軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

再会 ⑭

「こりゃあスゲえな・・・。神教会を怖れない貴族なんて初めて見たぞ」

数秒間の沈黙の後、目を瞠ったロブウッドさんが呆れたように息を吐いた。

うーん。私の伝え方が悪かったのか、誤解が有るな。

神教会を怖れていないわけないじゃん。

怖いから対策を練って、影響力と資金源を削って、潰してしまおうと考えてるんだし。

狂気としか思えないカルト教団なんて、この世から抹殺してしまわないと安心して暮らせない。

せっかく感心してくれているんだから、水を差すような訂正はしないけどね。

「“ウォーレスは王国の盾、ピーシスはウォーレスの剣”、ですか」

「・・・よく知ってるね」

行動指針モットーというか、合い言葉スローガンというか、ウォーレス血統の信念を表す言葉をクァタルさんが諳んじた。

そういや、エウリさんたちも知ってたっけ。

「昔、リテルダニア王国の支援部隊と共同戦線を張ったときに聞いたことが有ります。殿下は神教会勢力の侵攻を覚悟されているのですね」

「・・・そうだね。リテルダニア王国に旧エクラーダ王国と同じ轍は踏ませないよ」

覚悟だけでなく決意も伝えたつもりがクァタルさんは首を傾げる。

んん?

「同じ轍、ですか? 旧?」

「クァタル。もしや、知らなかったのか?」

よほど驚いたようで、深刻な表情のエバンさんが割り込んでくる。

クァタルさんには何のことかが本当に分かっていない様子で、目を瞬かせている。

「何をですか?」

「我らが故郷は滅んだ。勇王国の侵攻でな。故に、フィオレ様は“旧エクラーダ王国”と仰っている」

「「「「「―――、!?」」」」」

エバンさんが伝えた故郷の情報に、亜人種族の5人が揃って驚愕に目を剥いた。

王都に居たはずなのに全員が知らなかったの?

いや。王都だったから、なのかな?

戦争難民が押し寄せる見通しだったウォーレス領では、受け入れ態勢を整えるために情報が流布されていた。

直接の影響を受けない王都の市井に、どれだけ異国の情報が流布されていたかは分からない。

銀髪がエクラーダ人の特徴だと大雑把には知られていても、獣人族まで銀髪なわけじゃないからね。

自分でエクラーダ人だと明らかにしない限り、外観から見分けることは出来そうにないもの。

ドネルクさんも、テツさんの仲間にエクラーダ人がいるとは思わなかったのかも知れないな。

「エクラーダ王国が滅んだ? エリステ領は? この地にエクラーダ人が多いのは―――」

「逃れてきたのだ。フィオレ様の噂を耳にして、民も、私もな」

悔恨に震えるエバンさんの拳から、ギチッと硬い音が鳴った。

愕然とするクァタルさんの口から呆けたような声が漏れる。

「まさか・・・。そんな、エリステ領に残った家族は―――」

「ヒト族ですら無差別な殺戮に遭ったのだ。恐らくは・・・」

「―――、!!」

絶句したクァタルさんの顔が悲しそうにクシャッと歪む。

これは辛いな。

感情的にならず堪えるクァタルさんの姿が、余計に心へ突き刺さる。

ご家族か・・・。どうしてご家族と別行動だったのかは分からない。

ただ、獣人族のクァタルさんなら、ご家族も獣人族だっただろう。

神教会の“ヒト族至上主義”を信奉する勇王国に故郷が蹂躙されたのだから、故郷に残してきた獣人族がどうなるかなんて想像に難くない。

ご家族のことを思えばムカムカと腹が立つけど、今、この場ではどうすることも出来ない。

今すぐに旧エクラーダ王国へ向かったとしても、かの地は勇王国の一部となってしまっている。

獣人族のクァタルさんがご家族の消息を探りに潜入したとしても、飛んで火に入る何とやらだ。

同郷の仲間と今現在の仲間で、クァタルさんが無謀な行動に走らないように支えてくれることを願うしかない。

いつの日か勇王国を打ち負かしてご家族を探しに行けるように、私たちには今すべきことが有る。

「エバンさん。私たちはお父様たちと話し合う必要が有るから領主館へ戻るよ。私たちが話し合っている間は時間が取れるだろうから、後でクァタルさんに話してあげて」

「はっ。―――皆、移動しよう」

エバンさんが促すと、厳しい表情のロブウッドさんが真っ先に答える。

「分かった。従おう」

「・・・テツさんたちと同じ馬車に乗っていく? 詰めればまだ乗れると思うし」

このオジサンは仲間意識も強いらしい。

同乗を勧めれば他の3人も大きく頷く。

「楽できるニャ」

「すぐそこまでですが、お邪魔しましょう」

「お願いします!」

わざと明るく振る舞うミャウラさんに、真面目に返すイカウさんに、サッとクァタルさんの傍に付いたリットちゃん。

テツさんのお仲間たちの性質がよく見えた気がする。

良い仲間じゃん。

ウォーレス領のみんなもピーシス領のみんなも負けていないけどね。

また1つ背負うものが増えちゃったな。

沸々と湧き上がる怒りをお腹の底へ押し込めながら決意を新たにする。

「・・・さあ。帰るよ」

「「はっ」」

エバンさんとミセラさんが答える。

先ずはエルフ族とウォーレス家の関係を固めるために、お父様たちとの話し合いだ。

テツさんたちと取り決めなきゃいけないことも多く有るだろう。

私の家族なら神教会勢力を怖れてエルフ族を拒絶することなんて無いと信じられるし、最善の道を一緒に模索してくれるはず。

荷馬車の荷台で待っていたテツさんたちが5人の仲間を迎え入れる。

アスクレーくん部隊のみんなが奥へ詰めてくれて、新たな乗客が荷馬車の中へ収まる。

エバンさんも馬列に戻って、お母様が再出発の号令を発した。

ほどなく帰り着いた1日ぶりの領主館で、お父様とお祖父様たちとお婆様たちに迎え入れられた私たちは、領主執務室で一連の報告を済ませた。

そして、テツさんたちにお仲間を加えた12人との晩餐の席で、ウォーレス領の―――、王国の未来を決める話し合いに臨む。