軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊魔法というもの ㉑

「相変わらず、よくもまあ、こんな案を思い付くものだな」

ドネルクさんの呆れた目にニコッと笑い返しておく。

今さら謙遜したり子供らしく表面を取り繕ったりしても無意味だしね。

ドネルクさんと私のやり取りに、テツさんが楽しそうな笑みを浮かべる。

「良いじゃねえか。キチガ〇教団を虚仮にした見事な案だと思うぜ」

「確かにな。だが、長期的にはどうする? いつまでも誤魔化し続けられんだろう」

ふむ。ドネルクさんの心配も、尤もだね。

未来まで見通す嘘臭い全知全能の神様じゃないんだから先のことは誰にも分からないけど、それでも行き着く先は見えてる。

「・・・上手く時間を稼げても、10年も保たないかなぁ。その上で訊くけど、エルフ族やドワーフ族はどうする?」

「時間を稼ぐ、か・・・。必要なのは生き残るための技術協力ってことだろ?」

「・・・そういうこと」

テツさんの覚悟を問うような目差しに強く頷いて返す。

これは言わば片道切符だ。

徹底的に最後まで突き進んだ先にしか生存ルートは無いだろう。

どれだけ早く圧倒的な戦力を整えられるか、間違いなく時間との戦いになる。

「・・・侵略戦争はダメって言われてるから、こっちからは戦争を仕掛けたりしないけど、向こうから攻めて来たなら手加減する気は無いよ。最終的に神教会を叩き潰してしまえば、より安全に暮らせるようになるんだし、目指すべき最終目標は明確に見えてるよね」

王国は“魔の森”と向き合う人類棲息域の端っこに位置している。

背水の陣に押し込まれている立地で、後ろに引き下がれる余地は残されていない。

尻の毛まで毟り取ってやろうと神教会勢力が東へ勢力を伸ばしてくる限り、どのみち衝突を回避する道は残されていないんだし、出来るだけ有利な状況を造り出して戦う他ない。

殺るなら躊躇せず一撃必殺。

勝ちきるところまで絶対に手を抜いちゃいけない。

不退転の覚悟を目力に籠めて向けられた目を見返せば、テツさんが首を傾げた。

「勝つための手段を選ぶ気は―――、無さそうだな?」

「・・・戦争って、殺るか殺られるかだよ? 綺麗事を並べて平和になるなら戦争なんて最初から起こらないんだよ」

“蒼焔”の練習をしていた頃は、私自身が大量破壊兵器になるような事態は避けようと考えていたけど、あの頃とは状況が変わった。

欲しい魔法道具を手に入れられる状況が生まれて明確な勝ち筋が見えたんだよ。

絶滅させようと神教会が執念を燃やしているエルフ族を受け入れる以上、敗北すれば、“酷い目”では済まないほどの目に遭わされることになるだろう。

だから王様たちは「躱し方」を求めたし、そんな都合の良い答えはどこにも存在しないことも分かっていたはずだ。

避けられないなら勝つしかないんだよ。

私が王様たちに示すべきは“時間の稼ぎ方”で、稼いだ時間の使い方も王様たちは決めていたはず。

私は王様たちが求めていた道を形にして見せただけだ。

「徹底的にやるつもりか。嬢ちゃんの考え方は理解した。―――フレイアさん。娘さんはこう言ってるが、アンタの考えは?」

テツさんが向けてきた視線に、お母様は何のこともないと言わんばかりに肩を竦めて見せた。

突き付けられたのは、なかなかに究極の選択だと思うけど、お母様も揺るがない。

「大いに同意するところだな。敗者に選択肢は無い。後で非難を浴びることになろうとも、勝たんことには選択肢も残らん」

「戦争に強い領地だとは聞いていたが、道理で強いわけだ」

お母様の答えにテツさんが感心したような息を吐く。

私たちのやり取りに聞き入っていたレイクスさんが、テツさんに信頼感の籠もった目を向ける。

「テツの判断は?」

「組むならウォーレス領だな。理想的と言っても良い。ここまで覚悟の決まってる相手には、そうそう出会えるもんじゃねえよ」

テツさんの断言にレイクスさんも頷く。

「そっか。なら、僕らとしても協力せざるを得ないね。神教会を潰すという最終目標も、先に精霊の下へ還った同胞たちの無念を晴らしたい僕らにとって魅力的だ」

「・・・テツさんたちは、この案で良さそうだね。そんなわけで叔父様。国王陛下の方はいかがでしょう?」

ドネルクさんに目を向けると、静かに息を吐いてドネルクさんも大きく頷いた。

「安堵されるだろう。俺も憂いなく王都へ戻ることが出来る」

「・・・お母様も、これで良いよね?」

肩の荷が下りたようなドネルクさんの答えに、お母様も頷いてくれた。

レイクスさんたちの顔を見回してお母様がニコリと笑う。

「ウォーレス領として、新たな同胞を歓迎しよう」

「王国として、新たな同胞を歓迎する」

「寛大な措置に感謝する」

お母様とドネルクさんとレイクスさんが椅子から立ち上がって締めの挨拶を交わした。

上手く纏まってくれて私もホッと息を吐いた。

「・・・じゃあ、これで解決だね」

「俺はこの後、直ぐに王都へ戻るが、お前たちはどうする?」

私の最終確認に目を細めたドネルクさんがテツさんたちへ目を向けた。

「何とか言う領地の間引きを済ませてから王都へ戻る」

「間引き? ああ。メイラー子爵領の獣害か」

これって冒険者ギルド内の業務進捗確認かな?

テツさんの答えに、記憶を探るようにしたドネルクさんが自分で答えを見出す。