」

「私は岩田鉄児。この度は、エルフ族の代理人として、ヒト族との架け橋となるべく動いておりました」

テツさんの挨拶に吹き出しかけた。

チラッと目線を飛ばされて我慢したけど。

だってさあ。「私」って。

目が笑っているケイナちゃんも口元をモニョモニョさせている。

いや。分かるんだよ?

ビジネス会話や敬語の一人称は男性でも「私」が普通だし、いい歳のオジサンなんだからTPOを弁えた話し方ぐらい出来るでしょ。

ただ、熊と素手で殴り合う人が真面目に敬語で喋ってるのが面白かっただけで。

テツさんの話し口って、日本人目線で評価してもお上品とは言えないしね。

お爺様が意外そうにテツさんを観察する。

「ふむ。儂らの代は勇者というものに相見えたことがなかったのだが・・・」

「何か?」

お爺様にジッと見つめられて居心地が悪そうにしているテツさんが首を傾げる。

「ルナリアとフィオレから聞いてはいたが、なかなかの武人とお見受けする。堅苦しいのは無しにしよう」

「武人、ですか?」

意外なことを言われた、という感じにテツさんがパチクリと瞬く。

ああ~。そうかも。

お母様と睨み合っても一歩も退かないぐらい度胸が据わっているし、巨大な魔獣の攻撃をものともせず落ち着いて反撃する姿は歴戦の戦士を思わせるものが有った。

“強者は強者を知る”とか、そんなフレーズをマンガだったか小説だったかどこかで読んだ気がするけど、熊虐殺現場を見ていないお爺様がテツさんを武人だとか表現したのは、そんな感じのヤツだろうか?

少なくとも、お爺様のテツさんに対する印象は悪くはなかったっぽいね。

猛獣が笑うようにお爺様がニヤリと口角を引き上げる。

「窮屈であろう? 普段通りに話すと良い」

「む・・・」

お爺様は公爵家の血族の長だし、王国内全体で見回してもトップクラスの偉い人だからね。

さすがにテツさんも判断に困ったのか口籠もる。

助けてあげるか。

「・・・腹を割って話そう、ってことだよ」

「言葉を飾るよりも重きを置くべきものが有ろう」

私の補足にお爺様が深く頷く。

もっと大事なことが有るんだから話し方なんて気にすんな、と。

観念したようにテツさんが溜息を吐く。

「分かった。お言葉に甘えさせて貰う」

ハインズお爺様が許したことで、作法に煩いお婆様たちも口出しするつもりはないみたいだね。

苦境に追い込まれたエルフ族がテツさんに信頼を置いていることは見て取れるし、テツさんが口調を崩してもお婆様たちも嫌な顔をすることがないのだから、お爺様の言葉通り言葉遣いなんかよりも大事なことが有ると考えているのかも。

お爺様たちの挨拶が終わったことでお父様がレイクスさんたちさんに視線を向ける。